【阪田和典】会議室の椅子が教えてくれたこと
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朝のオフィスに足を踏み入れると、まだ薄暗い会議室の椅子が整然と並んでいる。普段は気にも留めないその光景が、今日は何故か妙に新鮮に映った。私は一番端の椅子に腰を下ろし、静かに周囲を見渡す。会議室の窓から差し込む光が、机の表面に淡い影を落としている。その陰影の中で、椅子の曲線や角度がまるで何かを語りかけているかのように感じられた。
会議やプレゼンの場面では、椅子はただ座るための道具でしかない。しかし今日、私は椅子の存在に思いを巡らせる。毎日同じ椅子に座る人々は、どんなアイデアを生み出し、どんな議論を重ねているのか。椅子の一つひとつが、無数の思考や決断、挑戦の瞬間を支えてきたのだと考えると、普段の会議室の空気が少し違って見えてくる。
私はふと思い立ち、自分のキャリアについて考えた。仕事とは目の前のタスクをこなすことだけではなく、目に見えない環境や道具、他者との関係性に支えられながら進む旅のようなものではないか。椅子が毎日同じ場所で待っていてくれること、それだけで私は安心して考えを巡らせ、次の行動に移せる。日常の中にある小さな支えこそ、意外な形で自分の成長を促してくれているのだと気づいた。
椅子に座ったまま、私は未来の自分を想像する。どんな環境でどんな仲間と働き、どんなアイデアを形にしていくのか。そのイメージは現実の業務や会議での体験とは少し異なるかもしれないが、椅子の存在があるだけで、自分の思考は自由に飛び、可能性の輪郭を描き始める。
仕事場や道具は、私たちにとって単なる背景ではなく、挑戦や発想を支えるパートナーだ。椅子に座るたび、目の前の小さな環境に感謝し、見落としていた可能性に気づくこと。それこそが、日々の成長を生む秘訣かもしれない。椅子が教えてくれたのは、どんな小さな存在でも、自分のキャリアや挑戦に大きな影響を与えることがあるということだった。