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SaaSの本質的な優位性は「安さ」であるという話

SaaSが注目を集めています。2018年はSaaS元年と呼ばれ、スタートアップのカンファレンスでもSaaSスタートアップが目立つようになってきました。

日本は「SaaS元年」、スタートアップが引っ張る
ソフトウエアをクラウド上で利用する「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」が急速に広がってきた。導入の黒子役はスタートアップ企業だ。労務管理や営業支援といった幅広い分野のソフトを開発し、顧客
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3698029026102018FFR000/

A1Aも「RFQクラウド」という製造業購買部門向けのVertical SaaSを開発していますが、そもそもSaaSとは何を指すのか?既存のシステムと比したときの優位性は何なのか?CPOの松本にインタビューを実施しました。

松本 成行(Matsumoto Nariyuki)
A1A株式会社 CPO
東京工業大学大学院 人工知能研究室にてドローンの自動操縦を研究。新卒で大手ERPベンダーに就職し、大手企業に向けシステム開発・導入に従事。同社退職後、物流系スタートアップを共同創業し、複数のVCより数千万円の資金調達を実施。エンジニアとして、サービスを1名で開発し、稼働させる。その後、フリーランスエンジニア、スタートアップでのリードエンジニア経験を経て、A1A株式会社を共同創業し、現在に至る。

SaaSの本質的な優位性は「安さ」

SaaSの優位性は、開発・保守原価を導入企業で按分できることよる原価の安さです(必然的に、その優位性は、多くの企業に導入されることが前提にあります)。それによる副次的メリットは多くありますが、SaaSの本質的な優位性は「安価であること」といえるでしょう。これは、SaaSのシステムモデルと、その提供方法の2つの側面から説明できます。

結論から述べてしまうと、一般的にSaaSと認知されている業務システムは、「コンフィギュラブルパッケージシステム」と「マルチテナントSaaS」の組み合わせのことを指しています。それぞれ解説していきます。

業務システムのモデルについて

顧客ごとに異なる要求にどう応えるか?

業務システムは、当然ながら業務上で使用するシステムですが、その業務は各企業ごとに異なります。従って、顧客ごとにシステムに対する要求も異なります。

この、顧客ごとに異なる要求への対応方法は、大きく分けて以下3つに分類可能です。

  1. フルスクラッチシステム(要求対応方法:フルスクラッチ開発)
  2. カスタマイザブルパッケージシステム(要求対応方法:カスタマイズ開発)
  3. コンフィギュラブルパッケージシステム(要求対応方法:設定)

フルスクラッチシステム

企業ごとに1から全ての開発を行うことで要求に対応します。システムでできる範囲でどんな要求にも応えることができますが、個別に開発し、個別に保守運用するため、開発原価とサポート原価は導入企業に比例して増えていきます。

カスタマイザブルパッケージシステム

多くの企業に共通する一般的な機能を標準機能として搭載し、その他の要求については追加でカスタマイズ開発を行い対応します。標準機能の開発原価は導入企業で按分することができますが、カスタマイズ開発原価は導入企業ごとに発生します。また、カスタマイズされたシステムは他の企業と一律で保守運用ができないため、サポート原価は按分できず、導入企業に比例して増えていきます。

コンフィギュラブルパッケージシステム

あらゆる企業に共通する基本的な機能をパッケージ化し、企業ごとの要求の差異への対応は、全て設定のみで実現します。全ての開発原価、サポート原価を導入企業で按分することが可能です。

システムの提供方法(インフラ)について

業務システムのインフラは、こちらも大きく分けて以下の3つです。

  1. オンプレミス(導入企業で独自にサーバーを構築・運用)
  2. シングルテナントSaaS(1つのクラウドサーバーに1つの企業)
  3. マルチテナントSaaS(1つのクラウドサーバーに複数の企業)

オンプレミス

導入企業ごとに独自にサーバーを構築・運用し、システムを提供します。環境構築原価、環境維持原価ともに導入企業に比例して増えていきます。

シングルテナントSaaS

1つのクラウドサーバー(=インスタンス)から1つの企業(=テナント)にシステムを提供します。クラウドサーバーを利用しますので、初期の環境構築原価は不要ですが、環境維持原価は導入企業に比例して増えていきます。(実質的に、初期費用以外はオンプレミスと変わりありません)

マルチテナントSaaS

1つのクラウドサーバー(=インスタンス)から複数の企業(=テナント)にシステムを提供します。初期の環境構築原価は不要で、環境維持原価は導入企業で按分可能です。

SaaSはすべての開発、保守運用原価を按分可能

先述の通り、一般的にSaaSと認知されているシステムは、「コンフィギュラブルパッケージシステム」+「マルチテナントSaaS」の組み合わせです。この組み合わせでは、すべての開発、保守運用原価を導入企業で按分することが可能です。

原価シミュレーション

大企業向けERPを導入する想定で原価シミュレーションしてみると、導入企業数に比例して変動費的に原価が増大していく他の組み合わせに対し、SaaSの原価は微増するに留まっています。導入企業社数が増えるに従って他の組み合わせとSaaSの原価の価格差は広がっていくため、導入企業数が増えれば増えるほど、SaaSの優位性が顕著になってきます。(逆に、導入社数が数社に留まる場合はSaaSの原価は最も高額になります。)

こちらは、以前私がブログを執筆した際に作成した原価シミュレーションモデルをベースに試算しています。原価シミュレーションの詳細をご覧になりたい方は以下の記事を御覧下さい。

システム開発モデルと原価シミュレーションからわかる業務SaaSの難しさと素晴らしさについて-(2) - Nariyuki Matsumoto
こちら の記事の続きです。 業務システムは大まかに分けて以下のような開発モデルがあることを記載しました。 それぞれの特徴は要求の対応しやすさ、使い始めまでから解約までの手軽さ等々ありますが、 もっともわかりやすい原価のシミュレーションで比較をしてみます。 ここで、それぞれのモデルに応じたシミュレーションを行います。 前提は以下となります。 あくまでも参考なので、必ずしも現実と一致しているわけではない 大企業向けERPを運用する(統一できる指標がそこしかないため) 要求の大きさは固定、それをそれぞれの方法で
https://nariyukimatsumoto.hatenablog.com/entry/2018/12/15/231037

「安さ」の副次的メリット

SaaSの優位性は原価を導入企業で按分可能であることを解説してきました。その副次的メリットは以下のようなものがあります。

  • 初期費用が安価なため、企業が試運用の意思決定をしやすい
  • 追加費用を負担することなく、追加開発機能を利用できる可能性がある
  • セキュリティ担保、可用性向上のために大量の投資ができ、結果的に他モデルと比べてレベルが高くなる

SaaSの開発は高難易度

上記のようなメリットのあるSaaSですが、その開発(設計と機能仕様策定)は高難易度です。DB設計・アプリケーション設計・インフラにおいては、ゆくゆくは数千、数万テナント(=企業)までスケールすることを想定したアーキテクチャを開発当初から求められます。また、あらゆる企業の要求に叶う機能仕様策定が必要です。

そのため、相対的に初期の開発スピードは遅くなり(検討すべき事項が非常に多いため)、優秀な技術者の確保が求められます。

高難易度開発に挑戦したいエンジニア募集

A1A株式会社は「RFQクラウド」という製造業の購買部門向けのVertical SaaSを展開しています。現在は、α版、β版と仮説検証を繰り返しながら、製品リリースに向けた開発をしている最中で、高難易度開発に挑戦したいというエンジニアを募集しています。

弊社では、世界的に著名なSaaSである、SalesforceやWorkdayなどの事例を含め、あらゆる知見を活かした開発を行っていますが、難易度の高い開発を通じて成長したいと考えている方がいらっしゃれば、お気軽にご連絡頂ければと思います。

エンジニアリングマネージャー
B2B SaaSの0→1フェーズを支えるエンジニアリングマネージャー求む!
A1A株式会社は「取引に関わる全ての人が、信頼と情熱を持ったものづくりができる、世界をつくる」をミッションに、グローバル製造業の調達機能に対して、データを基軸にしたイノベーションを起こし続けることで、調達機能の高度化を支援するスタートアップ企業です。製造業向け調達データプラットフォーム「UPCYCLE」を開発・提供しています。 UPCYCLEは、上図の通りユーザーが見積書をシステム上にアップロードするだけで、見積書に記載された見積明細情報が活用できるようデータ化・加工され、UPCYCLE上での比較・分析によってデータに基づくコストダウン余地の発掘が可能になります。 私たちの身の回りにある、あらゆるモノを製造するうえで、調達・購買担当者は外部から材料や部品を調達するコーディネーターとして、なくてはならない存在です。 調達・購買担当者は、見積業務に平均約40〜60%の工数を使い、そのうち半分の時間は比較表作成のための転記/入力作業、及び、見積査定のためのデータ整理に時間を使っています。そのため、本来やるべき付加価値の大きい比較・分析作業に時間を割くことができていないのが実情です。 UPCYCLEの活用により、調達・購買担当者が、単純作業ではなく、データに基づくコストダウン検討に多くの時間を割くことで、組織として調達コスト最適化の実現に取り組むことができます。 我々は、製造業における調達機能の重要性に着目しています。製造業の発展においてはサプライチェーン(調達網)が経営上の最大の制約条件であると言えます。どれだけ需要があっても、部品が不足すれば製造できませんし、良い製品を開発したとしても、適切な価格でなければ売れません。そんな調達機能をエンパワーメントすることで製造業をもっと良くしていくことを目指しています。 会社HP:https://a1a.co.jp/ プロダクトサイト:https://up-cycle.jp/
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