初めまして、Lin Shi(日本名 : 石 林)と申します。現在はイノワークス株式会社で代表取締役をやっております。
日本滞在25年目の中国生まれの朝鮮民族で、いまは日本国籍を持ち、4ヵ国語を話せるちょっと複雑な背景の持ち主で、柔道が好きで週2で稽古しています。
2024年5月までUnity Japanの産業向けデジタル・ツインチームのProject Management Teamのマネージャーをやっていて、Unityを使った様々なカスタムソリューションを開発し、産業界のお客様に提供しておりました。
2024年6月から有志メンバーと新会社を立ち上げ、産業向けのソリューション開発事業を継続して行っております。
なぜこの業界に?
僕がUnity Japanに入る前は全くゲーム業界とは無縁の世界にいました。
プロダクション時代(WOW株式会社)は7年間CGデザイナー、映像作家として数々の映画、CM、ミュージックビデオのVFX制作を担当していました。
その後は不思議なご縁でソフトウェア業界に転職し、ダッソー・システムズというフランス資本の会社で6年間、車や企業ブランディングの映像監督とリアルタイム系のソフトウェアのコンサルティング業を兼任しました。
この時期に、チームメイト(現INNOWORKSのCTO)がUnityで作った自作ゲームを見せてもらったことがあり、これだけの大作を一人で作れるんだ!という衝撃を受けました。それがきっかけで、自分でも血が騒ぐうちにチャレンジしてみようとしたのが業界に入るきっかけでした。
それからUnityの勉強に励み、デザイナーには無縁だった「プログラミング」も友人から、またYouTube、noteでも勉強して『SUBURI』という野球練習用シミュレーターを作ってリリースしました。
その後は?
自分のゲームをリリースした2018年に、ダッソー・システムズから先にUnityに転職した友人の紹介でUnityの採用面接を受け、Unity Japanで産業向けのソリューション開発のシニア・プロジェクト・マネージャーとして入社することになりました。
そして出社1日目、パントリーにおいてある色鮮やかな果物や飲み物をみて、なんて贅沢な会社に入ったんや~と一人で喜んでいました。
また、企業文化は非常にフラットで風通しがよく、皆さん生き生きと仕事をしていて、以前の職場とは雰囲気の違いが大きく、毎日会社に行くのが楽しみでした。
入社当初、Unityの産業向けのチームは私を含め2名だけで、営業、PM、開発、コンサル、納品まで全てこなさないといけなかったため多忙を極めましたが、かなり忠実した日々を送っていました。
Unityを使ったソリューション制作は、ゲーム開発に馴染みのないお客様に、どうやってその魅力を伝えることができるのかが最初の大きな壁でした。
というのは、産業向けのものづくりのお客様の殆どは人の命を扱う大事な使命を持って仕事に勤しむため、命を守るための安全性に対する理念と、Unityによるゲーム開発の技術をものづくりに転用するという新しいアプローチの間には中々相容れない感覚的な部分が存在してました。
その意識の差を埋めないと事業が先に進められなかったため、お客様から求められる厳しい要求を一つずつ検証、証明し、理解してもらい、尚かつお客様が新しい技術でわくわくしながら仕事ができるように、我々の全ての努力を注ぎました。
仕事で楽しかったこと
新規車種のデザインフェーズの上流段階では、デザイン・レビューというプロセスがあり、まだ実物が存在しない段階で、3次元データのみで確認会を行う必要があり、提供された3次元データをいかにリアルに再現できるかが試されます。
出典:CG WORLD.jp(https://cgworld.jp/interview/202012-honda-unity.html)
一例としてパネルギャップ(車体外装のパーツ間の溝)に落ちる影が正確に再現されてるかを見られたことがあります。
パネルギャップの幅は5mm±1mmの検証基準があり、影の表現が正確にされないと幅の均等性、パーツ全体の曲線美の評価ができないからです。また、プレスされる鉄板の曲り角の正確な見え方もレビューの対象で、困難を極めました。
Unity内でシーンのライティングの設定を物理的な環境のパラメータに合わせないとリアルな表現ができないため、チームの優秀なエンジニアがレンダリング品質が高かったHDRP技術の導入を決めることになりました。当時はまだ未熟な機能でしたが、要求に合わせるためにひたすらチューニングしたりとかなりチャレンジングな仕事ばかりしていました。
しかし、お客様からの厳しい要求を一つずつクリアしながら、のちに実車が発売され、開発に携わった車が町中を走り回るのをみると圧倒的なやりがいと満足感を味わうことができ、それが楽しくてやみつきになるんです。
それから5年、チーム体制も30名まで拡張し、産業界のお客様向けに大小の案件を合わせておよそ60本のプロジェクトを提供し、産業界でチームの認知度も少しずつ高くなっていきました。
しかし2024年の初め、新年度向けのプランをチームで精力的に進めていた最中、Unityの世界レベルでの事業閉鎖の方針が決まり、残念ながらUnityの組織内での事業拡張の道は閉ざされました。でもUnity Japanで得た経験は僕個人のキャリアの中では最大収穫の時期だったと思います。
それからの嬉しい話ですが、志を共にしてきたチームメンバーとお客様からの後押しに恵まれ、2024年6月に新会社「イノワークス株式会社」を設立しました。
Unityで培ってきたノウハウと技術で今まで行ってきた開発事業を変わらずお客様に提供しつつ、Unityに勤めていた時とはまた違う、ソフトウェ開発、ゲーム制作などの新事業のチャレンジができる新しい、楽しい組織作りを目指して頑張っています。
環境は変われど、社会の役に立つ仕事に携わる志は変わらず、そのやみつきになる仕事を皆さんと共に続けていきたいと思います!