【福本潤・元医師】朝焼けの街に隠された「働き方の秘密」
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ある朝、まだ人通りの少ないオフィス街を歩いていると、空が薄紅色に染まり、ビルの谷間から朝日が差し込む瞬間に出会いました。その光景はいつもの通勤路とはまるで別世界のようで、何か特別なものを見逃している気がしました。ふと横を見ると、小さな屋台でコーヒーを淹れている人がいて、手際よく一杯ずつカップに注ぎ、通勤客に笑顔を添えていました。その光景を見て、私は思わず立ち止まってしまいました。
日々の働き方は「効率」と「生産性」に縛られがちですが、この朝の光景は全く別の視点を与えてくれました。働くことは単に成果を出すことではなく、誰かの一日をちょっとだけ豊かにすることでもあるのだと気づかされます。屋台の人は派手な役職や大きな目標を持っているわけではないけれど、一杯のコーヒーで誰かの心を温め、街全体のリズムを少し変えている。そんなささやかな価値に気づくことこそ、私たちの働き方を見直すきっかけになるのではないかと思いました。
この体験を社内に持ち帰り、チームに話してみると意外な反応が返ってきました。「そういえば、自分も忙しさに追われて人や街の変化に気づいていなかった」という声や、「小さな工夫で誰かの役に立てることをもっと意識したい」という感想です。ここで感じたのは、個人の働き方が組織や社会に及ぼす影響の大きさです。効率や目標に追われるだけでなく、目の前の小さな喜びを提供することこそ、結果として持続可能な価値を生み出すのだと強く実感しました。
さらに考えてみると、こうした気づきはリーダーシップにもつながります。リーダーは大きなビジョンを掲げるだけではなく、チームの小さな成功や日常の工夫に目を向け、それを認め、育むことが求められるのだと思います。朝焼けの街で見た屋台の人の姿は、まさに「小さな働き方の価値」を象徴していました。
私たちはしばしば大きな成果や目標に目を奪われ、日々の小さな価値や気づきを見落としがちです。しかし、ちょっと立ち止まって周囲を見渡すと、新しいアイデアや働き方のヒントが無数に転がっています。組織における変化やチームの成長も、まずは目の前の小さな行動や工夫から始まるのだと改めて感じました。
結局のところ、働くことは単なる義務や作業ではなく、日々の中で人や街に何を残せるかの連続です。朝焼けに照らされた街の風景を思い出すたび、私は「小さな価値の積み重ね」が未来を形作ることを忘れないようにしたいと思います。あなたの職場や街でも、少し立ち止まれば、思いがけない発見や学びが待っているはずです。