400Fは、「お金の悩みや疑問を持つ人」と「お金の専門家」が出会えるプラットフォーム「オカネコ」を提供しています。なぜ今、400Fは「お金に関する相談」に着目し、創業したのでしょうか。
今回は代表取締役CEOの中村さんにインタビュー。400Fの創業背景や、中村さんが野村證券時代から抱いていた原体験が今、どのように400Fへとつながっているのか、400Fが将来描きたい世界観などについても、じっくりお話をお伺いしました。
野村證券でのキャリアを経て、新たにFinTechの世界へ
―最初に、中村さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
中村:私は2005年に野村證券に入社し、3年間支店営業を務めた後、野村資本市場研究所のニューヨーク拠点に赴任。米国金融業界の調査や、日本の金融機関への経営提言などを行ってきました。
2年後に日本に帰国し、今度は営業企画部の配属に。野村證券の10年先の未来予想図を描くミッションを掲げて、世界各国の金融について調査を進めました。さらに3年後、今度は京都支店に転勤し、上場企業の法人営業を担当していた頃、縁あって株式会社お金のデザインを紹介していただき、営業部長として転職。2017年に代表取締役CEOに就任しました。
その後、お金のデザインはBtoC事業からの撤退を決めましたが、MBO交渉を経て2018年7月に400Fとして独立し、私が代表取締役に就任しました。
―野村證券を退職されたのは大きな決断だったと思いますが、お金のデザインへ転職したのはなぜだったのでしょうか?
中村:お金のデザインはロボアドバイザーを用いた事業を計画していましたが、正直それだけで成功は難しいと考えていました。しかし話を聞くと、ロボットを軸としつつもそこに人も介在させて「ネットとリアルの融合」を図っているとわかり、興味を引かれて転職を決めました。
転職にあたり、野村證券自体に大きな不満があったわけではありません。社長には良くしてもらっていましたし、10年後のキャリアまで描けていました。とはいえ営業を続けるという意味では、あくまで現在の延長線上にある将来だったのは事実です。営業マンとしての実力は転職しても変わらず維持できますし、今後どこの証券会社でもやっていける自信があったからこそ、スタートアップで新たにFinTechの世界に飛び込む経験をしてみたいと考えました。
10年間抱いてきた原体験を胸に400Fを創業
―MBOを経て400Fを創業されていますが、どのような背景があったのでしょうか?
中村:創業の根本にあるのは、野村證券時代の2008年頃から10年間、ずっと抱いてきた原体験ですね。簡単に言えば、「これからの金融業界は、ネットとリアルを時代に合わせた形で連携させていくのが重要である」という思いです。
現在アメリカで最も大きい証券会社はチャールズ・シュワブですが、この企業はもともとネット証券のはしりのような存在でした。チャールズ・シュワブは、ネットを基軸にして培ったテクノロジーを対面チャネルでも取り入れて急成長を遂げ、アメリカ最大規模の地位を獲得しています。ネット以外の窓口を作ることで、金融リテラシーが高くない人の取り込みに成功したのです。
一方で現在の日本のネット証券に目を向けてみると、口座数では通常の証券会社に勝っていても、預かり資産額はまだまだ遠く及びません。やはりネットで培ったものをリアルチャネルに連携させる必要があるのだと、常々感じています。
お金のデザインもネット証券を経営していましたが、人を介在させてもやはりネットだけで完結させるのは相当困難な道でした。そこで自分の原体験から着想を得た理想を体現するべく、改めて400Fの創立を決めたのです。
―メインターゲットはマス層だとお伺いしていますが、どのような意図があってのことですか?
中村:ネット証券にとってマス層はブルーオーシャンです。日本の金融資産の統計を見ると、いわゆる中間所得層が約5000万世帯を占めており圧倒的に市場が大きいのですが、これまでのネット証券はこのマス層を全く取り込めていませんでした。
例えばSBI証券のNISA稼働率を見ると、全体の50%程度に留まります。このように、マス層のマーケットは広くても、ユーザー自身がネットを介して将来のための意思決定をするのは、まだまだ非常にハードルが高い状態なんです。逆に「自分で一歩を踏み出せない」という課題をクリアできれば、ビジネスとして圧倒的成長を遂げられると考えました。
―マス層を取り込めない背景には、日本の金融リテラシーの低さも関係していそうです。
中村:確かに日本は金融リテラシーが低いとよく言われますが、実際の調査レポートを見ると、日本とアメリカで金融リテラシーのレベル自体にさほど違いはないという結果も出ています。
もちろん教育は必要ではありますが、問題は勉強をした後なんです。どんな金融アクションも、最終的に「自己責任ですよ」と言われてしまうので、ほとんどの人は最後の一歩を踏み出せません。私はこれを「ラストワンマイル問題」と呼んでいます。先ほど言及したSBI証券のNISA口座にしても、開くだけ開いて使っていない人が半数いるわけですよね。口座を作ったのなら、あとはお金を投資するだけなのにです。保険も同様です。どんなに勉強をしても、何が自分にとってベストな選択なのかを決めるのは、本当に難しいことです。
以上を踏まえると、アメリカと日本の金融アクションの違いを生んでいるのはリテラシーではなく、国としての仕組みの有無だと考えられます。今は日本でも新NISA制度が登場し、iDeCoもありますから、ようやく政策的枠組みが完成しつつある状態です。今後、日本人の金融アクションが大きく変わる可能性は高いでしょう。インフレの傾向も出てきましたしね。
テクノロジーとデータを駆使してお金の総合プラットフォームを作る
―社会的な後押しも受けつつ、400Fはどのように金融の課題を解決していくつもりなのでしょうか?
中村:社会的枠組みがすでにあるなら本来はそれを実行すればいいだけなのですが、すでにお伝えした通りマス層はそれがなかなかできない――だからこそ、「気軽にお金の相談ができる場所づくり」こそが、事業の要になると考えています。
というのも、そもそも日本人は自分のお金のことについて相談をする行為に、非常に心理的ハードルを感じる傾向があります。例えば日本人が金融機関を選ぶ理由のダントツ1位は「身近だから」、ただそれだけです。要するに、知っているブランドだから安心できる、騙されないだろうと感じて選んでいるわけですね。お金の相談に関してもとにかく信頼できる人を探したいけれど、気軽には話せない。ここを解消したいのです。
―具体的にはどのような戦略・展望を描いているのでしょうか。
中村:我々が提供している「お金の診断」と「チャットコミュニケーション」という2つのサービスを介してユーザーのニーズを引き出し、お金に関する悩みなら総合的になんでも解決できるようなプラットフォームを提供しようとしています。
そのための戦略として重要なのが、データ活用ですね。当社サービスに登録していただいたユーザーに対して、データを基にしながら最適なニーズの方向性を提示するのが一点です。もう一点は、オンライン営業の生産性向上です。これまで対面で行っていたやり方をそのままオンラインに持ってくるだけでは生産性が上がりませんから、ユーザーデータやチャット、面談情報を駆使して、オペレーションの改善方法を金融機関に提供したいと考えています。
また、プラットフォームとしての価値向上も重要ですね。特に金融は自社だけでビジネスを成立させるのが非常に難しい分野でもあるので、いかに金融機関と連携してエコシステムを構築し自社の付加価値を高めるかが、今後問われるでしょう。
終わりのない問いと向き合い、ユーザーに豊かな未来を提供するために
―400Fが掲げるミッションは「お金の問題を出会いで解決する」ですが、ここにはどんな想いがあるのでしょうか?
中村:例えばNISAについてネット検索をすると、大量の情報が出てきますよね。ところが、どんなに情報を見ても自分では「投資をする」という意思決定ができないから、実際のNISAの稼働率は低い。保険に関しても散々CMを打っているし、ネットで調べれば十分な情報は出てくるのに、やはり行動にまでは誘導できない。どんなことも検索すれば出てくる今の時代においても、お金の問題は全く解決していないんです。
検索だけではどうにもならないとしたら、大切なのはやはり、より良い場所に相談することです。だからこそ、「お金の問題を出会いで解決する」というミッションを掲げました。
―ミッションを踏まえ、400Fが今後目指す未来について教えてください。
中村:お金に対する考え方は、人によって全く違います。ファイナンスの世界には「メンタルアカウンティング」という言葉もあるように、例えば近年取りざたされている老後の2000万円問題一つ取っても、2000万円が本当に老後を過ごすのに十分な資産なのかどうかは、個人の感覚によるところが大きいんです。2000万円あれば十分だと言う人もいれば、現在2000万円の資産があっても不安だと感じる人もいる。人それぞれの基準があるのが、お金の難しさです。
だからこそ、きちんと自分でお金に関する意思決定をできるようになるのが、日本の明るい未来のためには非常に重要です。「明るい未来」というのは、近い将来大金持ちになるのを目指すような類ではなく、自分が豊かな人生を過ごせるようにする、という意味です。
そのためにまずは、チャットや診断を気軽に使っていただいた結果、前向きにお金のことを考えられるような転換を起こす――これが、我々の目指すところです。
―最後に、400Fへの入社を検討している方へのメッセージをお願いします。
中村:終わりのない問いを聞き続けるのが我々のビジネスです。画一的な、決まった回答を返すようなものではありません。ですから、常に自分自身が何かの課題と向き合って解決へと導きたい志向の方は、400Fに非常にマッチした人材だと言えるのではないでしょうか。
プロダクトを上手く成長させて、その次はどうしていくのか……。そんな自問自答をし続ける働き方が好きな方は、ぜひジョインしてみてください。