(がん予防との関係を強調)
(がん予防との関係を強調)
食生活とがん予防の深い関わり
「食べ物は薬である」という理念は、がん予防の分野でも重要な意味を持っています。世界保健機関(WHO)や世界がん研究基金(WCRF)は、がんの発症要因の約30〜40%は食生活や生活習慣に関連していると報告しています。
抗酸化ストレスとDNA損傷
がんの発症には、DNAの損傷が大きく関わっています。その原因のひとつが、体内で過剰に発生する活性酸素による酸化ストレスです。
野菜や果物に含まれるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロテノイド(トマトのリコピン、ニンジンのβカロテンなど)は、抗酸化作用を持ち、DNA損傷を抑える働きがあると考えられています。実際、抗酸化物質を多く摂取する人は一部のがんリスクが低下する傾向があることが疫学研究で示されています(WCRF, 2018)。
慢性炎症とがんリスク
近年、「炎症とがん」の関連が盛んに研究されています。慢性炎症は細胞の増殖シグナルを刺激し、がん化を促進する可能性があります。
精製糖や加工食品に多い添加物・トランス脂肪酸は炎症を悪化させる一方、無添加の全粒穀物や魚に含まれるオメガ3脂肪酸は炎症抑制に有効とされています。こうした食習慣の積み重ねが、がんの発症リスクに影響を及ぼすのです。
腸内フローラと発がん抑制
大腸がんにおいては、腸内フローラの乱れが注目されています。腸内で悪玉菌が優勢になると、発がん性物質や炎症性物質が増加する可能性があることが分かっています(Louis et al., 2014)。
食物繊維や発酵食品を摂取することで善玉菌を増やし、短鎖脂肪酸(特に酪酸)を産生することが、大腸粘膜のがん化抑制に寄与するという報告もあります。無添加の自然な食材は腸内フローラを整える基盤となります。
血糖値コントロールと発がんリスク
急激な血糖値上昇(高GI食)は、インスリンの過剰分泌を招き、**インスリン様成長因子(IGF-1)**を増加させることが知られています。IGF-1は細胞増殖を促進し、がんのリスクを高める可能性があります(Giovannucci, 2001)。
無添加で栄養素のバランスが保たれた食品(全粒穀物・豆類・野菜)を中心にすることで血糖値の安定を保ち、発がんリスクを低減することが期待できます。
まとめ
「無添加食材を積極的に取り入れること」は、がんの予防という観点からも大きな意味を持っています。
- 酸化ストレスの軽減 → DNA損傷を防ぐ
- 慢性炎症の抑制 → がん化プロセスを抑える
- 腸内フローラの改善 → 大腸がんリスク低下
- 血糖値コントロール → IGF-1の過剰刺激を防ぐ
日々の食卓は、がんに対する最前線の予防医学といえるでしょう。
参考文献例
- World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Diet, Nutrition, Physical Activity and Cancer: a Global Perspective. 2018.
- Valko M, et al. Free radicals and antioxidants in normal physiological functions and human disease. Int J Biochem Cell Biol. 2007.
- Louis P, Hold GL, Flint HJ. The gut microbiota, bacterial metabolites and colorectal cancer. Nat Rev Microbiol. 2014.
- Giovannucci E. Insulin, insulin-like growth factors and colon cancer: a review. Am J Clin Nutr. 2001.