プロジェクトをリードし、クライアントの課題の根底にあるものを突き詰め、解決に導くソリューションを提示するCINRA, Inc.(以下、CINRA)のアカウントプランナーたち。メディア運営をはじめ、広告クリエイティブやイベントの企画・制作、企業の社内研修プログラムまで、多岐にわたる事業を展開しているCINRAにおいて、案件の方向性を組み立てるアカウントプランナーは欠かせない存在です。
2021年のメディアCINRAのフルリニューアルと、会社の組織改変を機に、アカウントプランナーたちは、新しく打ち立てられた「ソーシャル×カルチャー」を強く意識するようになりました。それから2年、CINRAのクリエイティブ制作はどのように変化したのか。アカウントプランナーが所属するプロデュースユニットユニットリーダーの加藤修吾、アカウントプランナーの郭晴芳、坂井俊之に、「ソーシャル×カルチャー」の視点が加わったことで生まれたクリエイティブに対する意識の変化と、今後のビジョンを語ってもらいました。
取材・文:宇治田エリ 撮影:丹野雄二 編集:市場早紀子(CINRA, Inc.)
加藤修吾
プロデュースユニット ユニットリーダー / 取締役。2012年東京大学大学院博士課程満期退学。同年、株式会社電通に入社。主にデジタルコミュニケーション設計やWebサイト制作・システム構築のプロデュースに従事。その後、営業として主に外資系食品メーカーのメディアプランニングを担当。2018年12月にCINRA, Inc.に入社。事業部長としてストーリーブランディングをサービス化する一方で、社内組織改変の責任者を経て2022年1月に同社取締役に就任。
郭晴芳
プロデュースユニット アカウントプランナー。台湾生まれ。2016年にCINRA, Inc.に入社し、アジアのシティガイド「HereNow」のクリエイティブプランナーとして日本および台湾の中央省庁や地方自治体、民間企業の案件に携わる。近年は、商業施設のビジュアルやファッションイベント、冊子などの企画・ディレクションを担当。
坂井俊之
プロデュースユニット アカウントプランナー。現代アートを扱うギャラリーのディレクターを経て、2021年にCINRA, Inc.に入社。主に商業施設の販促企画や企業PR、オウンドメディアのディレクションを担当。
付加価値として何が提供できる?「ソーシャル×カルチャー」が深化させるもの
―クリエイティブ制作において、アカウントプランナーはどのような動きをするのでしょうか?
加藤:アカウントプランナーの仕事は「企画営業」として、クライアントにヒアリングを行ない、課題を掘り下げるところからはじまります。その後、社内で最適なチームを組み、制作に必要なソリューションを提案し、クライアントと一緒にコンセプトをすり合わせていくところまでがメインの役割です。なので、プロジェクトの基盤づくりを担うアカウントプランナーは、プロジェクトに欠かせない重要なポジションです。
プロデュースユニット ユニットリーダー / 取締役の加藤修吾
―2021年に自社メディア「CINRA」をリニューアルしたのと同時に、クリエイティブ制作においても「ソーシャル×カルチャー」というブランディングを打ち出しています。どのような背景があったのですか?
加藤:自社メディアを運営していると、読者の興味関心が「カルチャー」だけにとどまらず、政治や環境、健康などといった「ソーシャル」の分野にも広がっていることを肌で感じます。世の中の人々の意識が変わるにつれ、企業側も、ソーシャルの文脈に対して「どのようなアクションを取るべきか」を意識しているところが増えているんです。
そういった世の中の流れとクライアントの方々からの期待に応えるために、「ソーシャル×カルチャー」の軸で一気通貫したソリューションを提供していこうと判断しました。
―CINRAの強みである「カルチャー」に、「ソーシャル」の要素が加わったことで、アカウントプランナーとしての仕事のやり方に変化はありましたか?
加藤:ソリューションは、Webサイト制作やイベント企画、場所づくりなど多岐に渡りますが、社内では以前から「CINRAは何を付加価値として提供できるか?」という問いをつねに投げかけながら仕事をしていました。そこに「ソーシャル×カルチャー」の軸を立てたことで、よりCINRAらしい企画が立てやすくなったと感じています。
実際に案件の初期段階で社内メンバーと「このプロジェクトにはどういった社会的意義があるのか」について話し合う機会も積極的に設けています。それによって、いままではマーケティング課題で止まっていたことが、「それが社会に対してどういう影響を与えるのか」というところまで広がる質問ができるようになりましたね。
郭:もともとCINRAのメンバーは「なぜそれをやるのか」といった課題意識や、ソーシャルイシューに関心を持っている人たちが多いので、「社会的意義」の部分を意識した制作実績は、以前からあるなという印象でした。
それを「ソーシャル×カルチャー」という言葉にして発信するようになったことで、これまでつくった点と点がようやくつながって線になり、私たちがやっていることがより明確になってきたと実感しています。
アカウントプランナーの郭晴芳
坂井: ぼくは、ターゲット以外の視点も意識するようになりました。もちろん、プロジェクトにおいてターゲット設定は重要ですが、ソーシャルという広い視野で捉えた場合、いろいろな価値観の人がいるという前提は忘れてはいけないと思うんです。
企画を考える際には、社内メンバーだけで考えるのではなく、なるべくクライアントとディスカッションやワークショップをし、さまざまな視点を踏まえたうえで考えて提案するようになりました。
アカウントプランナーの坂井俊之
自分自身も感化されるプロジェクトとの関わり方
―これまで手がけたプロジェクトのなかで、「ソーシャル×カルチャー」のブランディングを体現できたものを教えてください。
坂井:スポーツウェアメーカーである株式会社ゴールドウインの社内研修プログラム「School of S²AT(スクールオブサット)」の案件です。CINRAは、プログラムの企画から、制作・運用を担当しています。
ゴールドウインは、自社製品のことだけを考えるのではなく、真摯に自然環境と向き合いながらクリエイティブであることを大切にしている企業。「School of S²AT」は、もとはゴールドウイン社内で企画・運用をしていて、アルピニストの方や環境問題に取り組んでいる方などをゲストに呼んで行なっていたのですが、もっとプログラム企画の幅を広げたいということで、CINRAに声をかけていただきました。
ぼくらはまず、ゴールドウインの社員がより興味と主体性を持って社内研修に参加してもらうにはどうしたらいいかを考えました。そこで、ゴールドウインが大切にしている「ソーシャル」の意識に、CINRAが得意とする「カルチャー」の領域を掛け合わせた企画とゲストを提案しました。実際に手や頭を使って参加してもらう「インタラクティブ感」を大切にした内容なので、参加者の方々からも非常に好評です。
―具体的にはどのようなプログラムに落とし込まれたのでしょうか?
坂井:たとえば、東京オリンピック・パラリンピックの閉会式に出演した、ダンサーのアオイヤマダさんをお招きした回では、「常識はどうやって破るのか?」をテーマに、恥ずかしさや常識の枠を超えて、アイデアをかたちにする楽しさや表現の自由について考える、インパクトのあるセッションを行ないました。
一見、ゴールドウインの事業とはかけ離れたジャンルに思えるゲストですが、固定観念にとらわれずに幅広い視野を持つことで得られるインスピレーションは、きっとどんな仕事にも活かせると思うんです。
プロジェクトの上流設計に携わるアカウントプランナーとして、ぼく自身も毎回新たな気づきを得て感化される案件ですね。
株式会社ゴールドウインの社内研修プログラム「School of S²AT(スクールオブサット)」
―郭さんはいかがでしょう?
郭:外部のパートナー企業とCINRAの協業で取り組んでいる「coe」というプロジェクトです。新型コロナによって生きづらさを抱え、孤立・分断している若者が増えているいま、パートナー企業が持つ課題解決力、そしてCINRAのクリエイティビティーとカルチャーの力をかけ合わせることで、小さな声から課題を見つけ出し、よりよい未来をつくることが目的で、記事やPodcast、イベントなど、これまでさまざまなかたちで発信を行なっています。
―アウトプットがとても柔軟なプロジェクトですね。
郭:はい。「coe」では、未来世代が抱える「人間関係の難しさ」といった、普段はこぼれ落ちてしまうようなさまざまな課題を、直接彼らにリサーチし、集計結果をレポートとしてまとめています。課題を数値として可視化するとインパクトがあるので、その情報を活かしながら、自由な発想でアウトプットに落とし込んでいます。
なかなか表に出ることのない子どもたちの生の声を集めた、ドキュメンタリータッチのPodcast番組『ちいさなcoe』の制作制作では、メディア「CINRA」の編集長・生田と一緒に、子ども食堂や中高生向けの施設で取材を行ない、インタビュイーの子どもたちと真摯に向き合い、対話をしながらつくっていきました。
この「coe」は、CINRAのなかに点在していた「ソーシャルへの意識」がひとつのプロジェクトとして見える化した案件のひとつだと私は思います。
CINRAとパートナー企業による「coe」プロジェクト
―郭さん自身にとっても、また、社会的にも大きな意味のあるプロジェクトですね。
郭:「一つひとつは身の回りにある小さな問題であったとしても、積み重ねると大きな社会問題になる」というプロジェクトの着眼点は、社内外からも共感の声を多くいただきます。
CINRAの表現力やパートナー企業のリサーチ力を活かして、最終的にはいろんな企業も巻き込みながら、さらなる共感を生む発信をしていきたいです。
加藤:より多くの人にプロジェクトの存在や思いを伝えるためにも、多様なソリューションを持つことは大事ですよね。とくにソーシャルイシューに関わる場合は、参加する人が増えるほど効果的。より大きな企業と連携していくことで、CINRAとしての影響力も増していきたいと考えています。
企業とともに、社会に影響を与えていく。アカウントプランナーが見るCINRAのこれから
―現時点でみなさんが考える、CINRAらしいプランニングとは何でしょう?
加藤:結局、「ソーシャル×カルチャー」の言葉が幅広いがゆえに、「どんなものがこの軸に沿ったアウトプットだ」という定義は、いまもみんなで模索しているというか。坂井さんも以前「CINRAらしいプランニングとは?」というテーマを議題に出してくれたけれど、一度や二度の議論では結論は出ないもの。実践しながらその答えを探って、ある程度のところでフレームワーク化はしていきたいです。
坂井:アーティストやミュージシャン、クリエイターなど、意外性のある掛け算をすることで、新しいファン層を拡大できるところもCINRAらしいですよね。以前にも、トークイベントで医師の方とミュージシャンの対談を組んだことがあるのですが、実際にお二人の会話がとても盛り上がって、終了後にはご本人から「すごく楽しかった!」とコメントをいただけて。イベントを機に、演者の方々のソーシャルな意識を引き出せた気がして、嬉しかったですね。
―最後に、「ソーシャル×カルチャー」を軸に、これからどのようなことにチャレンジし、変化を起こしていきたいですか?
加藤:企業がソーシャルイシューに対して発信することは、とてもプレッシャーが伴うものです。だからこそ、これまで自社メディアでの発信を通して、「伝え方」を工夫し続けてきたCINRAという会社には、さまざまな企業に信頼してもらえるポテンシャルがあると思うんです。今後もしっかりと信頼感を勝ち取って、生活者だけでなく、企業の人も巻き込みながら、ソーシャルイシューについてよりよい正解や共通理解を持つ手助けをしていきたいです。
坂井:課題感のスケールが大きな案件は、自分一人で取り組むにはハードルが高いけど、社内のメンバーやパートナー企業、事業者の方々と一緒であれば心強いですもんね。社会を動かすような大きな変化でなくても、少しの変化でも意味はあると思うので、これからもいろいろなクリエイティブを生み出していけたらと思います。
郭:私は台湾出身なのですが、台湾はアジアで初めて同性婚が認められた国なんです。その背景として、国民一人ひとりの「自ら声をあげて変えていく」という意識がとても高く、実際に何年間も声を上げ続けた結果、政府が動き、認められたという経緯があります。「coe」のプロジェクトをはじめ、少しずつでもいいので影響を与え、変化を与えられるような案件を、さまざまな企業と一緒に取り組んでいけたらと考えています。
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