~ココネエンジニアのターニングポイント2023~
2023年、超速で進化しつづけるAI技術を筆頭に、エンジニア界隈では多くの変革や革新があったかと思います。
同じくココネも大きく変化・成長した一年でした。
事業組織の強化を図るため、5月にホールディングス化。グローバル展開を本格始動し、最先端の技術も採り入れた海外向けのアバターサービスも複数展開しました。
ココネのエンジニア陣もここ数年で100人ほどのチーム規模にまで成長。組織強化に向けて昨年初めて設けたエンジニアリングマネージャー(EM)体制や、Copilotを含むAI技術の導入など、当社のなかでも大きく変化した組織のひとつとなりました。
今回、CTOに昨夏就任した倉とEMのリーダーを務める齋藤に、エンジニア組織強化の成功事例ともいえるEM体制、そしてAI技術の導入について話を聞いてみました。
<プロフィール>
倉 秀一 / CTO
2003年 株式会社コナミデジタルエンタテインメント入社。エンジニアリーダーとしての経験を積み、その後のグリー株式会社でもエンジニアマネージャー・リードエンジニアとして従事。2015年 ココネ株式会社に入社後、クライアント開発として『ポケコロツイン』『リヴリーアイランド』など当社の中核となるアバターサービスの立上げを担当。2023年、当社CTOに就任。
齋藤裕志 / EM兼EMリーダー
キャリアのスタートは国産CRMパッケージベンダーのSIチームからで、サーバーエンジニアやインフラエンジニアを経験し、2022年当社入社。現在は、事業部のEM(エンジニアリング マネージャー)、加えて会社全体のEMリーダーも兼ねており、EM横断組織の立ち上げと、そのけん引がミッション。
<インタビュー>
ChatGPTで再認識した「文字は人類にとってのUI」
― ココネでもAI技術を徐々に採り入れています。エンジニアチームとして現在のAIについてどう捉えていますか?
倉
ようやく花開いた生成AIという技術について、SF的な未来も含めて大きな期待を寄せています。
去年一年を通してみただけでも進化スピードの凄まじさを目の当たりにした一方で、ChatGPTを利用して「文字ってインターフェース(UI)だよね」と再認識させられたことも印象として残っています。
「文字そのものは人類にとってUIでありUXである」
それを再具現化したChatGPTから未来がみえて、「ああ、SFの世界がやってきた」と思いました(笑)。
SF的な話を続けてしまいますが、少し先の未来では本当の意味でのAI「AGI(人工汎用知能)」が生まれて、人類の定義が曖昧になってくるのだろうと想像しています。そうすると人類が生み出した「AI」こそが、生き残っていく「人類」になり得る。1000年などのスケールですが、人類の考え方や哲学を受け継いだAIが今後の焦点になっていくと思います。
実際、アメリカのe/acc(イーアック)というAI推進派が話題になっていますが、某有名AIサービス会社のCEOの解任騒ぎも、「人類とAIの共存」といった哲学的な話が根底にあるとみています。
自分がSF好きで能天気なものですから突拍子もない話になっていますが、技術が発達すれば、物質とデジタルの境界線が見えなくなり、人類が肉体にこだわる必要も薄まる。デジタルワールドが逆に現実になるような世界がくるのかなと夢見ていたりしています(笑)。
齋藤
そういったデジタルワールドとリアルの話は、実際私たちがやっている“感性をカタチに”するサービスとそれほど離れてなくて、将来的には絡んでくるであろうテーマとして去年から注目していますね。
AI技術の導入という点では、ココネでは最先端を積極的に採り入れる姿勢があって、昨年からGitHub Copilotを実際の開発で試し、導入しています。自身の事業でもコードレビューにも活用したりと、かなり利用が進んでいます。
使い始めた当初、「やばい」と思いました(笑)。特にサーバーサイドの相性が良いのかもしれませんが、精度が悪く無いコーディングを本当に自動で行ってくれます。
ベストを達成できるわけではないですが、解決したい課題に対してAIが優れたサポートを提供してくれています。
倉
もうすでに一部のエンジニアにとっては必須のものとなっていますね。
圧倒的な時間短縮につながるし、コード解説やレビューもサポートしてくれるので、初心者から上級者まで様々な人が利用できます。5年くらい経てば企業レベルで必須になってくるはずです。
キャリアパスが難しくなった若手エンジニアの生存戦略を考える必要も
齋藤
その代わりプログラミングスキルの市場価値が下落していくことは確実なので、今の20代エンジニアのキャリアパスが、非常に難しくなったなという感触があります。AIによって、それなりのアウトプットが出力されるようになってしまったからです。
それまでに培った技術がある方はAIで有利な面が増えますが、ただプログラミングスキルをつければ良い、という世界ではなくなります。若手の将来的な生存戦略も、エンジニアチームの課題として捉える必要があると思っています。
とは言いつつも、こういった歴史はエンジニア界隈では繰り返されています。例えば、過去にPHPが流行ったときには、C言語を学ぶべきという言説もあったように思えます。そのC言語が開発されたときにはアセンブリの習得が必要、といったこともあったという話も聞きます。私自身、C言語の実務経験は無かったものの、昨今ではAWSを初めとしたクラウド技術で貢献できていたりもしますので、若手のキャリアパスについてもそう悲観するものでもないかなと。
倉
プログラマーが行うべき仕事やスキルそのものが変わっていくなかで、「何をつくりたいのか、どうつくりたいのか」といった新たな管理や指示をAIにすることが今後のエンジニアに求められる役割なのかもしれませんね。
EM体制で成功したココネエンジニアの組織強化
― 2023年、エンジニアチームのターニングポイントは?
倉
まず2021年から会社全体で「300人採用」を掲げて採用を強化したことで、社員数がグループ全体で1000人を超える程、企業規模が拡大しました。
東京のエンジニアチームも100人規模にスケールアップしたことで体制を見直すことになって、試行錯誤した結果、エンジニアリングマネージャー(EM)・テックリード(TL)体制を形作れたことが2023年のターニングポイントだと思います。
もともとココネの考えでは、エンジニアのリーダーというものは、開発とマネジメント両方をこなせるプレイングマネージャーを理想としていました。ただ、それは少数の組織であれば叶うもので、人数が増えるとマネジメントの比重がだいぶ重くなってきます。
CTOに就任した際、リーダー陣にヒアリングすると口を揃えて「時間がない」と話していました。打ち合わせやマネジメントに追われて、開発作業に費やす時間が持てないと。
大抵、開発の実力がある人がリーダーになるので、その人たちがマネジメントに追われていてはもったいない。そこで昨夏からクライアントとサーバーごとにTLを立て、さらにエンジニアをまとめるEMを事業部ごとに立てることにしました。
EMが立ったことで、「しっかりと人をみていくよ」という意識が伝わって、特に若手のエンジニアが相談できたり頼れたり、意見を吸い上げてもらえる環境が整ったと思います。EM体制を敷いたけど崩壊しちゃったという他社のケースもよく聞くので、徐々にですが、結果として組織が強くなったことが収穫でした。
齋藤
今まで属人的だった1on1を、EMの主な仕事の1つとして定義しました。
単純なことですが、多くのメンバーから「色々な相談がしやすくなった」という声を頂いてます。もっと早くやっていればという思いもありますが、それまでの状況で各々のEMが構築できていた信頼関係が、上手く仕組みとして稼働したのだと考えています。
また、EMでの横断の定例会では半期で100を超える課題を議論し、対応してきました。もちろん大小様々な課題が日々発生しますが、これらの議論をテックリードではなく新たなEM横断組織で解決できた点も、非常に仕組みが上手く稼働した点だと思います。
エンジニアだけが幸せになるEMでは良くない
― どのような点に配慮して体制を構築したか
倉
体制をつくること自体を目標とせず、本質的な目標にも意識を向けていたからこそ実現できました。
要は、エンジニアだけが幸せになるEMでは良くないと思うんですよね。EMが事業サイドにもコミットして、事業部長やメンバーと円滑な協力体制を築くことが大切と考えました。実際、事業部長に「EMがいて助かったわぁ」と言ってもらえたことがすごくよかったですね。
EMが事業メンバーにとって頼りになる開発者の代表者であることを意識づけできたことは、ココネのEMがどうあるべきか、構築前からしっかりと議論した結果です。
― そのココネらしいEMとは?
齋藤
もともとココネの根柢にある「人と向き合う」「お客様と向き合う」といった文化がエンジニア含めた社員に浸透してたから体制が上手くいった、と思っています。
必然的にエンジニアを良く知るEMは多方面のリーダーと話す機会が増えるわけで、サービスや人と向き合えることが大事な要素になってくるのかなと。
倉
EMは僕が選出しているわけではなく、事業部付けの各エンジニアチームのなかで話し合って選ばれる形をとっています。なので、スキルはもちろんですが、人柄をみて選んでいる面もけっこうあると思います。エンジニアには「開発に専念したい」という希望もあると思いますが、今回、EM選出の場面で難航したことはありませんでした。それは本当に運がよかっただけかもしれないですね。
大元を考えると、ココネのエンジニアの採用場面ではスキルはもちろん、ホスピタリティもみていたりします。
また、そういった人材が多かったり求めたりするのは、当社の事業がデザインドリブンだからかもしれません。
当社で提供されるサービスはゲームではなく、「感性」をテーマにしていてデザインドリブンで多くの物事が進んでいきます。そこには、デザイナーたちがアイデアを広げ、エンジニアが技術で実現させてサービスを作っていく面白さがあります。
デザイナーとエンジニアがフラットな関係というのも、当社の特徴です。
グラフィックやSREの専門チームを立ち上げる
― 今年のエンジニアチームの目標
齋藤
昨年はEM体制の構築自体がチャレンジングな取り組みでしたが、今年はEMを当たり前にいる存在まで押し上げることが必達目標かなと考えています。
ゆくゆくは、デザイナーをはじめとした組織ともナレッジ共有をお互いに行えるようになると良いなと思っています。
倉
開発面ではココネでは当たり前に強くする必要があるグラフィックの強化ですね。今までは個人の献身に頼っていた部分もありましたが、これからはそれをミッションにしたチームを立ち上げることを目指しています。それによって各サービスで新しい表現を獲得したり、これまで諦めていた演出を表現できるといいなと。
もうひとつはSRE(Site Reliability Engineering)面で、サービスを安定的に成長させながら運営できることをメインミッションにしたチームの立ち上げです。100万や1,000万DAUを目標にして会社として取り組んでいますが、あらかじめそういった環境を構築していけるチーム作りを目指します。