【経営編 #3 】 「人を増やす」前にやるべき、3つのこと
「人を増やす」前にやるべき、3つのこと
「うちの会社、人が足りない。どうにか採用しないと」
中小企業の経営者と話していると、本当によく出てくる言葉です。
気持ちはよくわかります。仕事は増える、でも人が足りない——だから採用しかない、と考えるのは自然な流れです。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいんです。本当に人を増やすしかないでしょうか?
僕は、中小企業の現場をたくさん見てきた経験から、「人を増やす前にやるべきことが3つある」と思っています。しかも、この3つをちゃんとやっている会社は、結果として人を増やさなくても事業を回せるようになります。
今日はその3つの話をしたいと思います。
大企業と中小企業、バックオフィスの現実は全然違う
まず前提として、大企業と中小企業のバックオフィスの違いから見ていきましょう。
大企業は人事・経理・法務・ITと部門ごとに専門家がいて、大規模なシステムを導入して、長年蓄積されたノウハウとマニュアルがある。給与・福利厚生・ブランド力で優秀な人材も集められます。
一方、中小企業は一人が複数の役割を兼務しながら、限られた予算の中でなんとか回しているのが現実です。専門知識は浅くなりがちで、属人化が進みやすく、担当者が辞めると知識が消えてしまう。法令改正への対応も、情報収集から実務対応まで自分たちでやらなければならない。
これだけ見ると、中小企業は圧倒的に不利に見えます。
でも、実はそうじゃないんですよね。
中小企業には、大企業にない強みがある
中小企業のバックオフィスには、大企業には真似できない強みがあります。
意思決定が速い。 大企業は変更に複数の承認が必要ですが、中小企業はトップが決めればすぐ動ける。新しいツールの導入も、業務フローの変更も、スピーディーにできます。
ゼロから最適な仕組みを作れる。 大企業は既存の仕組みを変えるのに膨大なコストと時間がかかりますが、中小企業はゼロから理想の業務フローを設計できます。
組織全体が見渡せる。 規模が小さい分、経営者が現場の実態を把握しやすい。問題に気づいてから対応するまでのスピードが速い。
つまり、中小企業は「人・お金・ノウハウ」という資源では不利ですが、「スピード・柔軟性・身軽さ」という点では大企業より有利なんです。
スピードこそ、中小企業最大の武器
ここで少し立ち止まって考えてほしいのですが、なぜスピードがそんなに大事なのか。
大企業はブランド・資金・人材という「資源の力」で戦えますが、中小企業にはそれがない。だからこそスピードが中小企業にとって最大の競争優位になります。
市場環境・競合・顧客ニーズの変化が速い今の時代、意思決定が遅い組織は変化に気づいたときにはすでに手遅れになっていることがあります。ビジネスチャンスには賞味期限があって、「検討します」を繰り返しているうちに競合に先を越されることもある。また、経営の問題は放置すると必ず大きくなります。早く気づいて早く対処すれば小さく済むことが、後回しにすることで取り返しのつかない問題になることもある。
そして、そのスピードを支える土台がバックオフィスです。意思決定に必要な数字がすぐ出てこない、承認フローが曖昧で誰が何を決めるかわからない、情報が担当者のパソコンに散らばってアクセスできない——こういう状態では、いくら経営者がスピード感を持っていても、組織全体のスピードは上がりません。
バックオフィスは「コストがかかるだけの部門」と思われがちです。でも実際は、経営スピードを支える土台。バックオフィスが整っているかどうかが、経営のスピードを決めると言っても過言ではありません。
では、中小企業のバックオフィスはどうあるべきか — 3つの原則
大企業のマネをする必要はありません。大企業のやり方は中小企業には合わないし、そもそもコストが合わない。中小企業に求められるのは、「少ない資源で、最大のスピードと柔軟性を生み出すバックオフィス」です。
そのためにやるべきことは、大きく3つに整理できます。
① 人に頼らない仕組みを作る
属人化を解消して、誰がやっても同じ結果が出る業務フローを作る。そのための一番の手段がSaaSの活用です。勤怠管理・給与計算・経理処理・人事労務——これらをクラウドシステムに乗せることで、担当者が変わっても業務は止まらないし、どこからでも情報にアクセスできるようになります。
中小企業はしがらみが少ない分、最新のSaaSをすぐに導入できる。これは大企業にはない強みです。この強みを使わない手はありません。
② 最初のセットアップだけはプロに任せる
仕組みを作ることと、仕組みを回すことは難易度が全然違います。知見がないまま自分たちで業務フローを作ろうとすると、非効率な形ができあがったり、属人化やブラックボックス化が生まれてしまったりします。一度できあがった仕組みを後から変えるのは、想像以上に大変です。
だから最初のセットアップだけはお金をかけてでもプロに任せて、ちゃんとした形を作ってもらう。その後のルーティン業務は自分たちで回す。これが一番コスパのいいやり方です。
③ 数字を把握できる状態を作る
経営スピードを上げるためには、必要な数字にいつでもアクセスできる状態が必要です。「今、いくら投資に回せるのか」「どの部門にコストがかかっているのか」「どの事業が稼いでいて、どこが損しているのか」——これがリアルタイムで把握できない組織は、どうしても意思決定が後手に回ります。
よくあるのが、**「データは持っているけど、活かせていない」**というパターンです。紙のまま電子化されていない、担当者のPCに散らばって共有できていない、情報管理のルールがなくて必要なときに出てこない——こういう状態だと、せっかくのデータが経営判断に活かされません。
データを持っているだけではダメで、いつでも取り出せて、経営判断に使える状態になっていることが大事です。方法は何でもかまいません。SaaSでも、Excelでも、紙でも——自社に合ったやり方で「把握できている状態」を作ることが先決です。
「うちはちゃんと把握できてるか?」と自問したとき、すぐに答えが出てこないなら、そこから始めるサインかもしれません。
まとめ
中小企業は資源では大企業に勝てません。でも、スピードと柔軟性では勝てます。
そのスピードと柔軟性を最大限に活かすための土台が、バックオフィスです。人に頼らない仕組みを作り、最初のセットアップだけはプロに任せ、数字を把握できる状態を作る。この3つを意識するだけで、経営の質は大きく変わります。
そして冒頭の話に戻りますが、これができている会社は、結果として人を増やさなくても事業を回せるようになります。採用コストも教育コストも抑えながら、事業を伸ばしていけるんです。
「うちはまだ小さいから」と後回しにしてきたバックオフィスの整備、一度真剣に考えてみてほしいと思っています。小さいうちに作った仕組みが、事業が大きくなったときに必ず生きてきます。
もし「何から手をつけたらいいかわからない」という段階であれば、一人で抱え込まず、外部の力を借りることも選択肢に入れてみてください。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。みなさまの事業が発展されることを心よりお祈りしています!