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CINRA, Inc.(以下、CINRA)は2024年10月に株式会社WOWOWコミュニケーションズ(以下、WOWコム)のグループに参画。同時に、代表は創業者の杉浦太一から加藤修吾に引き継がれました。その日から約1年が経ち、加藤は「会社が大人っぽくなった」と振り返ります。
顧客の声を丁寧に扱うWOWコムとの協働、社会課題に挑むパートナー企業との仕事──そして、「第2創業期」としての再出発。いま、CINRAがどこに立ち、どんな未来を描いているのか。その現在地を聞きました。
取材・執筆・編集:服部桃子(CINRA, Inc.) 撮影:丹野雄二
WOWコム&CINRAは「小さな声を届ける会社」。グループ参加で生まれるシナジーとは?
ー CINRAがWOWコムグループに参加して約1年が経ちました。いまのCINRAにどのような変化が起こっていると感じますか?
加藤:社員がどのように感じているかわかりませんが、私としては「会社が大人っぽくなった」と感じています。やはり、親会社に利益を還元していく立場になったことで、これまでとは少し違う緊張感をもちながら仕事ができるようになったかなと。あとは、WOWコムとの交流が増えたことも関係しているのではないでしょうか。
WOWコムが開発したコーヒー(※)のデザインをCINRAが担当したり、ポートコール(※)では来社いただいて、コメントをくださったり。応援していただいている実感があるからこそ、みんな無意識のうちに背筋が伸びているところがあるのかもしれません。
※WOWOWコミュニケーションズが障害者雇用の創出を実現するために、オリジナルドリップコーヒーの制作を行っている。欠点豆をハンドピックで取り除いたコーヒーは福利厚生として従業員に配布するほか、取引先企業への手土産としても活用している
※CINRAで半期に1度開催されている決算報告などを交えた会。船が特定の港に寄港すること(「Make a Port Call」)から、半期ごとに立ち返る場所という意味で名づけられた
CINRA代表取締役 加藤修吾
CINRA社員がデザインしたドリップコーヒーのパッケージ
ー WOWコムとCINRAは、どのようなシナジーを生み出していきたいと考えているのでしょうか?
加藤:WOWコムはコールセンター運営を中心にメールやチャット、SNSなどからも顧客の声を受け入れる「コンタクトセンター」の構築に強みを持っています。さまざまな接点で多様な顧客からフィードバックを受けることはマーケティングにおいて非常に重要なのですが、従来、クライアント企業にその情報を活かしてもらうのが難しい場面もあったと聞いています。
一方CINRAは、他社オウンドメディアの立ち上げやコーポレートサイトのリニューアルなどが得意領域。クライアント企業の経営層と直接対話し、その意思やビジョンを伝えるメディア構築を生業としています。そこで、グループとしてコンタクトセンターで得られた顧客の声と、CINRAのクリエイティブ領域で得られる経営者の想いをつなぎ合わせ、より実践的なマーケティング支援を提供することが目標の一つです。
ー その目標に対して現状はいかがですか?
加藤:ようやく走り出したかなという感触です。CINRAの持っているデータをWOWコムに共有して分析いただいたり、WOWコムとCINRAのあいだで社員の出向をしあったりしているところで、これからですね。
私たちCINRAはコンテンツを通じて人々の「クリエイティブな意思」を届けることを大切にしています。一方WOWコムは、これまで、ユーザー一人一人の声を大切にし、それをマーケティングに活用することを大切にしてきた会社です。「小さな声を大切にして、届ける」という点で、一緒の想いを持っていると考えています。
ビジネス的な側面でいうと、WOWコムは「小さな声」を実際のマーケティングに活かすための丁寧な顧客対応、データの取り扱い、プロフェッショナルな提案力を持っています。CINRAとしては、それらを学びながら、企業活動のなかでステークホルダーの声がしっかりと還元されていくようなソリューションを共同でつくっていきたいです。
「私たちは世の中を変えられる」。創業20年で築き上げたCINRAらしい「信念」
ー WOWコムグループ加入と合わせて、代表に就任して1年。2021年のインタビューで、「半端なキャリアで終わりたくない」と語っていましたが(*1)、夢が叶ったかたちになりますか?
加藤:いや、別に代表を目指していたわけではないんですよね。大きな会社で、うまいこと世渡りしてそのままキャリアを終えて本当に良いのだろうかと思っていて。そこまで規模が大きくない会社で、自分たちが正しいと思っていることを仲間と一緒にやり抜くほうが、死ぬ間際に後悔しなさそうと思ったんです。その想いは変わっていませんが、まさか自分が代表になるとは……。
ー 予期せず代表となったいま、就任以前と比べて会社に対するご自身の意識に変化はありましたか?
加藤:私はCINRAが発足した当初に参加していて(前代表の杉浦と加藤は高校の同級生)、メディアにコラムを載せてもらったこともあるんですね。会社化し、私がCINRAに入社してからもたくさんの変化があり、組織の規模としては大きくなっていって。多くの人が仲間に加わりましたが、もちろん巣立っていった人も多くいます。
そういう、過去に関わった人たちに「いまも見られている」と思っていて。下手なことできないなというか。あとは、「いまの社員たちも頑張ってるんだぞ」と知ってもらいたいとも考えています。
ー 「知ってもらいたい」とは?
加藤:仲間うちで始まったCINRAが会社になって、20年以上続いているって、純粋にすごいことだと思うんです。前代表の杉浦がCINRA発足当初から持っていた「世界に想像力を届けて、平和にしたい」というビジョンが世の中にしっかり通用すると証明されたのだなと思うし、世の中に認められたことを知ってほしい。
CINRAを退職された人も、一時期は「等身大の自分」が所属した会社じゃないですか。かつてCINRAのビジョンに共感し入社して、さまざまな理由から別の道を選んだけれど、CINRAに入社したことは間違ってなかったと思ってほしいんですよね。誇りに感じてほしいというか。だから、もっと頑張らないと、と思います。
ー 代表として、どのように舵取りをしていきたいですか?
加藤:CINRAらしさを大切にしたまま、いかにしてより大きな社会的インパクトをつくれるかを考えていきたい。想いの強さだけではなくて、社員と話し合い擦り合わせながら、戦力や仕組みを併せ持って推進させていきたいです。その点において、私はある種の自信があります。
私は、CINRAにはある種のやんちゃさがあると思うんです。社員たちはみんな、「自分たちは世の中を変えられる」と本気で信じている。社会的インパクトは財力によってなされるのではなく、「考え続ける」からこそ生み出せるもの。それを信じているのが、CINRAのいいところだと思っています。
WOWコムのグループに入るときも、WOWコムの代表取締役が「いい会社だから、そのよさを大切にしてほしい」と仰ってくれたんですね。思わず「いい会社つくったんだって、杉浦さん」って思いましたけど(笑)。
自社メディアだけが「CINRA」じゃない。幅広い取り組みとブレない軸
ー CINRAは「クリエイティブな意思を、他者に届ける」をコンセプトとした自社メディア「CINRA」を運営していますが、一方で受託案件も多く手がけています。自社メディアがある程度認知されブランド化しているなかで、受託案件にも注力するのはなぜでしょうか?
加藤:前提として、世の中の多くの人が「この世界を良くしたい」と考えているはずです。いい世界の定義はさまざまあると思いますが、私は、「いろんな意見を取り入れて、失敗を重ねながらも合意形成を丁寧に図りながら前に進む」世界は、いい世界といえるのではないかと考えていて。いろんな人の意見を聞くこと、聞こえる環境をつくることが大事だと思っています。
仕事も同じで、社会を良くするために活動している会社のお手伝いをしたい。会社の声を、より世の中に伝わるかたちにするのが私たちの役割だと思っています。
その声が聞き手にとって良いものかそうではないかはあると思いますが、まずは声を聞いてもらい、考えてもらって、「じゃあ自分は何ができるんだろう」と考えることが大切。そういう人が増えれば増えるほど、「いい世界」に近づいていくのではないかと。世の中の判断の選択肢を増やしたいから、受託案件にも力を入れていると言えます。
ー CINRAが担当している受託案件の特徴を教えてください。
加藤:ソーシャル×カルチャーを軸とするCINRAメディアを運営しているからだと思いますが、社会的な課題に対して積極的に取り組んでいるお客さまから相談を多くいただく印象です。すごく恵まれているなと感じますね。
NTT東日本株式会社の地域共創メディア「Lumiarch(ルミアーチ)」。地域活性化のヒントが詰まった多分野にわたる事例や、まちづくりに取組む実践者へのインタビュー、さらには知られざる街の魅力など、「地域」に関するさまざまな情報を発信している。CINRAはメディア制作をサポートした
ライオン株式会社の「習慣」の可能性にふれるメディア「LION Scope」。「あたりまえ」になっている習慣の価値を見直し、積み上げることで大きな力を持つという考えのもと、さまざまな「人」に焦点を当て、その人ならではの習慣や習慣の持つ力、可能性について紐解くインタビュー記事などを掲載。CINRAは編集方針の策定から、記事コンテンツの制作、アートディレクションやサイト構築までをサポートした
AIではなく人が考える「より良い世の中」。「第2創業期」のCINRAが見据える先
ー ここまで、CINRAとしてやっていきたいことをうかがいました。いまのCINRAの現在地については、どう見ていますか?
加藤:率直にいうと、「かがんでいる」時期だと思います。CINRAは1回急成長したので、またジャンプするためには準備期間が必要です。
その準備期間があるからこそ、乗り越えれば船は一気に大きくなる。いまは「第2創業期」にあるんです。いまはまだ豪華客船とはいえないかもしれませんが、「これから大きくなる船を一緒につくること」にやりがいを感じる人にとっては魅力的な会社といえるのではないかと思います。
ー 自分の力で仕組みづくりや、会社を用いて新しいことをしたい人にとってはいい環境といえそうです。CINRAの会社としての魅力をもう少しうかがえますか?
加藤:紙からデジタルに移行している期間のメディアビジネスは、雑誌のビジネスモデルをデジタルに持ってくればある程度成り立っていました。しかし、その時代が終わりを告げ、コンテンツ単位でSNSを通じて流通していく時代になった。いまは、メディアの存在価値や、これからのメディアビジネスってどういうビジネスモデルが成り立つんだろうってみんなが模索している時期だと思います。
だけれども、「編集」はコンテンツをどう見せるかが問われる能力で、それは機械によるアルゴリズムではなく、人の意思で行われるべき領域でもあると思うんです。それを本気で信じて、かつ、世の中を良くしたいという強い思いを持っている会社──CINRAみたいな会社はそんなに多くないと思います。
ー これからのCINRAとして、変化したいことはありますか?
加藤:会社全体で、もっと自信をつけていきたいです。社員一人一人が「自分たちならできる」と胸を張って言えるような環境にしたい。特に、若手の方たちですね。
そのために、たしかな実績を持つ人に入社してもらって、「あの人がいるならきっと大丈夫」と思ってもらえるようにしたいと考えています。「自分はすごいんだ」と自信を持つことももちろん大事ですが、「すごい人と一緒に戦えるから自分だって大丈夫」、そう思える仲間を持てるのはすごく大切なことだと考えます。
ー 先ほど第2創業期とおっしゃっていましたが、仲間を集める時期でもあると。
加藤:そうですね。第2創業期ではあるけれど働くための環境も整いつつありますし、いろんな面で仕事をしやすい環境だと思っています。一人一人の裁量も大きいですしね。あなたは営業職だから、ディレクターだからと職種で業務範囲を規定してしまう文化もありません。プロジェクトに入ってしまえばその人の考えや行動次第でどうとでも動けるはずです。
いい人が多いことも特徴ですね。○○派とかもなくて、何が世の中のためになるのかとか何がクライアントのためになるのか、みたいな議論で話が進んでいく会社は珍しいと思います。ちゃんと意味のある、いい仕事をしたいと思う人がCINRAに興味を持ってくれたらうれしいです。
*1 半端なキャリアで終わりたくない。広告代理店からCINRAに転職した理由(Wantedly)