始まりは「何者でもない自分」への焦り
Hitamukiでインターンをしている東京農業大学3年生の吉田優樹さんは、ちょっと面白いバックグラウンドの持ち主だ。実家は歴史ある茶園を営み、自身もドローンを操って映像制作を手がけるクリエイター。一見、充実した学生生活に見えるけれど、Hitamukiにジョインする前は「空っぽな自分」に焦っていたという。
『当時は本当に何もしていなかったんです。やりたいことも、バイトもなくて。でも、このままじゃいけないという漠然とした焦燥感だけがずっとありました』
そんな時、代表の澤田さん(以下、隼さん)に
『なんかいいバイトないですかね』
と相談したところ、
『じゃあうちにインターンで来たら?』
と声をかけられた。
決め手はシンプルだった。オンライン完結で場所を選ばないこと。そして当時のメンバーは代表と吉田さんの2人だけ。社長直下なんてレベルではない、社長からの指示しかないという逃げ場のない、けれど圧倒的に濃密な環境だ。さらに、当時まだ企業導入が進んでいなかった生成AIを扱う会社であることも、純粋な好奇心を刺激した。
『生成AIを使えるようになりたいという気持ちもありました。あとは話していて、この人すごいという直感があって。その正体を知りたかったというのもあります』
「メールのCCって何?」からのスタート
今や、Hitamukiが主催する「生成AIサミット」のディレクターとして、集客戦略から登壇者交渉、マイルストーン設計までをこなす吉田さん。けれど入社当初は、「壁にぶつかる以前の状態だった」と振り返る。
「ビジネスメールのCCとBCCの違いすら知らなかったんです。『一回送ったメールって取り消せないんですか?』って本気で驚いていましたから(笑)」
特に苦労したのは、スキルの習得よりも相手への想像力だった。相手がいかにスムーズに動けるか、どうすれば返信の負担を減らせるか。そんなビジネスの基本が、最初はまったくわからなかった。
「自分ではある程度できると思っていたんです。でも、いざ実戦に立つと、自分が『何を知らないのか』すら分かっていなかった。それが一番のショックでしたね」
乗り越えたのは、地道な繰り返しだった。指摘を受け、意識して試み、また失敗して痛い目を見る。それでも吉田さんが折れなかったのは、フィードバックに理不尽がなかったからだ。
「言われることが、考えてみれば全部そうだなと思えた。だから素直に受け止めて、次に活かせる。辛い時期はありましたけど、苦ではなかったですね」
「コミュニケーションコストを削る」という手応え
約1年半でHitamukiを通じて手に入れた最大の武器。それが「コミュニケーションコストを極限まで削る思考」だ。
サミット運営では、多忙な登壇者と何度もやり取りを重ねる。情報確認や依頼のメールが8往復、9往復と増えれば、それは運営のミスだ。相手の信頼を損なうことと同義でもある。
「いかに一通のメールで、相手にネクストアクションを迷わせないか。それがお互いにとってのWin-Winになるんだと気づいてから、仕事の解像度がガラッと変わりました」
身近にロールモデルがいたことも大きかった。
「隼さんのメールを横で確認する機会があったんですが、本当に無駄がないんです。一言一言が刺さるし、情報がスッと入ってくる。自分との差を目の当たりにできたのは、この環境ならではでしたね」
今では自身の個人事業を通じて、取引先から『レスポンスが早くてやり取りがしやすい』と声をもらえるほど、成長を実感しているという。
「失敗してもいい場所」が、挑戦を加速させる
Hitamukiの文化を語る上で、吉田さんが印象的なエピソードを話してくれた。隼さんからかけられた『どうにかならないミス以外は必ずどうにかする。だから怖がらずに進めろ』というひと言が、挑戦への背中を押し続けてきたという。
「最初は新しいことを任されるたびに怖かったですよ。でも、「誰でも失敗する。大切なのは失敗した時にどう対応するか。失敗すらもチャンスに変える。」という隼さんの心構えが背中を押してくれました。」
未経験の広告運用を任されたときも、怖さはあった。けれど「任せてくれたということは、今の自分を信頼してくれている証拠だ」と腹をくくった。絶対に外してはいけないラインは厳しく仕込まれるが、その範囲内では、インターンだろうが一人のプロとして裁量が与えられる。
「失敗を恐れるなとはよく聞くけど、Hitamukiの場合は『失敗してもいい場所をちゃんと作ってくれている』という感覚。だからこそ、自分にとっての全力で挑戦できたと思います」
※代表の澤田(左)とのツーショット。Hitamuki創業期、ほぼ二人三脚でやってきたという二人。
10年後を決めない。興味の流れに乗るキャリア観
来年からは大学を1年休学し、個人事業主として映像制作を本格化させる予定だ。そのために必要なビジネスの基礎力——コミュニケーション、社会常識、段取り力——をHitamukiで積み上げている最中だという。
「5年後、10年後の目標は、正直ないんです。今はやりたいことを全力でやって、その過程でまた次のやりたいことが見つかればいい。結構楽観的なんですけど(笑)」
綿密なキャリア設計よりも、その時々の興味と縁に従って進む。変化の激しいAI業界に身を置いているからこそ、むしろその軽やかさが強みになる。
「どこへ行っても通用する基礎体力があれば、どこへだって流れていける。そう思えるだけの自信は、ここで積み上げられました」
オーナーシップを持って飛び込める人へ
Hitamukiへの参加を考えている同世代に向けて、吉田さんはこう締めくくった。
「やりたいことが明確じゃなくてもいい。でも、『インターンだから指示を待てばいいや』という姿勢はもったいない。自分にとってこの仕事がどう必要なのか。そのオーナーシップさえ持っていれば、ここはいくらでも打席を用意してくれる場所です」
実家の茶園、ドローン、そしてAIスタートアップ。一見バラバラな点をつないでいるのは、「今、目の前のことにひたむきに向き合う」という、社名そのものの姿勢だった。
「ここで仕事をすれば、きっと何かが見えるはず。僕もまだ、その途中です」