AI時代の開発組織をどうつくる?セレスの副部長が大切にする「人」と「技術」
「エンジニアリングを楽しめる人と働きたいですね」
そう話してくれたのは、サービスエンジニアリング部副部長として、バックエンドエンジニア組織を率いるU.Tさんです。
2017年1月に入社し、主力プロダクト「モッピー」の開発を起点に、メンバー、リーダー、マネージャーと経験を重ねてきました。現在は複数のプロダクトとチームを見渡しながら、既存サービスの成長、新しい取り組み、そして組織づくりに向き合っています。
今回は、AI活用が進むなかでのエンジニア組織のあり方や、U.Tさんが仕事とメンバーに向き合ううえで大切にしていることを伺いました。
ほがらかな笑顔が特徴的なU.Tさん。エンジニア組織全体を管轄されています。
目次
1. モッピーの開発現場から、組織を率いる立場へ
――これまでのキャリアと、現在の役割を教えてください。
2017年1月に入社してから、長くモッピーの開発に携わってきました。最初はメンバーとして開発を担当し、その後はリーダー、マネージャーと経験を重ね、現在はサービスエンジニアリング部副部長としてバックエンドエンジニア組織を見ています。
以前はモッピーという一つのプロダクトに集中していましたが、現在は複数のプロダクトやチームを横断して見る機会が増えました。
既存サービスを安定的に運用・成長させること、新規プロダクトの立ち上げ、そしてメンバーが力を発揮できる組織をつくること。今は「自分のチームにとってどうか」だけではなく、他のプロダクトや会社全体にとって何を優先すべきかを考える場面が多くなっています。
――役割が広がるなかで、意識していることはありますか。
色々あるんですが、最初から自分だけで答えを出そうとしないことです。
最終的に判断しなければいけない場面はありますが、その前に、現場で働くメンバーがどう考えているのか、どんな状況にあるのかをしっかり聞くことを大切にしています。
「ここまで考えたけれど迷っている」といった段階でも、気軽に相談してもらえる存在でありたいですね。
2. AIを導入するだけでは、開発組織は変わらない
我々セレスのエンジニア組織の中で、今期はAIの活用が大きなテーマです。
ただ、AIを入れること自体が目的ではありません。実際に開発スピードが上がったのか、仕事の進め方が良くなったのか。そこまでつながって初めて意味があると思っています。
便利そうだから使ってみる、というところから始めるのは良いと思います。ただ、これまでのやり方にAIを少し足すだけでは、大きくは変わりません。
どの工程で使うと効果が出るのか。人が考えるべきことと、AIに任せられることをどう分けるのか。実際に試しながら、仕事の進め方そのものを見直していく必要があります。
たとえば、調査やドキュメント作成、テストケースの検討など、たたき台をつくる場面では活用できることが増えてきています。メンバーが考えるべきことや判断すべきことに、より時間を使える状態をつくりたいですね。
もちろん、速さだけを追いかけるわけではありません。開発スピードが上がっても、不具合が増えたり、保守しづらいシステムになったりしては意味がありません。
速くつくることと、安定して運用し続けること。その両方を大切にしたいです。
――AI時代に、エンジニアに求められる力はどのように変わると考えていますか。
コードを書く作業そのものは、これまで以上に効率化されていくと思います。
だからこそ、「何を実現したいのか」をきちんと捉えて、それをシステムとしてどう形にするかを考える力が、より大事になってくるはずです。
事業やプロダクトが目指すことを理解して、技術的な実現方法に落とし込む。そしてAIも使いながら、より速く、より良いものをつくる。そういう価値を出せるエンジニア組織にしていきたいですね。
MTGの中では職位問わず活発な議論ができる土壌があります。
3. 信頼は、「約束を守る」という当たり前から生まれる
――仕事をするうえで、U.Tさんが大切にしていることを教えてください。
約束したことを守ることです。すごく基本的なことですが、信頼関係はそこから生まれると思っています。
「これをやります」と伝えたなら、責任を持ってやり切る。もし難しくなったときも、抱え込まずに早めに共有して、周囲と調整することが大切です。
できなくなってから伝えるよりも、「少し難しいかもしれません」と分かった時点で相談したほうが、チームとしてできることは増えます。自分一人で何とかしようと抱え込みすぎないことも、仕事を進めるうえでは大事だと思います。
――成長するメンバーには、どのような共通点がありますか。
普遍的かもしれませんが、自主性と素直さだと思います。
失敗すること自体は悪いことではない、というのは陳腐な言葉かもしれませんが(笑)。大事なのは、そのあとに「次はどうすれば改善できるか」を考えられることです。
自分なりの考えを持って、「こう変えてみませんか」と提案できること。そして、周囲からのフィードバックも受け止めて、次の行動に生かせること。言葉にすると当たり前のことかもしれませんが、実際にその両方があって行動に移せる人は、ずっと貴重で、だからこそどんどん成長していく印象があります。
4. 現場と経営の間で、前提を共有し続ける
――副部長として、現場と経営の間に立つ難しさはありますか。
両方に対して、できるだけ納得感のある説明をすることを意識しています。
現場には、「なぜ会社としてこの方向を目指しているのか」という背景を伝える必要があります。「上から言われたからやってください」だけでは、納得して進めるのは難しいですよね。
逆に経営側にも、「現場が大変です」とだけ伝えるのでは足りません。現場で何が起きているのか、どこに課題があるのか、何を変えれば改善できそうなのか。そのために必要な支援やリソースは何かを、整理して伝える必要があります。
人や時間には限りがあります。やりたいことが多くても、全部に十分なリソースを割けるわけではありません。
本当に必要な取り組みなのか。今やるべき優先順位なのか。別のやり方で目的を達成できないか。そういったことを考えながら、限られた中で選択していく必要があります。
――メンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか。
結論だけを伝えるのではなく、背景や判断の理由もできるだけ共有するようにしています。
仕事の意図が分かると、メンバーも自分の役割を捉えやすくなります。納得感を持って進められる状態をつくることが、チームの力にもつながると思っています。
5. 任せることと見守ること。リーダーが育つチームのつくり方
――組織づくりにおいて、今後さらに力を入れたいことを教えてください。
メンバーからリーダーやスペシャリストへ、その先のマネージャーへ。そういったキャリアのステップアップできる人を増やすことです。
リーダーとしてチームの一部を担うことと、プロダクトやチーム全体を任せられるマネージャーになることの間には、やはり大きな差があります。
マネージャーには、与えられた仕事を進めるだけではなく、「このチームをどう率いるか」「どの方向へ進むべきか」を考えて、自分で意思決定する力が求められます。
周囲に確認しながら進めることはもちろん大切です。ただ、どこかのタイミングで「自分がこの組織を率いる」という視点に切り替わる必要があります。
「こういう理由で、この方向に進みます」と方針を示せるようになってほしいですね。
――メンバーやリーダーに仕事を任せる際は、どのように関わっていますか。
リーダーレイヤーには、基本的に現場の進め方を任せています。ただ、任せるからといって、相談しにくい状態にはしたくありません。
「ここまでできたら一度相談する」「このタイミングでレビューする」といった確認のポイントは設けています。「迷っている」という段階でも、気軽に声をかけてもらえたらと思っています。
必要なときに支援しながら、自分で判断できる範囲を少しずつ広げてもらう。その積み重ねが、次世代のセレスの軸となる人材を育てることにつながると考えています。
――チームのカルチャーとして大切にしていることはありますか。
立場に関係なく、意見を言いやすい組織でありたいと思っています。
最終的な意思決定には責任が伴いますが、その前段階では、誰もが懸念や提案を出せるべきです。「この点はどうでしょうか」「こうしたほうが良いのではないでしょうか」といった意見が出ることで、チームとしてより良い判断ができます。
話すことが得意な人だけではなく、それぞれの考えがチームに生かされる状態にしたいですね。普段あまり発言が見られないメンバーには、こちらから声をかけることもあります。
メンバーからの相談も快く対応してくださります。
6. 複雑な課題をほどき、チームで前に進む
――これまでのキャリアで、印象に残っているプロジェクトを教えてください。
ずいぶん前の記憶ではありますが、メンバー時代に入会に関わる仕組みを改修した経験は印象に残っています。複雑な仕組みを理解しながら、どう実現するかを考える必要があり、難しさの大きいプロジェクトでした。
また、ポイントに関する大きな対応を行ったときも、非常に大変でした。
ポイントサービスでは、ユーザーが保有するポイントを正確に扱うことが欠かせません。ある時点で、ユーザーごとのポイント残高を正しく把握し、表示できる状態にする必要がありました。
規約の切り替えやユーザーへの確認、発行ポイントの監視など、考慮すべきことは多岐にわたります。限られた期間のなかで、技術だけでは解決できない論点も多くありました。
――そのプロジェクトを通じて、糧となったことはありますか。
一人で抱え込むのではなく、関係者と早めに認識をそろえることの大切さを学びました。
技術的にできることだけを伝えるのではなく、それぞれの立場で何が課題になっているのかを聞きながら、現実的な方法を探していく必要があります。
「この方式なら実現できる」「この部分は、まずこの形で計上しよう」といった議論を重ねながら、要件を整理し、関係者と合意をつくり、実現可能な形へ落とし込んでいきました。
コードを書くことだけがエンジニアの仕事ではありません。複雑な状況をほどいて、チームで前に進むための道筋をつくることにも、大きな面白さがあると思います。
7. 手の届く範囲を、少しずつ良くしていける人と働きたい
――最後に、これから一緒に働く方へメッセージをお願いします。
自分の仕事を自分ごととして捉えて、主体的に進められる方と働きたいです。
できれば、プロダクトや事業そのものにも興味を持って、自分だけの成果にとどまらず、チームや会社にとってどうすればプラスになるかを考えられる人と一緒に働けたらうれしいですね。
私は仕事をするうえで、「自分の手の届く範囲にいる人には、できるだけ幸せになってほしい」と考えています。
たとえば、目の前にゴミが落ちていたときに、そのままにしない人。さらに、「そもそもゴミが出にくくなる仕組みはつくれないか」と考えられる人です。
目の前の課題を見過ごさず、自分たちの手で少しずつ改善していく。その積み重ねが、プロダクトを良くし、チームを良くし、ユーザーにとっての価値につながっていくのだと思います。
エンジニアの仕事には、一定のルールがありながらも、大きな工夫の余地があります。AIをどこまで活用するかも含めて、自分たちで考え、試しながら、より良い開発組織とプロダクトをつくっていきたいですね。
AIの活用や開発スピードの向上など、エンジニアリングを取り巻く環境は大きく変わり続けています。そのなかでU.Tさんが大切にしているのは、技術を取り入れること自体ではなく、技術を通じてプロダクトやチームをどう良くしていけるかという視点でした。
メンバーの声を丁寧に聞き、迷ったときには相談できる関係をつくる。目の前の課題を見過ごさず、チームでより良い方法を探していく。こうした日々の積み重ねが、ユーザーに届ける価値にもつながっていくのだと感じます。
技術を楽しみながら、プロダクトと組織のこれからを一緒につくっていくことに少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひ気軽にお話ししましょう。
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