介護の現場には「ヒヤリハット」という考え方があります。
大きな事故には至らなかったけれど、「ヒヤッとした」「ハッとした」瞬間の記録のこと。転倒しかけた、薬を渡す直前に間違いに気づいた——そういう小さな予兆を残しておくことで、次の大きな事故を防ぐ。介護の世界では当たり前の習慣です。
よく言われるのが、1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故があり、さらにその裏には300件のヒヤリハットがある、という考え方(ハインリッヒの法則)。数の正確さよりも、「小さな異常を放置すると、いずれ大きな事故につながる」という構造が大事なんだと思います。
これは動画制作の現場でも、ほとんど同じ構造があると感じています。
テロップの誤字一つは、それ単体では大きな問題に見えません。でも、それが視聴者の離脱につながり、再生数が落ち、依頼主の収益が目減りしていく。現場にとっては、これも一つの「事故」です。
私は今も、修正が入るたびにその理由をアーカイブに残すようにしています。「直した」で終わらせず、なぜそのミスが起きたのか、どう防げるのかを記録として残す。ジャンルごとに整理しておくと、後から同じような修正が繰り返されていないかを振り返ることができます。これは特定の案件のためというより、自分がどの現場に入っても続けている習慣です。
誤字脱字、テロップのタイミングのズレ、BGMの音量バランス——一つひとつは小さくても、積み重ねれば大きな信頼低下につながるものばかりです。それを「またやってしまった」で終わらせず、次に活かせる形にしておく。
介護の仕事で培った「小さな予兆を見逃さない」という視点は、ジャンルが変わっても活きるんだな、と感じています。
現場を止めないために、小さな違和感を拾い続ける。それが結局、大きな事故を防ぐいちばんの近道だと思っています。