営業の世界はいま、大きな構造転換のただ中にあります。属人的な営業スタイルから脱却し、「誰に・なぜ・どのような価値を届けるのか」を戦略的に設計する営業が、成果を出す時代へとシフトしています。
そうした変化の中で、インサイドセールスとしてキャリアを歩んできた弓手さんは、「数を追う営業」から「再現性ある仕組みづくりを通じた営業の質向上」へと軸足を移し、自らの成長と向き合い続けてきました。
本記事では、弓手さんがMarooで実践している営業支援のリアルと、その中で感じているやりがい、そしてキャリアの転換点となった意思決定について、お話を伺いました。
目次
「営業スキルを磨きたい」──そう思い、異業界への一歩を踏み出した
「支援の濃度」を求めてMarooにジョイン
企業版ペルソナをもとに、営業の「優先度」を決める
メール施策で目標160%達成。再現性のある仕組みづくりができた
「オタク気質の上司」と働ける環境が成長につながる
将来は「インサイドセールス組織の立ち上げ」に挑戦したい
「営業スキルを磨きたい」──そう思い、異業界への一歩を踏み出した
───まずは弓手さんのこれまでのご経歴を教えてください。
新卒では食品専門商社に入社し、総務人事部に配属されました。2020年当時はちょうどコロナ禍の影響で食品業界も大きな打撃を受けており、このままのキャリアを続けてよいのかと疑問を抱くようになりました。そこで、自分自身の市場価値を高めるために「営業スキルを磨きたい」と考え、1年半で退職し、フリーランスとして営業のキャリアをスタートしました。
フリーランス時代は、人材紹介・不動産投資など、複数の商材を自身で開拓・提案しながら営業活動を行っており、約1年間にわたって現場での実践を重ねてきました。
その後、BtoB営業への関心が高まり、ベンチャー企業と大手企業のビジネスマッチングを支援する企業に業務委託として参画しました。そこではマネージャーとしての役割も担っていましたが、業務の中心は「商談のアレンジメント」に近く、BtoB営業として本質的な価値提供や提案活動を行う場面が少ないことに課題感を抱くようになりました。
複数のベンチャー企業をまとめて大手企業に紹介し、面談機会を設定するというモデルは、どちらかというとコーディネーター的な業務であり、営業としての基礎力や課題解決力を体系的に高めるには物足りなさを感じていました。
そこで、「より本質的に営業スキルを高めたい」と考え、BtoB領域の営業支援やコンサルティングを手がける企業へ転職することを決めました。
「支援の濃度」を求めてMarooにジョイン
───Marooにはどんなきっかけで入社されたんですか?
前職も学びの多い環境でしたが、担当する企業数が常時30〜40社と多く、どうしても1社ごとの支援が浅くなってしまう課題がありました。営業支援に携わる中で、「もっと1社ごとに深く入り込み、本質的な成果にコミットしたい」という思いが強くなっていきました。
そんなタイミングで偶然、Marooの取り組みについて知る機会があり、「1社あたりに対する支援の深度が非常に高い」と聞きました。実際に面談では、インサイドセールスの立ち上げから内製化、営業改革の実行までを支援している事例を伺い、「ここなら、より実践的に営業の力を磨ける」と確信し、入社を決意しました。
───実際に働いてみて、前職との違いはどんなところですか?
最も大きな違いは、「営業支援の深度」と「顧客の意思決定プロセスへの関与度」です。Marooでは、単なるアポ獲得ではなく、顧客の購買行動を深く理解することからプロジェクトが始まります。たとえば、カスタマージャーニーを描きながら「どのタイミングで、どのような情報・接点が必要か」を設計し、フェーズごとの施策を具体化していきます。
前職ではアポイントを設定すればKPI達成という評価軸でしたが、Marooでは「商談化率」や「受注確度」といった質の指標が重視されます。受注に至る確度の高いリードをいかに創出するか、そのためにどのようなコミュニケーション設計を行うかといった視点で営業活動を組み立てます。
また、定例ミーティングでは単に成果を報告するだけでなく、「なぜこの結果になったのか」「次にどう改善するか」といった要因分析や戦略修正が求められます。ROIやファネル全体を見ながら仮説→実行→検証を繰り返すプロセスは、営業支援の本質に触れている実感があり、とてもやりがいを感じています。
企業版ペルソナをもとに、営業の「優先度」を決める
───「アポの質」については、どう考えているんですか?
まず、いわゆるICP(Ideal Customer Profile=理想的な顧客像)を事前に設計し、単なるアポイント取得を目的にせず、「将来的に受注へとつながる確度の高いアポかどうか」という観点で見極めています。
業界や業種、企業規模、抱えている課題、意思決定構造など、さまざまな情報を因数分解し、独自に設定した10項目前後の評価項目に落とし込んで判断しています。
たとえば、決裁権者と接点を持てているか、営業初期の段階で課題を言語化できているか。さらには、営業フェーズや担当者の熱量も評価に含めます。
毎回の振り返りでは「本当に意味のある商談だったか?」という視点を必ず持ち、アポイント取得後の振り返り精度も含めて、自身の営業スキルを磨いています。いま最も鍛えられているのは、まさにこの点かもしれません。
そのうえで、取得したリードに対してTier(優先度)分類を行っています。たとえば、Tier1は「個別最適が必要な重点アカウント」と位置づけ、初期接点から丁寧なヒアリングを実施。必要に応じて事前に企業研究を行い、商談化の前段階から価値提供を意識した接点設計をしています。
一方、Tier2〜3に分類される企業には、アプローチ手法を変えます。たとえば、架電数を抑えつつメールやコンテンツなどのマーケティング施策で効率的に接点を設計し、一定の温度感が確認できた時点で商談へ進めるといった対応です。
こうした「リソース配分の最適化」は、ただアポ数を稼ぐ営業活動とは明確に異なる点であり、Marooでの営業支援において特に重要視されている部分だと感じています。
以前の環境では「とにかくアポイントを取れればOK」「アポが取りやすい業界を優先する」といった動き方をしてしまう場面もありました。しかし今は、「理想の顧客像とは何か?」をクライアントと一緒に言語化し、そこに対してどのような営業設計を行うか、という全体構造から取り組んでいます。結果的に、こうしたプロセスそのものがクライアントファーストの姿勢につながっていると実感しています。
ちなみに現在の担当社数は1社のみです。まずは1社に深く入り込み、確かな成果を出すことを優先しています。今後は案件状況に応じて担当範囲が広がる可能性もありますが、まずは目の前のプロジェクトに集中しています。
メール施策で目標160%達成。再現性のある仕組みづくりができた
───実績や手応えについて教えてください。
4月からプロジェクトが始まり、4月・5月ともにアポイント獲得のKPIを達成しました。初月の4月から一定の肌感覚をつかめたので、5月は目標を10件に引き上げたうえで、最終的に目標比160%を記録しました。
中でも特に成果が顕著だったのがメール施策です。
当初は「メール経由での反応はあまり期待できないのでは」と感じていましたが、件名や本文構成、文中の順序やトーンに工夫を重ねたことで、成果が大きく変わりました。
たとえば、開封率を高めるために件名をリライトしたり、返信しやすいようにプレッシャーの少ないトーンで書きつつも、返信導線は明確に設計するなど、読了からアクションに至る心理的な流れを意識して改善しました。
こうした細かいチューニングを重ねた結果、メール経由でのアポ獲得率が大きく向上しました。
前職でもメール施策に取り組んでいましたが、汎用的なテンプレートを使った運用に留まっており、実際の反応率は低い状況でした。
今回、自身で仮説を立てて施策を設計し、明確な成果につながったことに手応えを感じています。さらに、この設計は他プロジェクトでも成果を再現できており、「再現性のあるナーチャリング施策」として社内で横展開しています。
現在では、メール単体での改善に留まらず、架電との連携を含むシーケンス(営業プロセス)全体の構築も自分で担当し、施策単体ではなく営業全体の仕組みとして構築・運用できるスキルが身についてきたと感じています。
「オタク気質の上司」と働ける環境が成長につながる
───Marooに入社して、働く中で印象に残っていることはありますか?
面接の段階から強く印象に残っていたのは、山梨さん(Maroo創業者)の圧倒的なロジカルさでした。
「インサイドセールスのオタク」と言ってもいいくらい、営業に対する視座と探究心が高く、あらゆるプロセスを徹底的に突き詰めている方だなと感じました(笑)。
実際に入社してみると、支援の粒度の細かさに驚かされました。
クライアントのビジネス課題や営業課題を上流から丁寧に捉え、戦略設計から実行オペレーションまで一貫して支援する——そうした支援スタイルは前職にはなく、Maroo特有の提供価値だと感じています。
私自身、インサイドセールスのキャリアはまだ浅いですが、こうした高い専門性をもつメンバーと実務を通じて関われる環境にいることで、日々学びと成長の機会を得られています。「もっとインサイドセールスを深く極めたい」と思えるようになったのは、この環境の影響が大きいです。
もうひとつ感じている魅力は、裁量の大きさです。Marooでは個々人の意欲や成果に応じて、早期からチャレンジの機会が与えられます。
通常であれば3ヶ月ごとの査定でディレクター昇格が判断されるのですが、私は入社2ヶ月目からディレクター業務に関わらせてもらい、6月には正式にディレクターに就任しました。
メール施策の設計も含め、重要なプロジェクトを任せてもらえたことで、成果に対する責任と同時に、スキルと視座が高まっているのを実感しています。
自ら主体的に動けば動くほど、裁量も広がり、役割も高まっていく。そうした成長志向にフィットする組織文化が、Marooの醍醐味だと感じています。
将来は「インサイドセールス組織の立ち上げ」に挑戦したい
───これからキャリアとして挑戦したいことはありますか?
今後は、「インサイドセールス組織の立ち上げ」に本格的に挑戦したいと考えています。
たとえば、新しいプロダクトやサービスを展開する企業の多くは、立ち上げ初期段階ではインサイドセールスの体制が整っていないことが多いんです。
「新規商材を広げていきたいけれど、どの市場・どのターゲットに、どうアプローチすればいいかわからない」といった課題を抱える企業は少なくありません。そういったフェーズに自分が入り、ゼロから組織の立ち上げを支援し、営業の基盤を構築し、売上につなげていける人材になりたいと思っています。
再現性のある営業プロセスを設計・運用できるようになれば、自分自身の市場価値も高まりますし、それを通じて企業の成長を後押しできることに、非常に大きなやりがいを感じています。
どれだけ優れたプロダクトやサービスであっても、適切に届ける仕組みや体制がなければ成果にはつながりません。だからこそ、「誰に・どう届けるか」「どのように仕組みとして定着させるか」といった観点を持ち、営業組織そのものを立ち上げられる人材になることが、今後のキャリアの大きなテーマです。
そういったチャレンジを通じて、もっと面白く、もっと本質的な営業支援ができる人間になっていきたいと考えています。
───ありがとうございました!!