書籍【失敗できる組織】読了
タイトルこそ「失敗できる組織」であるが、本質は「失敗から学べる組織かどうか」に尽きる。
個人的に考えさせられたのは「チームに分かれ、床に敷かれたタイルを歩くゲーム」の話だ。
ルールは単純で、タイルによって「OK・NG」があり、NGの場合はブザーが鳴るという仕組みになっている。
床のタイルを歩くのは一人ずつで、ブザーが鳴ったら次の人にバトンタッチして最初からやり直す。
スタートからゴールまで、最も早く辿り着けたチームが勝ちというゲームだ。
これで実際にゲームをスタートすると、タイルに足を置くことで迷う人がいるのだという。
この気持ちが分からないでもない。
みんなが見てる前で失敗したくないと思う気持ちが優先されて、足を出すことに躊躇してしまうのだと思う。
しかしながら、どう考えてもこの考え方はおかしい。
タイルの「OK・NG」は所詮ランダムに並んでいるものなので、NGを踏んだから「失敗」になるはずがない。
むしろ、NGが分かることで、OK(正解)が分かるというのが、このゲームの本質だ。
つまり迷っている時間はそもそも無駄ということだ。
一刻も早くタイルを踏んで、OKなら迷わず進む。
NGなら即座にバトンタッチする、を高速で繰り返せばよいだけだ。
NGは失敗ではない。
NGが出るまで迷わず進み、その軌跡をメンバー全員が見て記憶することが大事だ。
前に踏んだNGを、次の人がまた踏んでは、それはミスと言える。
このゲームのルールの本質を、メンバー全員で共有できるかどうか。
これが、勝負の分かれ目である。
この本質を最初から見抜ければよいが、人間とは感情の生き物である。
「ブー」という大音量のブザーが鳴り響けば、心の中で「失敗」が刻み込まれ、次は萎縮してしまう可能性が高い。
それをチーム内で「気にするな。ドンドン先に進め」と言えるかどうか。
歩いたOKの軌跡をどういう方法でメンバー間で共有するかもポイントだ。
●紙に記録する時間があるのか。(ツールの持ち込みがルールで認められるのか)
●メンバー内で一番記憶力の優れた人に任せるのか。
●それとも、みんなで分担して記憶するのか。
●全員が同じように記憶して、話し合いながらエラー訂正していくのか。
方法についてはいくつかありそうだが、この中でどの方法を選択することがベストなのか、選び出すのもチームのセンスと言える。
初めて組んだチームで、初めてゲームをする場合。
そして主催者からの説明が「スタートからゴールまで行け」だけだと、上記のような戦略をとれるかどうか。
いずれにしても、ゲームの本質を早く見抜いて、対策をどう取るかを選択することが大事だ。
そして何よりも、高速で実行すること。
実行していく中で、方法論については改善を繰り返すこともできる。
こんな事例は、実際の仕事の中で多数あるはずなのだ。
NGを踏むことは、決して「失敗」ではない。
そこで躊躇する理由はないし、落ち込む必要もない。
失敗のように感じるが、実は「成功のために必然的な失敗」ということに気が付くかどうか。
このように頭を切り替えられるかどうかが、実は非常に重要だ。
それだけ人間とは、失敗に対して不寛容なのだ。
恥の文化と書かれていたが、日本人は特にその傾向が強いような気がする。
小さなコミュニティの中で、相互に監視されるムラ社会での人間関係では、そのコミュニティから弾かれることは、本人の死活問題になる。
失敗を極端に恐れる思考になるのも、本能と言えばしょうがない部分もある。
一方で社会は大きく変化したのだ。
ムラ社会から、爪弾きにされても、実際には生きていけるはずなのだ。
世界中を旅して回ることも可能だし、移動しないにしても、リモートで別のコミュニティと繋がればいい。
そう考えると、迷うよりも、どんどん失敗して経験をした方が、自分の実力がついてよいはずだと思う。
しかしながら、頭で理解していても、実際にできるかどうかは別の話。
やっぱり一歩を踏み出すのは怖いし、失敗したからといって、頭を切り替えて次に行ける訳じゃない。
人間の感情は複雑で、単純にはいかないものだ。
だからこそ、意識的にチーム作りをする必要があるということか。
どうやってチーム内に「失敗とは、成功のために必要なプロセスである」という考えを浸透させるか。
このようにステップで考えてみると、「学習する組織」こそが強くなるのは腹落ちする。
みんなで学び合える環境。
そして、みんなで改善を指摘し合える環境。
そういう意味でも心理的安全性は当然必須だ。
こんな環境はなかなか構築できないものだが、裏を返せば「こういう組織を構築できれば、学習する組織になれるかもしれない」という面は見えてくる。
冒頭で記載したことを繰り返すが、タイトルこそ「失敗できる組織」だが、良い仕事をするための本質とは「失敗から学べる組織かどうか」に尽きるのだと思った。
(2025/6/30月)