日本コロムビアグループ株式会社(以下:NCG)は、2025年10月1日に株式会社フェイスから新設分割により設立された、AIを核とした次世代型クリエイティブプロデュースカンパニーです。
今回は、グループ会社である日本コロムビア株式会社の代表取締役社長にインタビューしました。115年の歴史を持つ企業を、どう変革していくのか。AI時代に求められる「人間の努力」の価値とは。「本音」に迫るインタビューをお届けします。
■日本コロムビア株式会社とは
1910年に「⽇本蓄⾳器商会」として、⽇本で最初に創業したレコード会社。
以来、多様なジャンルの⾳楽を制作‧流通し、国内初のLPレコード発売、世界初のCD導⼊など、⽇本の⾳楽⽂化形成に⼤きく貢献。近年は、アーティストマネジメント等事業の幅を広げるとともに、AI技術を積極的に活用した新たな価値創造を推進。
最新AI技術×音楽のクリエイティブコンテスト「COLOTEK(コロテック)」の開催など、新しいエンタテインメントのカタチを追求し、日本初、世界初に挑戦し続けている。
日本コロムビア株式会社 代表取締役社長 土門 義隆
1994年東京大学卒業後、McKinsey & Companyに入社。8年間で、通信・IT・ヘルスケア・素材・金融・メディア・エンタテインメント等、幅広い業界の経営コンサルティング業務を経験。ネットベンチャー企業の取締役副社長を経て、2006年日本コロムビア株式会社に入社。事業開発部長として360度レーベル「No Big Deal Records」等、複数の新規事業を立ち上げる。2015年マネジメント事業部長、2017年執行役員、2020年アーティスト事業部長、2023年代表取締役社長就任。日本レコード協会理事。
ーーQ1. これまでのご経歴を含め、自己紹介をお願いします。
大学を卒業し、新卒で外資系の経営戦略コンサルティングファームに入社しました。我武者羅に働く日々を過ごし、30代になったときに、「やりたいことは何だったっけ?」と改めて考え直す機会がありました。昔から好きだった、「音楽」に携わるべく、2006年に日本コロムビアに入社しました。論理的でオープンな外資系コンサルのカルチャーと、音楽という感覚的なビジネス、かつ老舗企業ならではの「伝統」も併せ持ったコロムビアのカルチャーとのギャップの大きさに、入社当初は大変戸惑いました。
ビジネスの理屈はわかっていても、エンタメの現場では通用しない。そこから「理屈じゃなく、ヒットという結果で証明するしかない」と腹を括りました。
自らが理想とする音楽ビジネスの形を実現するために立ち上げたのが、「No Big Deal Records」というレーベルです。当時のメジャーレーベルはCDを売ることが主目的でしたが、私はレーベルとマネジメントを一体化させ、ライブやファンクラブまで含めた「360度ビジネス」が必要だと確信していました。
そのレーベルで最大の転換点となったのが、「04 Limited Sazabys(フォーリミ)」との出会いです。彼らの圧倒的なセンスと可能性を信じ、共に歩んできた結果、レーベルとして大きな成功を収めることができました。
現場の泥臭い仕事に飛び込み、誰よりも必死に動く。その積み重ねが、今の自分を作っています。
ーーQ2. NCGのMVVに基づき、日本コロムビアをどう改革していきたいですか?
NCGグループのMVVにおいて、私が最も大切にしているのは、VALUES の「Be Essential.(本質的であれ)」という考え方です。これを日本コロムビアの組織文化にどう深く根付かせるか、そこが改革の最大のテーマです。
音楽業界において本質的であるとは、単に楽曲を流通させるだけの存在ではなく、アーティストやファンにとって「なくてはならない(Essentialな)パートナー」であり続けることです。そのために、「スピード」と「マーケットイン」という2つの武器を組織に実装したいと考えています。
今の時代、テクノロジーの進化により、音楽の届け方は劇的に変わりました。だからこそ、ベンチャーのようなスピード感で市場のニーズを捉え、迅速に形にする能力が不可欠です。しかし、どれだけ技術が進歩し、AIが制作をサポートするようになっても、表現の根底にある「誰が、なぜこの表現をするのか」という人間同士の向き合い、その本質を外してしまえば、エンターテインメントとしての価値は失われてしまいます。
改革とは、古い仕組みを壊すことだけではありません。115年の歴史の中で培ってきた真面目にものづくりに向き合う姿勢を大切にしながら、今の時代に求められる「本質的な価値」を、最速で世の中に提示できる集団へと進化させること。
「Be Essential.」という言葉通り、アーティストからも世の中からも「コロムビアがいないと困る」と言われるような、唯一無二の本質的な価値を生み出す会社へと変革していきたいと考えています。
ーーQ3. 土門社長が没頭する瞬間はどんな時ですか?
新しい可能性を見つけ、それを自らの手で形にしている時ですね。最近では、仕事ではなく、「個人」で生成AIを使ったMV制作に完全に没頭しています。
年末年始も、お昼から朝の7時まで、寝る間を惜しんでAIと対話していました。睡眠時間は2〜3時間、作業時間は16時間に及ぶこともあります。もちろん、社長業務が終わったあとにやっていますよ(笑)。
「もっと明るくしたい」「この質感じゃない」と、100回、1,000回とAIに指示を出し、試行錯誤を繰り返す。仕事なのか遊びなのか分からない、その境界線が消える瞬間に最大の熱量が生まれます。
ーーQ4. 最も大きな失敗と、そこから学んだことは?
失敗という概念はあまり持っていません。成功するまで続ければ、それは失敗ではなく「過程」になるからです。 強いて言えば、入社当時に仕事がうまくいかず、周囲の信頼を得られなかった時期でしょうか。しかし、逃げ出さなかったのは、自分が連れてきたアーティストや仲間がいたからです。苦しい時にこそ、その人の本質が出る。逃げずに結果でやり返す。その経験が、今の「何があっても動じない」自分の強さになっています。
ーーQ5. 働く上で大事にしている価値観は?
「誠実さ」と、何よりも「個人の熱量」です。
どれだけ技術が進化しても、最後は「あなたとやりたい」と相手に思わせる人間力があるかどうか。アーティストという「人」と向き合うこの仕事では、スキル以上に、内側から湧き出る内発的な動機が重要です。
AIが進化する今だからこそ、人間が「もっと努力することの価値」が高まっていると感じます。楽をするための道具ではなく、自分の能力を拡張するための道具としてAIを使いこなし、圧倒的な熱量で物事に取り組む。それが最強の武器になります。