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カジーは業界に先駆けてITを駆使し、それまでの家事代行の平均単価を大幅に下げるとともに、より依頼の手間のかからないビジネスモデルを確立して成長を続けてきました。カジーの事業はどのように生まれたのか、そして今カジーが世の中に提供したい価値とはなんなのか。代表取締役CEOの加茂雄一(かも・ゆういち)に聞きました。
会計士から起業家へ。目的を持って生きたかったから
僕のファーストキャリアは会計士でした。数字も得意だったし、会計士の仕事はとても好きでした。会計士を選んだきっかけは、試験が難しそうで、それなりに安定していそうだからやってみようと。大した志もないまま、なんとなく、が正直なところです。
会計事務所に入って3年目くらいから、IPO案件をメインにやるようになりました。ベンチャーの社長を相手に仕事をしていく中で、世の中の課題に対する彼らの熱い想いに触れる機会が多くなりました。困っている人を助けたいとか、環境問題を解決したいとか、問題意識を持っていて、それに人生をかけている。そうした「志」を目の当たりにして、いつしか自分にはそれがないと感じ、コンプレックスになっていった。
起業家たちがどんなことを考えているのか?もっと知りたくなって、グロービスの経営大学院に入りました。グロービスを選んだのは、「志」を大事にしていたから。そこでいろんな人と出会って、話を聞くうちに、目的を持って生きるということの大切さをさらに痛感するようになっていきました。
グロービスの授業の中で、3ヶ月でビジネスプランをつくる課題があって。100個くらいビジネスプランを考えてぶつけましたが、いい評価が取れなかった。それは根本に「誰を助けたいのか」がなかったから、ということに気づきました。そこで「身近な人を助けられるサービスを作ろう」と、家事代行を提案したのが、この事業の始まり。それでやっと、自分の中の目的意識が明確になったのかな。そのときの同じグループの一人が、共同創業者で今のCFOの池田です。
出会ってすぐに意気投合し、創業。現CFO池田との出会い
池田とは出会ってすぐに創業した。2013年7月に初めて同じテーブルについて、9月にコースで発表して、2014年1月に会社を作った。すごいスピード感ですよね(笑)。
なぜそんなにも急に創業したのか?ひとつは、「志」に憧れて、誰かを助けるサービスを自分でやりたい、と強く思ったから。
CFOの池田(右)と。
もうひとつは、仲間です。
池田と出会って、前向きな態度や、建設的な議論が前に進んでいくスピード感が、なんかしっくりきた。お互いを尊重し、尊敬できている感じがあった。会計士の時ももちろん、建設的な議論はできていたんですよ。でも池田には、それに加えて自分に見えてない景色が見えていた、というのかな。一つは僕の知見にはなかった彼の強みであるITだけど、それ以外にも…。言語化できないんだけど、相性なのかなぁ。その相性とは何かを突き止めていくのが、カジーのマッチングアルゴリズムなのかもしれません(笑)。
とにかく、彼と出会っていなかったらカジーは誕生していない。池田とは、これまで様々な局面を協力して乗り越えてきたからこそ、今の信頼関係があります。
明確なミッション・ビジョンを語ることが巻き込み力になっていく
大変だったことは本当に色々あります。資金がショートしそうになって、僕と池田で急遽会計とかITのコンサルをして食いつないだりとか(笑)。これまでの足取りの中でいちばんの学びは、ミッションとかビジョンが大事だってこと。事業を拡大していく上で「巻き込み力」は必要不可欠です。社員、お客様、キャスト、株主…関わるステークホルダーが共感し、「力を貸してやろう」と巻き込まれてくださることで、成長を加速できる。そのためには、ミッションやビジョンという形で企業側が明確に絵を描いて語ることが必要なんだと。私たちはこの事業を通じて何を成し遂げたいのか。それをとにかく突き詰めてずっと考え続けています。
ここ1年で、やっとカジーのミッション・ビジョンやUNICOが形になり、自分の中でも腑に落ちる世界観が作れてきたなと思います。ミッションやビジョンはどうあるべきか考え続ける中で、自分の中で「これだ」と手応えを感じられたのは、稲盛和夫さんの「心。」っていう本を読んでからかな。「人のために生きる」っていうことが、理屈を超えて正しいって改めて思わせてくれた。自分のためだけじゃなくて人のためになることが、誰かを巻き込むことができて正しいんだ、と。課題感のあった巻き込み力と、「人のために生きる」っていうのがリンクした。振り返ると、恥ずかしながらこれまでは自分のことをいちばんに考えていたような気がする。でも応援したくなる人って、自分のためじゃなくて人のために頑張れる人なんです。
“時間を創る”サービスで、時間の価値を“スパイラルアップ”させたい
カジーの事業でイメージしている世界観も、そういう感じなんです。誰かのためにできることを頑張る。それが自分の収入になると同時に、誰かの“時間を創る”。時間を創ってもらった誰かは、その時間を使って、また誰かのために頑張る。それがまた誰かの時間を創って…。そして自分にその恩恵が返ってくる。時間価値が「スパイラルアップ」していくイメージ。
キャストさんの仕事には、単純な家政婦さんとかお手伝いさんっていう言葉以上の価値があります。キャストの皆さんには本当に感謝しているし、スキルや仕事への態度を尊敬しています。
突っ込んだ話をすると、家事代行って「搾取」なんじゃないかっていう見られ方もある。でも、そういう思いを抱いている人にこそ使ってみて欲しい。ぜひキャストが生き生き働いているところを見てほしいんです。みんな自分の得意なことを生かして人のために頑張っている。きっとリスペクトの気持ちが湧くと思いますし、そういうシーンを見ることが、家事代行を世の中に広める一つのきっかけになると思います。もちろん、キャストに生き生きと働き続けていただくための工夫は弊社として最も力を入れている分野の一つで、企業努力もかかせないという前提ですが。
今、世間では「働き方改革」と言われて、仕事の効率化だったりが課題になっていますが、人生のうち仕事以外の時間が大半です。仕事以外の、人生全体としての時間をどうデザインしていくのかも考えるべき時代だなと思います。その時代のニーズに、カジーのビジネスモデルはとても合致していて、求められるサービスになると確信しています。
キャストの働きを讃える年に一度のイベント「キャストセッション(2019年)」
それぞれが個性を生かし補い合える組織で、チャレンジを続けていく
さて、散漫に話をしてしまいましたが、常にカジーは新しいことを仕掛けていくし、チャレンジをし続ける会社です。そのため、失敗を責めず、その失敗から得られた学びを成功のための一つのオプションと捉えられるような風土を作ってきました。チャレンジをしたい人にとってはすごくいい環境なんじゃないかなと思います。
見ての通り僕は、カリスマ的なリーダーシップがあるタイプではない(笑)。僕はCEOも役割の一つに過ぎないと考えています。カジーはとんがった誰かが引っ張っている組織ではなくて、それぞれが面のように補い合ったボールのようなイメージ。悪い面もいい面もさらけ出して、みんなでサポートし合えるような組織にしていきたい。言われたことをこなすというよりは、目的思考で自分からチャレンジできる人が活躍できると思います。“時間を創る”というカジーのメッセージに共感してくれる新しい仲間と、一緒に働ける日を楽しみにしています。
「こっち側、僕歯ないんだよね…時間がないから入れなくていいですって言ってる」と笑う加茂