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こんにちは、CINRAの人事・採用を担当している康(かん)です。
コーポレートサイトを訪れると、ほぼ必ず目にするのが、掲げられているミッション・ビジョン・バリューです。あなたの働く会社にもきっとあるのではないでしょうか?
企業にとって不可欠といわれるミッション・ビジョン・バリューですが、内容を定めて全員に周知して完了!……ではありません。大切なのは、メンバーの一人ひとりが、ミッションを達成するために行動できるようになること。
では、社内にしっかりと根付かせるためには、どうすればいいのでしょうか?
私たちCINRAも創立15年を機に、「ミッションドリブンカンパニー」になることを宣言。ミッション、そしてそこに紐づくバリューが、すべての行動原理や行動指針となるように、アップデートしました。
また、CINRAは受託事業として、PERSOL(パーソル)さんやmixi(ミクシィ)さんといった大手企業のインナーブランディングも手掛けています。となれば、自社でもやらないわけにはいきません。
第一歩として、4月から私をオーナーとする「ミッション・バリュー社内浸透プロジェクト」に取り組んできました。今回は、実際に行われたCINRAらしさにあふれる施策を振り返るとともに、その背景にある私たちが大切にしているカルチャーについてもご紹介していきます。
取材・構成:中道 薫 写真:西谷翔、小河原 万里花、康あん美(CINRA)
康あん美
2015年入社。カルチャーオンラインストア「CINRA.STORE」 のディレクターとして、バイイング、商品企画などを担当。2018年7月から人事を務める。
■ミッションが、全メンバーの意思決定の指標となるように
これまでCINRAは「幸せのきっかけを、多くの人に届ける」というミッションを掲げてきました。創業15年を迎え、それをもっとクリアに定義し直したのが、こちらの新しいミッションとバリューです。
“Inspire people to fill the world with imagination.(人に変化を、世界に想像力を。)”
“Why, Why, Why.(問いをやめない。)”“It Starts with You.(すべては、あなたからはじまる。)”“Be Open to the Future.(心は、いつも開けておく。)”の3つのバリューを設定した。
リニューアルの背景には、ミッションが全員の意思決定の指標として機能してほしいという思いがあります。代表の杉浦が決断するときはもちろん、リーダーや社員たちもこのミッションを軸に判断ができるように、と。
同じく2018年12月には、組織体制も変更しました。弊社が持つ強みをベースに、「International Company」「Arts & Culture Company」「Ownership Company」と呼ばれる3つの事業部に分け、それぞれに自社サービスと受託事業を紐付けました。
ようやく新体制での動きに慣れてきた4月、改めて私がプロジェクトオーナーとなり、ミッション・バリューの浸透に向けて動き始めることになったんです。
ゴールは2つありました。まず、「ミッション・バリューに基づいて、社員一人ひとりが仕事をしている状況をつくる 」こと。そして、「ミッション・バリューに共感して、ジョインする仲間を増やす」です。そこに向けて、大きく分けて4つのフェーズを設定し、それぞれに施策を紐付けることにしました。
かなりかっちりとプランニングできているのは、受託事業でさまざまな企業さんのインナーブランディングを手掛けてきた賜物ですね。この4段階に合わせて施策を考えていきました。
たとえば、第1段階の認知フェーズとして、まずはメンバーやお客さまとのタッチポイントを増やそうと考えました。Wi-Fi名をミッションから抜粋した「InspireChange」へと変更し、来客用のペットボトルもミッションをプリントしたデザインに。
また、主に社内のメンバーが使う紙コップには、バリューをプリントしました。3種類のバリューがランダムで出るので、おみくじみたいな気分で楽しんでもらえているようです。
そのほかにも、行動・習慣化として全社集会でバリューにつながる体験ついて語る「バリュートーク」や、社員紹介のために作ったプロフィール帳に「一番好きなバリューは?」という質問を設けるなど、フェーズごとに大小さまざまな施策を実行しました。その中からCINRAらしさが詰まったものを3つご紹介しましょう。
■3人のアーティストが表現する「ミッションアートプロジェクト」
CINRAといえば、アートやカルチャーというイメージをお持ちの方も多いはず。実際に、お仕事で関わるだけでなく、美術や音楽、映画が大好きなメンバーが集っています。そこで、3人のアーティストに、CINRAのミッションをもとに作品を作っていただくことにしました。
大野彩芽氏による作品
Rooo Lou氏による作品
佐野凛由輔氏による作品
候補のアーティストさんの中から、社員全員のアンケートで3名に絞り込みました。そもそもはミッションを客観的に捉えるという狙いのプロジェクトでしたが、「企業のミッションを自由に解釈して作品に落とし込む」というのは、アーティストさんにとってもなかなかチャレンジングなお題だったようです(笑)。
それぞれの作品は、作家さんのコメントが添えられている。
このようにして生まれたのが、CINRAのオフィス入口に飾られている3つの作品です。
何より嬉しかったのは、作家さんたちが弊社のミッションにとても共感してくれたこと。何パターンも作ってからさらにブラッシュアップしてくださったり、グッズにしたときのモックを作ってくださったり。とても真剣に向き合いながら制作してくださっていました。
さらに、3つの作品は、クリアファイルやTシャツ、ブランケットなど社内向けのグッズにしました。さりげなくミッションもプリントしてあります(笑)。作家さんたちへはグッズにすることも最初にお伝えしていたのですが、「好きにトリミングしていいし、どういう形で使っても大丈夫」と、すごく好意的に使用を許可してくださいました。
■アウトプットの中から繋がりを発見する「バリューボード」
アーティストさんにご協力いただいた施策のもう一つが、「バリューボード」というもの。
CINRAは、自社メディアとして『CINRA.NET』『CINRA.JOB』『HereNow』『She is』という4つの媒体を運営しています。ここには、これまで作ってきたインタビュー記事などのたくさんのコンテンツがある。その中から、各メディアの担当編集者が、バリューに紐づくであろう一説と写真を引用し、パネルにプリントして社内のいろんな所に週替わりで掲出するという取り組みを行いました。バリューを多角的に考える機会を作る試みです。
ミッションアートプロジェクトのラベルがあしらわれたオリジナルビール右側に置かれたバリューボード(画像は一部加工)。自然と来訪者の目にも入るよう、エントランスにも設置した。
社内だけに向けたものとはいえ、アーティストさんのインタビューを使うので、マネージメント会社はもちろん、撮影していただいた写真家の方にも、すべて許可取りをしました。
なかなかに手間のかかる作業ではありますが、こういったアーティストの方々へのリスペクトこそ、CINRAが最も大切にしてきたこと。私も許可取りを手伝いましたが、全社的なプロジェクトに自分たちのインタビューが使われることを大変喜んでくださるなど、予想外にいい反応をいただけました。
■多様な解釈のワークショップから生まれた「カルチャーブック」
社員同士でもミッション・バリューについて多角的に考えました。それが、社員旅行で行ったカルチャーブック制作のワークショップです。
これは、社歴でチームを分け、4〜5時間くらいかけてCINRAのカルチャー、そしてミッションとバリューを自分たちなりに解釈してアウトプットにまとめ、プレゼンテーションしてもらうというもの。
「ミッション・バリューは、こんな解釈の仕方もある」ということを知ってもらい、理解・共感を深めました。人を楽しませることが好きな社風からか、映画の名言になぞらえてまとめるチームや、なかにはゲーム仕立てのカルチャーブックを作り上げたチームも。
CINRAのカルチャーブック。会社を擬人化し、ミッションを考え、バリューを気持ちに見立てて紹介している。
最終的に、CINRAに新しく入った人たちが審査員となり、各チームを評価。それをベースに再編集し、このようなデジタル版カルチャーブックを取りまとめたのです。
■目指すは、ミッションドリブンカンパニー。でも、柔軟で多様な組織でもありたい
半年間のプロジェクトと並行して、毎月アンケートでミッションとバリューの浸透度を計測。認知は大多数のメンバーの間で進んだものの、自分の業務に紐付けて考えられるレベルまで到達した人は4分の1程度という結果になりました。
ミッション・バリュー社内浸透プロジェクトチームは一旦解散となりましたが、次の展開として、各事業部で取り決めたカンパニーミッションの浸透度なども調査していくことで、さらに浸透度を高められると考えています。
また、現在は採用面談で、候補者とバリューのマッチングを見たり、メンバーの目標設定で5つのバリューから1つを選んで半期目標にするといった取り組みをしています。それを今後さらに、人事考課の重要な評価軸にしていくといったことで、ミッション・バリューを実務に結びつけていけるかもしれません。
半年間の取り組みで感じたことは、私たちの施策を楽しんでくれるメンバーが多かったことです。人事や広報がリードすることで、トップダウンになってしまわないこと。ここが私の最も気をつけていた部分なので、プロジェクトチーム以外の人を巻き込めたこと、協力的に動いてもらえたことはとてもありがたかったです。そのおかげで、ここまで新しいミッション・バリューの認知が広まったのだと思います。
社内でミッションアートプロジェクトを配布したときの様子。
一方で、「一つの指針のもとに動いたり、みんなが同じ方向を向くことに抵抗がある」という声も、ゼロではありませんでした。こういった声を上げてくれるメンバーも、CINRAはとても大事な存在だと思っています。
今回のような全社的なプロジェクトは、得てして一方通行になりがち。だからこそ私は、「これがみんなにとっても良いものである」という納得感をどうやって作るかを常に考えていました。「ミッション・バリューを取り入れることで、どんなふうに仕事や生活がよくなるか」「みんなが何を手に入れられるか?」と。
実は、ミッション・バリューのリニューアルから約1年、内容をマイナーチェンジしました。冒頭に載せた英文と、紙コップに記された英文が少し異なっているのにお気づきでしょうか? CINRAとしての軸はブレさせたくない。でも、現場にフィットしなければ意味がないからです。
今後も、CINRAという組織とみんなの間に入って、組織がやろうとしていることを、どうしたらみんながスムーズに受け入れられるかを自分に問いかけることは忘れたくありません。みんなが心からいいものだと思ってくれなければ意味がない。ミッション・バリューも常に見直すくらいの柔軟さを持って、ミッションドリブンカンパニーを実現していきます。