ゲーム開発の「小さな手抜きが後で効いた」失敗5選
Photo by Lens by Benji on Unsplash
ゲーム開発では、目の前の確認を早く進めるために、少しだけ楽な実装を入れることがあります。
ローカル確認用のログを出す。再現確認のために乱数シードを固定する。動けばよいと思って、必要そうなデータをセーブ対象に追加する。
どれも、その場では理由があります。悪いことをしている感覚もあまりありません。むしろ、確認を進めるためには自然な判断に見えることもあります。
ただ、ゲーム開発では毎フレーム動く処理、演出の分岐、ロード時の復元、端末差、ビルド差が絡みます。小さな放置が残ったまま進むと、あとで不具合を調べるときに、何を疑えばよいのか確認しにくくなります。
①毎フレームのログを出しっぱなしにする
毎フレームのログは、確認中には便利です。
座標、速度、状態、フラグの変化を出しておけば、処理が通っているかどうかを追いやすくなります。キャラクターがどこにいるのか、どのタイミングで状態が変わったのかも確認しやすくなります。
問題は、確認が終わったあとも出しっぱなしになることです。
毎フレームで座標ログが流れ続けると、本当に見たい異常ログが埋もれます。エラーは出ているのに、出力量が多すぎて見落とす。ログを追うだけで時間がかかり、どのタイミングで異常が出たのか確認しにくくなります。
ログは、多ければ調査しやすいとは限りません。
何を確認するためのログなのか。常時必要なのか。一時的な確認なのか。ここを分けておかないと、あとでログを見る人が、まず不要な出力を避ける作業から始めることになります。
開発中だけ必要なログであれば、ビルド種別やログレベルで制御する。毎フレーム出すなら、対象を絞る。確認が終わったら消す。こうした整理があるだけで、レビュー時にも確認するポイントが揃いやすくなります。
②乱数シード固定を戻し忘れる
再現確認のために、乱数シードを固定することがあります。
敵の出現、ドロップ、演出の分岐、抽選結果などを同じ状態で確認できるため、調査中には助かります。毎回結果が変わる状態では、修正前後の差分を追いにくいからです。
ただ、固定した乱数シードを戻し忘れると、毎回似たような結果になります。
この問題は、すぐに不具合だと判断しにくいところがあります。クラッシュするわけではなく、画面が壊れるわけでもありません。プレイしている側から見ると、「なんとなく同じ展開が多い」「抽選が偏っている気がする」という見え方になります。
短時間の確認では気づきにくいです。何度か触って、ようやく違和感が出ます。
乱数シードを固定するときは、確認用の処理だと分かる形にしておく必要があります。コメントだけでは見落とすことがあります。デバッグ設定、起動オプション、検証用フラグなど、戻すべきものがレビュー時に確認できる形になっていると、戻し忘れを減らしやすくなります。
③参照の取り直しを放置する
一度キャッシュすれば済む参照を、毎フレーム取り直してしまうことがあります。
単体で見れば、大きな問題に見えない場合もあります。1回の処理時間はわずかですし、ローカル確認ではフレームレートに影響が出ないこともあります。
ただ、同じような処理が複数のキャラクター、UI、エフェクト、ギミックに広がると、全体の処理時間が増えます。
特定の画面だけレスポンスが遅くなる。敵が増えた場面だけフレームレートが下がる。端末によって再現したりしなかったりする。こうなると、原因を切り分けるのに時間がかかります。
参照の取り直し自体が悪いというより、毎フレーム行う必要がある処理なのかを確認することが必要です。
初期化時に取ればよい参照なのか。状態変更時だけ更新すればよいのか。毎回最新である必要があるのか。ここを分けておくと、実装担当者が修正範囲を判断しやすくなります。レビュー時にも、「この処理は毎フレーム必要か」を確認しやすくなります。
④演出スキップ時の初期化が漏れる
演出スキップ時の初期化漏れは、見つけにくい不具合になりやすいです。
通常再生では、演出の途中で必要な初期化が通ります。ところが、スキップ時だけその処理を飛ばしてしまうと、状態が中途半端なまま次の処理へ進みます。
この問題が厄介なのは、毎回必ず出るとは限らないことです。チェック時に必ずスキップするとも限りません。通常再生では問題が出ないため、確認したつもりでも漏れます。
ゲームでは、演出を最後まで見るユーザーもいれば、何度もスキップするユーザーもいます。初回だけ見る、2回目以降は飛ばす、通信やロードのタイミングで操作できるようになるなど、実際の操作には幅があります。
スキップは、単なる短縮機能ではありません。通常再生とは別の実行経路になります。
通常再生で通る初期化が、スキップ時にも通るのか。スキップ後の状態が、演出終了後の状態と同じになっているのか。ここをテスト観点として残しておくと、確認漏れを減らしやすくなります。
⑤セーブ対象を雑に増やす
必要そうなものを勢いでセーブ対象に追加すると、その場では問題なく動きます。
状態を保存できる。ロードして復元できる。目の前の確認では、これで十分に見えることがあります。
ただ、セーブデータはあとから整合性の確認が必要になります。保存した値同士の関係が崩れていないか。古いバージョンのセーブデータを読み込んだときに問題が出ないか。新しい項目を追加したとき、未設定の値をどう扱うか。
ここを雑に増やすと、ロード時に原因を追いにくくなります。
セーブ対象は、多ければ安全というものではありません。保存すべき状態なのか、ロード時に再計算できる値なのか、一時的な表示用データなのかを分ける必要があります。
特に運用中のゲームでは、バージョン差分が出ます。開発中の最新データだけを見ていると問題なくても、既存ユーザーのセーブデータでは値が存在しないことがあります。
ロード時の補完、デフォルト値、移行処理を確認できるようにしておかないと、あとから修正範囲を判断しにくくなります。
まとめ:あとで調べやすい形にしておく
小さな手抜きは、すぐに問題として見えるとは限りません。
毎フレームのログを出しっぱなしにする。乱数シード固定を戻し忘れる。参照の取り直しを放置する。演出スキップ時の初期化が漏れる。セーブ対象を雑に増やす。
それぞれは小さな話に見えます。ただ、不具合調査、レビュー、QA、運用の場面では、確認する項目が増えます。原因を切り分ける前に、不要な差分や確認漏れを整理する必要が出ます。
実装時に完璧を目指すというより、あとで見た人が確認しやすい状態にしておくことが大事です。
確認するときは、次のような点を見ると整理しやすくなります。
・一時的なログが、常時出力のまま残っていないか
・乱数シード固定やデバッグ用設定が、リリースビルドに入らない形になっているか
・毎フレーム処理の中で、初期化時や状態変更時に済ませられる参照取得が残っていないか
・演出スキップ時にも、通常終了時と同じ状態になるか
・セーブ対象に追加した値が、本当に保存すべき状態なのか
・古いセーブデータを読み込んだときの補完や移行処理を確認しているか
小さな確認を残しておくと、レビュー時に見るポイントが揃います。テスト時にも、通常再生だけでなくスキップやロード後の状態を確認しやすくなります。
あとで直す人が、まず何を見るかを迷わない。ゲーム開発では、この状態を作っておくだけでも、不具合調査の負担は変わります。
おわりに
X(旧Twitter)やBlueskyを中心に日々発信しております。
是非他のSNSもご覧いただけますと幸甚でございます。
https://x.com/itchie_tatsumi
https://bsky.app/profile/itchie-tatsumi.bsky.social
https://www.facebook.com/ichino.souta
また、辰巳電子工業SS事業部では、エンジニアが安心して長く働ける環境づくりに取り組んでおります。「今の経験で応募できるか知りたい」「案件やキャリア支援について聞いてみたい」という方は、是非カジュアル面談からお気軽にご相談願います。