「体調不良」から学んだ“食べ物の力”
私は現在、薬膳や栄養学の知識をもとに、食事を通して心身の健康を高める方法を研究・発信しています。
けれども、この道に進むきっかけは、かつての私自身が慢性的な体調不良に悩んでいた経験でした。
◆ 忙しさが招いた不調
社会人になりたての頃、仕事の忙しさからコンビニ食や外食に頼る生活が続きました。
その結果、手足の冷え、頭痛、胃の不快感、便秘などが重なり、休日に休んでも疲れが取れない状態に。
病院では「異常なし」と言われるばかりで、どうすればいいのか分からず、不安な日々を送っていました。
◆ 台所で始めた小さな実践
そんなときに出会ったのが薬膳の本。
「食べ物は薬になる」という言葉に惹かれ、半信半疑ながら少しずつ食生活を変えてみることにしました。
まず取り入れたのは、しょうが入りの味噌汁。しょうがには体を温め、巡りをよくする力があるため、冷えで重だるかった体がじんわり温まり、手足の冷えが和らぎました。
次に試したのは、黒豆ごはん。黒豆には腎を補い、血の巡りを助ける働きがあるとされ、香ばしさと優しい甘みに癒されながら続けていくうちに、便通が整い、胃腸の重さも軽くなっていきました。
さらに、根菜たっぷりの煮物(大根・にんじん・ごぼうなど)は胃腸を養い、消化を助ける食材が多いため、食後のもたれ感が減り、少しずつ疲れにくい体へと変わっていきました。
仕上げになつめと黒ごまのお茶を習慣にすると、緊張が和らぎ、夜も眠りやすくなり、慢性的な疲労感が次第に薄れていったのです。
◆ 改善の順序が教えてくれたこと
今振り返ると、体調は段階的に改善していきました。
最初に変わったのは冷え(しょうがの力)、次に胃腸の調子(根菜や黒豆の力)、そして最後に疲労感やだるさ(なつめや黒ごまの滋養)。
体の不調は一度に治るのではなく、少しずつ内側から整っていくものだと、身をもって学びました。
◆ 学び、そして伝える道へ
この経験をきっかけに、薬膳や栄養学を本格的に学び始めました。
今では、自分と同じように体調不良に悩む方に向けて、「毎日の食卓からできる小さなセルフケア」を伝えることを大切にしています。
これからも、台所からはじめる健康づくりをテーマに、暮らしに役立つ知恵を届けていきたいと思います。
By 田中鉄也 オンド.com