Maya実践ハードサーフェスモデリング | 株式会社ボーンデジタル
定価 5,060円(本体4,600円+税10%) 発行・発売 株式会社 ボーンデジタル ISBN 978-4-86246-263-3 総ページ数 404 ページ サイズ B5正寸、オールカラー 発売日 2015年
https://www.borndigital.co.jp/book/5278/
今回はCafeGroupのCG制作事業全体を率いる北田さんにお話を伺いました。
『スクウェア・エニックス』やハリウッド映画にも携わってきた経験や「海外で活躍するには?」「仕事とプライベートの両立って実際どう?」など、これからCG業界を目指す皆さんが知りたいリアルな話をたっぷりお聞きしました。ぜひ最後までご覧ください。
1977年、大阪府生まれのデジタルアーティストです。コンピュータ総合学園HAL大阪校を卒業後、大阪の小さなCGスタジオからキャリアをスタートしました。
2004年2月に株式会社スクウェア・エニックスのヴィジュアルワークス部へ移籍し、主にファイナルファンタジーシリーズのシネマティクス制作でモデラーおよびテクスチャアーティストとして携わっていました。
2009年10月に同社を退社後、活動の場を海外へ移し、オーストラリアのAnimal LogicやDr. D Studios、シンガポールのDouble Negative Visual Effectsなどでフリーランスのデジタルアーティストとしてハリウッド映画の制作に参加。
2014年11月に帰国し、2015年1月から株式会社ModelingCafeの取締役、福岡支社代表に就任。現在はCafeGroup株式会社の取締役およびCG事業部長を務めています。
また、著書として『Maya実践ハードサーフェスモデリング:プロップと背景から学ぶワークフロー』を2015年2月にボーンデジタルから刊行しました。
僕が X(旧Twitter) で帰国を報告したところ、真っ先に声をかけてくれたのが代表の岸本でした。報告した数時間後に岸本からメールをもらい、その日のうちにオンラインミーティングをして条件など具体的な話をしたのを覚えています。
当時、僕は大手スタジオに戻っても自分の経験を活かすのが難しいと感じていました。そこで、まだ産声を上げたばかりのModelingCafeに大きな可能性を感じ、選択肢の一つとして考え始めたんです。
元々フリーランスをしながら資金を溜めて福岡で起業するつもりだったので、岸本と一緒に仕事をすることで、数年かけるはずだった資金調達をスキップできるのも魅力的でした。地方に住みながらも都心と変わらない制作環境を構築したいという思いもあり、それを岸本に話したところ、福岡スタジオ設立を前向きに捉えてくれたんです。
最終的にその熱意ある賛同が決め手になり、帰国して数カ月後には福岡スタジオ設立が実現しました。
最も大きく影響を受けたのは「ファイナルファンタジー7」です。専門学生の頃、本気でCG制作を職業にしようと決意するきっかけになった作品もあります。
当時は2Dゲームから3Dゲームへの変革期で、プレイステーションという新しいハードの登場も相まって、立体的なキャラクターやリアルな背景にとにかく衝撃を受けました。今見るとポリゴン数は少ないですが、当時は社会現象になるほど相当なインパクトがありました。
また、映画「グラディエイター」も僕に大きな影響を与えてくれた作品です。映画自体は好きでしたが、この作品をきっかけに背景アーティストとしての道を本格的に考え、海外就労を目指すようになりました。
フルCGカットは今ほど多くないものの、CGで再現されたコロッセオには本当に魅力を感じ、「将来はハリウッド映画に携わりたい」と強く思うようになりました。
今はインターネットやAIが普及して、机に座りながら何でも調べられる時代ですが、だからこそ僕はアナログな部分を大切にしています。特にプロジェクトのリファレンス収集では、インターネットに頼りすぎないように心がけています。
もちろん時間が無いときはネット検索やAIも活用しますが、基本は「自分の目で見て触れる」ことが大事だと思うんです。実物を見て、触れて、五感すべてで感じた情報は記憶に残りやすい。旅行でも実際に行った場所ははっきり覚えているのに、映像や写真で見ただけの場所はすぐ忘れてしまうのと同じだと思います。
そんなアナログな取り組みは非効率に見えますが、一度しっかり体験した情報は仕事でアウトプットするときも役に立ちます。実際に触れた感覚やリアルな記憶からくる表現のほうが、より説得力や深みを与えてくれますからね。
アーティストにアドバイスしている北田さん
一番大変だったのは、家族を伴って初めて海外で働いたときですね。妊婦の妻と1歳2か月の長男を連れて海外へ移住するのは、本当に苦労の連続でした。文化の違いや住環境の整備など、日本とは全く違う環境での生活はとてもハードでした。賃貸契約やインフラの整備も自分たちでやらなきゃいけない。その時に助けてくれたのが、現地で働く日本人アーティストやコミュニティの仲間たちでした。僕と同じ苦労を乗り越えてきた人たちが周りにいたのは心強かったですね。
仕事面では、日本で培ってきた知識や技術がそのまま通用しないという壁に直面しました。海外の現場は、時間管理やクオリティへの意識、オペレーションスピードなど日本とは違う点が多く、能力がなければ次の契約をもらえないシビアな世界。
そこで、クオリティの高いアーティストの制作データを見せてもらいながら、どういう考え方で作業しているのかを学びました。実際の制作データから得る知識はとても実践的で、自分のやり方もどんどんアップデートしていけたんです。そうして必死に食らいつくことで、一つひとつ乗り越えていきました。
まずは、自分の価値観や哲学を他人に強要しないことを常に意識しています。そのうえで僕が大事にしているのは「一生懸命、真剣に取り組む」という姿勢です。
一生懸命取り組むからこそ得られる楽しさもあるし、やりがいも大きい。仕事なので辛い瞬間もあるとは思いますが、全力で向き合えるものがあるのは幸せなことだと思っています。
もう一つは、私生活と仕事のバランスをとること。休日は締切前など特別な状況を除いて休むし、家族との時間は大切にしています。家に仕事を極力持ち帰らず、オンとオフをきっちり分ける。
良い仕事をするためには、家庭円満とちゃんと休む時間が欠かせません。だからこそ、働くときは徹底的に働き、休むときは何もしない。そうすることで心身をリフレッシュし、結果として仕事のパフォーマンスも上がると思っています。
週末や祝日は家族と過ごすことが多いです。立場的に出張や遅くまで仕事をする日も少なくないので、その分、休めるときは家族との時間を大切にしています。平凡かもしれませんが、一緒にご飯を食べてお風呂に入って、散歩
に行く。そういうありふれた時間が一番のリフレッシュになるんです。
家族でゲームをしている様子
平日は帰宅が遅いときもありますが、寝る前の数時間はゲームや映画を楽しむことで、頭を仕事モードから切り替えます。モチベーションに関しては特に意識していなくて、そもそも「やるべきことはやる」というスタンスですね。
モチベーションがあろうがなかろうが、仕事は進めなければいけない。もちろん人間なので波はありますが、その波に仕事を左右させたくないんです。プロとして責任を果たす以上、気分に関係なくやるべきことに集中すること。それが僕の考え方です。
北田さんの国内外で培われた貴重な経験や仕事への真摯な姿勢、家族との時間を大切にするバランス感覚など、多岐にわたるお話を伺いました。
CG業界を志望する方々にとって参考になるヒントが詰まっていたのではないでしょうか。
後編では”新生CafeGroup”でCG事業部長も務めてる北田さんに「なぜ統合を目指すのか?」「統合後のCafeGroupはどのような姿を目指すのか?」といったテーマで、より深く掘り下げた記事をお届けします。