ハイゼンバグ(Heisenbug):「何もしていないのに直った」ように見える現象の正体
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ゲーム開発をしていると、「何もしていないのにバグが直った」あるいは「さっきまで再現していた不具合が、突然出なくなった」という状況に遭遇することがあります。
正確には、バグが修正されたわけではありません。単に条件が変わったことで、表に出なくなっただけです。このような現象は、一般にハイゼンバグ(Heisenbug)と呼ばれています。
私自身、ゲーム開発の現場で何度もこの問題に直面しました。特に厄介だったのは、マスター提出前のタイミングです。再現条件が不安定で、ログを追加したり、処理を少し整理しただけで挙動が変わってしまいます。修正できたのか、それとも一時的に隠れただけなのかが判断できず、非常に神経を使う状況でした。
目次
- ハイゼンバグという名前の由来
- なぜ「直った」ように見えてしまうのか
- 原因にたどり着いたときの本音
- ハイゼンバグが示しているもの
- おわりに
ハイゼンバグという名前の由来
ハイゼンバグという呼び名は、物理学者 ヴェルナー・ハイゼンベルク(Werner Karl Heisenberg) の不確定性原理になぞらえたものです。
不確定性原理では、観測しようとする行為そのものが、対象の状態に影響を与えてしまいます。位置を正確に測ろうとすると速度が分からなくなり、
速度を正確に測ろうとすると位置が分からなくなります。
ソフトウェアにおけるハイゼンバグも、これとよく似ています。ログを仕込む、デバッガをアタッチする、最適化設定を変える。その行為自体が実行状態に影響を与え、本来存在していた不具合が観測できなくなってしまいます。
名前は洒落ていますが、現場で起きていることは、かなり切実です。
なぜ「直った」ように見えてしまうのか
ハイゼンバグが発生する背景には、いくつか典型的な原因があります。
まず多いのが、未初期化変数やスタック上のゴミ値です。ビルド条件や実行タイミングによって、たまたま問題が表に出ない値が使われていただけ、というケースがあります。
次に、関数の追加や最適化による影響です。処理内容そのものは変わっていなくても、メモリレイアウトや実行順序が変化したことで、結果として正常に動作しているように見えることがあります。
デバッガをアタッチしたことが原因になる場合もあります。デバッグ中は処理の進み方やスレッドの挙動が変わるため、本来発生するはずの不具合が再現しなくなることがあります。
また、コンパイラの最適化レベルの違いが影響することもあります。Debugビルドでは問題が出ず、Releaseビルドでのみ不具合が発生する。あるいは、その逆のパターンも実際に経験しました。
いずれの場合も共通しているのは、現象が消えただけで、原因は残ったままという点です。
原因にたどり着いたときの本音
「分かるわけないだろ!!」
ハイゼンバグが示しているもの
この種 のバグに何度も遭遇していると、次第に意識するようになる点があります。
今、動いていることと、正しく作られていることは同義ではありません。また、再現しない不具合ほど、初期化、処理順序、前提条件といった基礎的な部分を疑う必要があります。
目の前の症状だけを消しても、原因が残っていれば、別の場所や別のタイミングで必ず問題が表に出ます。地味ですが、初期化の徹底や設計の見直しが、結果として最短距離になることは少なくありません。
まとめ
「何もしていないのに直った」という感覚は、実際にはとても危険な状態です。人間弱いもので、「見なかった事にしたい」または「最初の不具合は気のせいだと思いたい」のですが、その違和感を放置せず、「今回はなぜ再現しなかったのか」を考え続けることが重要です。
おわりに
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