SaaSは終わるのか
近年、「SaaSはAIに置き換えられるのではないか」という議論を目にする機会が増えています。
生成AIやAIエージェントの進化により、これまで人がSaaS上で行ってきた入力、検索、集計、通知、レポート作成といった業務は、今後さらに自動化されていくでしょう。
人が画面を開き、項目を入力し、ボタンを押して業務を進める。
そんな従来型のソフトウェア利用は、大きく変わろうとしています。
では、SaaSは本当に終わるのでしょうか。
私たちは、そうではないと考えています。
むしろ、SaaSの価値は「便利なツール」から、「企業活動を支える業務基盤」へと進化していくのではないでしょうか。
SaaSの価値は「機能」から「業務を動かす力」へ
これまでのSaaSは、使いやすい画面、豊富な機能、導入のしやすさ、コストパフォーマンスなどが評価されてきました。
しかし、AIが当たり前に組み込まれる時代になると、単に「AI機能があります」というだけでは差別化が難しくなります。
今後重要になるのは、次のような点です。
- 企業固有の業務データをどれだけ蓄積しているか
- そのデータがAIに活用できる状態になっているか
- 業務ルールや例外処理が整理されているか
- AIの判断を、実際の業務フローに組み込めるか
AIは、データがなければ正しく判断できません。
また、データがあっても、業務ルールや判断基準が整理されていなければ、実務で安心して使うことはできません。
つまり、AI時代のSaaSは、単なるアプリケーションではなく、企業の業務知識、判断基準、過去データを蓄積した「業務OS」に近づいていくと考えています。
AIに置き換えられるSaaS、AIによって強くなるSaaS
今後、厳しくなるのは「人の作業を少し便利にするだけ」のSaaSです。
たとえば、入力補助、定型文作成、単純な承認フロー、一般的な集計業務などは、AIが直接処理できる領域になっていく可能性があります。
一方で、AIによってさらに価値が高まるSaaSもあります。
それは、企業や業界ごとの深いデータを持ち、業務プロセスそのものに入り込んでいるSaaSです。
顧客ごとの価格条件、過去の商談履歴、契約条件、社内承認ルール、現場特有の判断基準。
こうした情報は、汎用AIだけでは簡単に再現できません。
AI時代に本当に価値を持つのは、単にAI機能を追加したSaaSではなく、AIが正しく判断するための「業務データ」と「文脈」を持っているSaaSです。
SI企業にとって、これは大きなチャンスでもある
この変化は、SI企業にとって脅威であると同時に、大きなチャンスでもあります。
AIとSaaSが進化すると、顧客企業は単に「新しいシステムを導入したい」と考えるのではなく、次のような課題に向き合うことになります。
「自社の業務を、AI前提でどう作り直すか」
特に日本企業では、業務がExcel、メール、チャット、紙、個人の経験則に分散しているケースがまだ多くあります。
AIを導入しようとしても、
- データが整理されていない
- 業務ルールが明文化されていない
- 例外処理が属人化している
- SaaSや基幹システムがバラバラに存在している
といった課題に直面することは少なくありません。
ここに、SI企業が提供できる価値があります。
これからのSI企業に求められるのは、単なる開発や人月提供だけではありません。
顧客業務の棚卸し、AI化できる業務と人が判断すべき業務の切り分け、SaaS・基幹システム・Excelに分散したデータの整理、API連携、ワークフロー自動化、AIエージェント導入後の運用設計。
こうした領域まで踏み込んで支援することが、これからのSI企業の役割になっていくと考えています。
言い換えれば、私たちSI企業は「システムを作る会社」から、「業務をAI対応に変える会社」へ進化していく必要があります。
私たちが目指す方向性
当社のようにSI事業を展開する企業にとって、SaaS 2.0の流れは無視できないテーマです。
今後、顧客企業では、既存SaaSの見直し、AIツールの導入、社内データ活用、業務自動化のニーズが確実に増えていくと考えています。
そのときに求められる人材は、単にJavaやPythonが書けるエンジニアだけではありません。
顧客の業務を理解し、AIやSaaSを組み合わせ、業務改善の形まで提案できる人材です。
そのために当社では、今後さらに以下のような力を高めていく必要があると考えています。
- AIを活用できるエンジニアの育成
- SaaS連携や業務自動化スキルの強化
- 顧客業務を理解し、改善提案できる人材の育成
- 自社業務におけるAI・SaaS活用の実践
- 営業、案件マッチング、要員提案、契約書作成、教育管理などへのAI活用
自社内で実践し、そこで得た知見を顧客支援に活かしていく。
この循環を作ることが、今後の競争力につながると考えています。
AIを「導入する」だけではなく、業務成果に変える
SaaSの未来を考えるうえで重要なのは、「SaaSがAIに食われるかどうか」ではありません。
本質は、AIによってソフトウェアの価値が「操作する道具」から「業務を実行する基盤」へ変わっていくことです。
単純な機能提供型SaaSは厳しくなる一方で、顧客データ、業務ルール、現場判断を深く取り込んだSaaSは、AI時代の中核インフラになっていくでしょう。
そして、その移行期においては、業務整理、データ整備、システム連携、AI運用設計を支援するSI企業の役割が、これまで以上に重要になります。
私たちも、従来型の人月提供にとどまるのではなく、AIとSaaSを活用して顧客業務を変革できる組織へ進化していきたいと考えています。
SaaS 2.0の時代に勝ち残るのは、単に「AIを導入した会社」ではありません。
AIを、実際の業務成果に変換できる会社です。
当社は、その変化を支えるSI企業として、技術力と業務理解の両方を磨きながら、新しい時代の価値提供に挑戦していきます。
参考リンク
- 株式会社ミツモア note記事
「SaaS Is Dead? — “SaaSの終わり”ではなく、“SaaS 2.0”が始まる。」
https://note.com/meetsmore/n/nadf18781e9e2 - テックタッチ株式会社 調査リリース
「『SaaS is Dead』の正体を検証ーーAI時代に求められる…」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000422.000048939.html - Zenn記事
「『SaaSの死』ではなく『SaaS 2.0』へ:AIエージェント時代に勝つプロダクトの条件」
https://zenn.dev/taketsuyo/articles/dc1fbd6bdece96 - note記事
「“SaaS is Dead”を斬る」
https://note.com/questpm/n/nba8e3a7de139 - TechRadar記事
SalesforceのAIエージェント課金に関する記事
https://www.techradar.com/pro/salesforce-says-its-ok-with-losing-money-on-ai-agents-for-now