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(続き)
◯MIT からの合格通知
ここからが本当のアメリカの受験体験でした。大学時代の学校の成績と、TOEFLの点数と、ステイトメントオブパーパス(志望理由書)、「あなたが興したイノベーションについて」「あなたが興した組織の変化について」というテーマでエッセイを2本、推薦状を3通、これらを提出して一次の書類選考を通過しました。4月の上旬、雪の降るボストンに呼ばれて二次面接、2週間後に合格通知をもらいました。
◯4技能を教えられる先生が足りない
こうして、MITで学ぶ機会を得ることになりましたが、ただ憧れだけではなく、世界のテクノロジーの最先端である MITだからこそ、そこで解決策を見出したい課題がたくさんあるのです。今、日本の教育が大きく変わろうとしている中、ビジネス としても、大きな変化が必要となってきています。2020年から、毎年50 万人の生徒が4技能試験で大学を受験します。小学校3年生から勉強を始めると仮定すると対象は10学年、つまり500万人の生徒に対して4技能を教えることになります。仮に一人の先生が50人の生徒を見るとしても、10万人の「4技能が教えられる先生」が必要になりますが、今の日本には量・質 ともに充分な先生がいないのは明らかです。
◯ライティングの解決にテクノロジーが使える?
この問題をどのように解決していけばいいのでしょうか。10万人の英語ができる人たちを海外から連れてくるのでしょうか。連れてこなくても、何らかのテクノロジーを使えば、解決できるかもしれません。スピーキングに関しては、レアジョブやDMM がやっているオンライン英会話に期待が集まっています。一方で、ライティングに関しては、解決策がいまだ見つかっ ていません。自分が TOEFLで苦しんだのでよくわかるのですが、ライティングは自分が書いた英文に対して、いかに質の良いフィードバックを受けることができるかが大切です。それをどうやってテクノロジーで解決できるか、手段を探ることが一つの大きなテーマです。
◯EdTechが抱える問題点
同時に、教育(education)とテクノロジー(technology)を つなげた分野が大きくなりつつあり、それは EdTech(エドテック)と呼ばれています。エドテックが抱えている問題の一つに、 教育現場とビジネスとテクノロジーの3者をしっかりと理解してつなげられる人が足りていないという現実があります。例えば学校の先生は現場のことはよくわかっているけれど、ビジネスやテクノロジーについては距離があります。同じように、エンジニアは現場やビジネスに距離があり、経営者は現場やテクノロジーに距離があります。そのため、目の前にある大きな問題を、昔の古いやり方で解決しようとしてしまっているのです。
◯テクノロジーを使うだけでは問題解決にならない
アインシュタインの言葉に、
"We can not solve our problems with the same thinking we used when we created them"
「問題を作り出した時と同じ考え方では、問題を解決することができない」というものがあります。日本の教育界は今まさにこのズレが生じていると言えるでしょう。例えばせっかくテクノロジーを採用して授業にiPadを導入させても、それはドリルの解答を自動的にやってくれるだけだったり、電子教科書が導入されても、教科書の本文を自動で読み上げてくれるだけだったりします。それはテクノロジーを使わなくても、今までどおり巻末の解答を見れば自分でできるし、CD 音源を再生すれば教科書の本文を聴くことができます。つまり、最先端の機器を使っても、やっていることが昔のままであれば、問題の解決にはなりません。
◯日本の教育の問題を解決したい
本当の問題は、英語が楽しいってどうして思えないのか、やる気がある子も英語力が伸びないのは何故なのか、どうして適切な指導ができていないのか、解決すべきところはそこなのです。 それをきちんと次の次元から考えて、解決策を提示できるような思考が必要です。教育現場・ビジネス・テクノロジーの全てをバランスよく理解して、リーダーシップを持って教育を良くしていきたいし、新しいチャンスを広げていきたいです。もう一つ、一昨年にテキサスで SXSW(サウスバイサウスウエスト)という、世界最大の教育とテクノロジーのシンポジウムに参加 しました。その際、アメリカにはテクノロジーがふんだんにありながら、アジア人が語学を学ぶ機会に対して十分に対応できておらず、このギャップを埋める必要があるな、と感じました。このように、日本の教育界にテクノロジーを使って新しい可能性を見出すことと、アメリカのビジネスと教育の世界にあるこのようなチャンスにテクノロジーをどう活かしていくかを探ること、両方の立場に立つ者として橋渡しの役割をしたいと考えています。そしてそれを実現するためには、世界のテクノ ロジーをけん引している最高機関に身をおくべきだ、と考えて、 MITを選びました。
◯学ぶことの楽しさを伝えたい
Sloan School は、MITで数多く作り出すテクノロジーを世の中に出していくという、非常に大きな責任を持っています。その一員として世界に挑戦していきたいですし、一方で、一人の大学院生として、学ぶことの楽しさを自分自身で味わって、それをキャタルの生徒たちに伝えていきたいです。
(文:英語塾キャタル代表 三石郷史)