社長室という立場上、いろんな球が飛んできます。契約書も、精算も、採用も、事業計画も。それを全部自分で拾っているうちに、ある口癖が出てくるようになりました。「これは自分でやったほうが速い」。実際、たいてい速いんですよね。説明して、待って、直してもらう時間を考えたら、自分の手で30分で終わらせたほうが早い。正しい判断に見えます。
でも、これを1年積み上げるとどうなるか。自分の手が空かないので、次の仕事に手が出せない。しかもその業務は、僕の頭の中にしか手順がない状態で固定されます。他の人が見ても分からない。要するに、自分自身が属人化の温床になっていた。仕組み化を仕事にしておいて、いちばん属人的なのが自分でした。正直、これに気づいたときはけっこう恥ずかしかったです。
なので最近は、順番を変えました。自分でやりながら、やり方をそのまま記録に落とす。次は誰か、あるいはAIに、その記録ごと渡す。渡したあとの一発目は、だいたい自分がやるより粗いです。そこで巻き取らないのがコツかなと思っています。粗いまま2回目、3回目を回してもらうと、たいてい自分の水準を超えてくる。
結局、速さには2種類あるんだと思います。今日の30分の速さと、来月の自分の手が空いているかどうかの速さ。前者ばかり取りにいくと、半年後に全部自分へ返ってきます。手放すのは、今でも普通に怖い。それでも「一旦渡してみましょう」を選ぶようにしています。