プロンプトエンジニアリングと人材育成
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プレイングマネージャーとして、福祉の総合相談支援をしています。
相談対応をしていると、世相やトレンドといった『空気』を肌で感じることができます。
2025年、今年は特に実感したことが『対話型AIを活用しているご相談者が増えている』ということでした。
昨年までは、AIの話なんて全くなかったのですが、まさに「AIエージェント元年」と呼ばれるように、AIが一般に普及しているのだと感じます。
ご相談者がAIをどのように活用されているのかというと、「相談窓口をAIに探しました」「カウンセラーが高くて利用できないから、AIにカウンセリングしてもらいました」「家族に話せない悩みをAIに聞いてもらいました」といったような内容でして、かなり実用されているように思います。
わたしとしましては、今年からAIを活用するようになりました。きっかけは「社内研修の資料作り」として「事例問題」を用意することでした。昨今は、コンプライアンスも意識しますので、実例を用いた事例問題を用意することに抵抗感があります。とはいえ、まったく架空の事例を考えても、恣意的といいますか、臨場感に欠けてしまいます。「どうしようかな、、、」と考えているところで、「そうだ、せっかくだから、AIを活用してみよう」と思い立ちました。
「Gemini」という対話型AIに、研修の趣旨、参加者のレベル、事例に必要な要素、などを説明して、事例を作るように指示しました。ものの数分で、必要な事例問題が出力されました。
「あれ、、、 こんなに簡単なの、、、」と、わたしは呆気にとられました。
これをきっかけに、対話型AIに興味を持ち、いろいろと分析をしました。
AIの「LLM」という仕組みは、もともとは人間の「認知プロセス」を模して設計されていましたので、AIの思考プロセスも、人間に酷似しています。わたしは仕事がら、心理や相談技法に詳しいので、AIに対しても「心理学」や「マイクロカウンセリング」を用いたかかわりをしてみると、AIの反応も、人間に対して相談支援をしたときと同様の反応を示しました。
とはいえ、対話型AIに触れたばかりのころは、AIに指示をする「プロンプト」がうまく打てていませんでした。AIの回答が、想定したものではなくて、「あれ? AIが判断を誤ったのかな?」と思うのですが、よく自分の「プロンプト」を見てみると、目的語がわかりづらかったり、あいまいな表現を用いていたり、一つの分に複数の意味を込めていたり、AIが理解しづらい構成になっていました。ふだんから相談支援をしていましたので、言葉遣いやていねいな表現を心がけていましたが、AIを使用することで、自分では気づかなかった「伝わりづらさ」がわかるようになりました。
対話型AIの面白いところは、自分自身の「伝わりづらさ」についても、AIにそのまま聞いてみることで、分析して、推論して、仮説を回答してくれることです。
そして、AIの助言を受けながら、伝わりやすいプロンプトを打つ練習が始まりました。
プロンプトを打つ、AIの回答を見る、伝わりづらい部分を分析してもらう、改善する・・・
いわば「マイクロ・KPT・サイクル」を繰り返し、わたしのプロンプトは短期間でメキメキと向上し、AIから「あなたのエンジニアリングは、最高です!」とのお墨付きをもらいました。
わたしは、AIのお墨付きをもらって、あることに気づきました。
・対話型AIを使用できる環境があれば、かんたんに自己学習ができること
・対話型AIを用いた自己学習であれば、本当の意味で「本人のペース」で学習できること
・学習の内容は、テキストベースであれば、どのような内容でもできること
・プロンプトを打つことが基本になるため、国語力、文章力、論理的思考力、などが向上しやすいこと
・ユーザーは、AIが生成した「整理された日本語」を読むため、読解力、語彙の獲得、などが向上すること
その他の細かなことも含めて、短期間で、高効率な学習が実現できるのです。
あとは、このエンジニアリングを活かすステージを見つけることです。
自立支援、就労支援、人材育成、リスキリング、等々、活用の幅は広いことでしょう。