はじめまして。ADVATEC代表取締役の池田です。
私たちは現在、診察中の会話をAIが取得し、SOAP形式でカルテを生成するAI医療アシスタント「コエカル」を開発・提供しています。
先行提供開始から7ヶ月。ありがたいことに、300院を超える医療機関に導入いただくまでになりました。
ただ、私たちが目指しているのは「AIカルテで大きな会社をつくること」だけではありません。その先にいる医師や患者さんにとって、本当に意味のあるものをつくりたい。
医師が患者さんと向き合う時間を増やし、医療現場の負担を減らし、その結果として、 一人でも多くの患者さんがより良い医療を受けられるようにしたい。
今日は、なぜ私たちがこの事業を始めたのか、そしてコエカルを通じてどんな未来を つくろうとしているのかについて、お話したいと思います。
目次
- 通院への付き添いで感じた、小さな違和感
- 自分にはつくれない。だから、仲間を探した
- 競合ではなく、同じ医療を良くしようとしている仲間
- 300院という数字より、その向こう側を見たい
- 私たちが本当に増やしたいのは「助かった患者さんの数」
- 「もっと早く分かっていれば」を減らしたい
- 日本から、これからの医療のかたちをつくる
- 私自身も、まだ完成した経営者ではありません
- 愚直に、素直に。大きなことを一緒につくれる人と
通院への付き添いで感じた、小さな違和感
私はもともと大学で薬学を学んでいました。
卒業することなく起業の道へ進み、その後しばらく医療とは異なる領域で事業をつくってきましたが、「いつか医療に関わる仕事をしたい」という思いはずっと心のどこかにありました。
コエカルにつながる具体的なきっかけが生まれたのは、2024年の暮れごろです。身近な人の通院に付き添ったときのことでした。
診察室で先生が患者さんの話を聞きながら、一生懸命パソコンに入力している。 医療従事者からすれば当たり前の光景なのかもしれません。
でも患者さんの側に座っていると、少し違って見えました。
先生は話を聞いてくれている。それも分かっている。それでも、先生がパソコンに向かう時間が長くなると、
「ちゃんと伝わっているだろうか」
「もう少し先生と顔を合わせて話せたら」
そんな気持ちが生まれることがあります。
一方で、医師の側にも事情があります。
診察した内容を正確に記録しなければならない。患者さんを診るだけでなく、その後にも多くの事務作業が残っています。
患者さんと向き合いたい医師と、医師に向き合ってもらいたい患者さん。
どちらが悪いわけでもないのに、その間に「記録」という仕事が存在している。
だったら、この部分をテクノロジーが担えないだろうか。診察中の会話そのものから カルテをつくることができれば、先生はもっと患者さんを診ることができるのではないか。
これが、コエカルの出発点でした。
自分にはつくれない。だから、仲間を探した
アイデアは浮かびました。
ただ、私自身にはそれをプロダクトにする技術がありません。
そこで真っ先に思い浮かんだのが、大学時代からの友人だった田丸です。
田丸も同じ薬学部で学び、薬剤師として医療現場を経験した後、エンジニアへ転身していました。
医療を知っていて、技術も分かる。
コエカルをつくるなら、彼と一緒にやりたいと思いました。
当時、田丸は自分で受託開発の会社を経営していました。
何度も話をする中で、私が伝えたのは、「受託開発ができる人は世の中にたくさんいる。でも、薬剤師として医療現場を経験して、エンジニアリングもできる田丸だからこそ、 つくれるものがあるんじゃないか」ということでした。
せっかく持っている力なら、一緒に世の中に残るものをつくるために使いたい。最終的に田丸はその思いに応えてくれ、ADVATECに加わってくれました。
そこからプロダクトが生まれ、医療現場に届ける橋本をはじめとする仲間も加わり、少しずつコエカルという事業が形になっていきました。
振り返ると、コエカルは最初から誰か一人の力でつくった事業ではありません。「医療を少しでも良くしたい」という思いに、それぞれ違う強みを持った人が集まってできた事業です。私はそのことを、とても大切にしています。
競合ではなく、同じ医療を良くしようとしている仲間
AIカルテと呼ばれる領域には、現在さまざまなサービスがあります。そのため、「競合とどう差別化するのですか」と聞かれることがあります。
もちろん、事業をやる以上、選んでいただくためにプロダクトを磨き続ける必要があります。ただ、私はそれだけを考えたいとは思っていません。
他社のサービスを導入したことで、ある病院の医師が毎日30分早く帰れるようになったとします。あるいは、患者さんと話せる時間が少し増えたとします。それは医療にとって、良いことだと思うんです。
だから私は、同じ領域で挑戦している会社を、単純に「競合」とは捉えていません。
それぞれの方法で、医療現場を良くしようとしている。
ある意味では、同じ大きな課題に挑んでいる仲間だと思っています。
その中で私たちは、コエカルだから提供できる価値を愚直に磨いていきたい。
最終的に選ぶのは医療現場です。
だからこそ、現場から一番必要とされるものをつくり続けることに集中したいと思っています。
300院という数字より、その向こう側を見たい
コエカルは先行提供開始から7ヶ月で300院を超える医療機関に導入いただきました。 利用時間も伸び続けています。
もちろん、経営者として数字は重要です。
売上も利益も見ますし、会社として成長し続けなければ、社会に価値を届け続けることもできません。
でも、300院という数字だけを見ていたら、私たちが本当に大切にしたいものを見失ってしまうと思っています。
その300という数字の向こう側には、300の医療現場があります。
そこで働いている先生がいて、スタッフの方々がいて、その先には毎日たくさんの患者さんがいます。
だから私たちは、契約して終わりにはしていません。
まず無償で実際の診療に使っていただき、本当に役に立つのかを確かめていただく。
使いづらければ、カスタマーサクセスが話を聞く。
医師によって診療スタイルが違えば、テンプレートを調整する。
利用状況が落ちれば、その理由を考える。
そこでいただいた声は、開発チームへ戻してプロダクトに反映する。
営業、カスタマーサクセス、開発。
職種は違いますが、見ている方向は同じです。
「どうすれば、目の前の医療現場にもっと役立てるか」
コエカルの成長を支えているのは、派手な施策というより、こうした地道な積み重ねだと思っています。
私たちが本当に増やしたいのは「助かった患者さんの数」
コエカルが実現したいことは、カルテ入力を便利にすることだけではありません。
医師が記録作業から少しでも解放されれば、その時間を患者さんのために使えます。
一日に診られる患者さんが増えるかもしれない。
患者さんの話を、あと数分長く聞けるかもしれない。
疲弊して医療現場を離れてしまう人を、減らせるかもしれない。
その積み重ねの先に、助かる患者さんがいると思っています。
だから私たちが本当に増やしたい数字は、契約数だけではありません。
「コエカルがあることで、より良い医療を受けられた患者さんの数」
いつか、それを胸を張って語れる会社になりたいと思っています。
「もっと早く分かっていれば」を減らしたい
私が医療にこだわる理由には、もう一つ個人的な経験があります。
家族の病気を通じて、患者側として医療に向き合った経験です。
原因が分からない。
いくつもの病院を回る。
検査をして、結果を待つ。
また別の病院へ行く。
患者本人はもちろんですが、そばにいる家族にとっても、その時間はとても長く感じます。
そして後になって、「もっと早く分かっていれば」と思うことがあります。
医療には、まだ人の努力だけでは解決できない構造的な課題がたくさんあります。
専門医が不足している領域もあります。
医療機関ごとに情報が分かれ、一つの医療機関だけでは十分な情報にたどり着けないこともあります。
私は、そこにテクノロジーができることがあると思っています。
今のコエカルは、診察中の会話からカルテをつくるところから始まっています。でも、それがゴールではありません。
診察で交わされた言葉やカルテ、検査などの情報が、適切な形で医療に活かされていく。
その結果、これまで大きな病院でなければ得られなかった知見を、地域のクリニックでも活用できるようになる。
患者さんが何ヶ所もの病院を回らなくても、必要な医療へ早くたどり着ける。
そんな未来をつくれないだろうかと考えています。
日本から、これからの医療のかたちをつくる
日本は世界でも早く高齢化が進んだ国です。
これは社会課題である一方、見方を変えれば、これから多くの国が経験する課題に、世界でいち早く向き合っている国でもあります。
だからこそ、日本の医療現場で生まれた仕組みや知見が、いつか他の国の医療にも役立つ可能性があると思っています。
もちろん、まだ私たちはその入口に立ったばかりです。
まずは日本の医療現場で、本当に必要とされるプロダクトをつくる。
一つひとつのクリニック、一人ひとりの医師に向き合う。
その積み重ねの先に、世界へ届けられるものが生まれるのではないかと思っています。
私自身も、まだ完成した経営者ではありません
ADVATECは、私にとって3社目の起業です。
これまで会社を立ち上げ、事業をつくり、会社を譲渡した経験もあります。
ただ、それを自分の実績として語りたいとはあまり思っていません。
むしろ、これまでたくさんの人に助けてもらってきたという感覚の方が強いです。
若い頃に出会った経営者から、「本気で大きなことを目指す姿勢」を教えてもらいました。
会社を譲渡した際には、譲渡先の方々から、会社や仲間に向き合う姿勢を教えてもらいました。
そして今は、株主や社員、医療現場の皆さんから多くのことを教えてもらっています。
だからADVATECでは、自分一人で何かを成し遂げたいとは思っていません。
優秀な人たちが集まり、それぞれの強みを持ち寄って、自分たちだけでは到底できないことを実現する会社にしたい。
それが、今の私がつくりたい会社です。
愚直に、素直に。大きなことを一緒につくれる人と
コエカルは、まだ完成していません。
事業も、プロダクトも、組織も、これから変わっていきます。
だから、整った会社に入って決められた仕事をしたい人にとっては、もしかすると合わない会社かもしれません。
一方で、
「まだ答えのないものを考えたい」
「自分の仕事で事業が変わる経験をしたい」
「社会に残るものをつくりたい」
そんな人にとっては、とても面白いタイミングだと思います。
私が一緒に働きたいのは、特別な経歴を持った人だけではありません。
愚直にやり続けられる人。
分からないことを素直に学べる人。
うまくいかなかったとき、誰かのせいにするのではなく、「次はどうすればいいだろう」と考えられる人。
そして何より、自分だけが成功するのではなく、仲間やお客様、その先にいる人たちが良くなることを喜べる人。
そんな人たちと会社をつくっていきたいと思っています。
コエカルは、まだ始まったばかりです。
私たち自身にも、まだ分からないことがたくさんあります。
それでも、医療現場に一つひとつ向き合い、昨日より今日、今日より明日とプロダクトを良くしていく。
その積み重ねによって、医師が患者さんと向き合える時間を増やし、「もっと早く分かっていれば」と後悔する患者さんを一人でも減らしていく。
そんな未来を、本気でつくりたいと思っています。
そして、その未来を私たちだけでつくるのではなく、これから出会う仲間と一緒につくっていけたら嬉しいです。