一番変わったのは、社長自身だった~ニチコミ「全員経営」の8年と経営会議100回目の奇跡
コンサルタントの松浦です。
中小企業の経営者の方々と向き合う中で、私はよくこのような悩みを耳にします。
「うちの社員はなぜ、指示されるまで動かないのか」
「結局、自分がすべてを決めて差配しなければ、会社が回らない」
ワンマン経営の限界を感じつつも、そこから抜け出せない。そんな葛藤を抱える経営者に、ぜひ知っていただきたいストーリーがあります。私が長年、経営改革のパートナーとして伴走してきた、株式会社ニチコミの歩みです。
先日、同社は記念すべき「第100回」の経営会議を迎えました。一度も途切れることなく重ねられたこの数字は、同社が推進してきた「全員経営(部門別採算制度)」の歴史そのものです。全国からリーダーたちが集まり、主体的に数字を語り合う熱気あふれる会議の席で、城戸社長は静かに、しかし力強くこう語りました。
「この仕組みを導入した時、ある意味で一番変わらなければならなかったのは、自分自身だった」
それは、強烈なトップダウンで会社を引っ張ってきた一人のカリスマ経営者が、8年という歳月をかけてたどり着いた、深く尊い自己変革の告白でした。
「自分がすべて」という驕りとの決別
今から8年前の2018年、ニチコミが部門別採算制度を導入した当時の事業規模は、現在の約半分でした。当時は今以上に徹底したトップダウン経営。すべての判断を城戸社長自身が握り、社長の意思こそが会社を動かす絶対の原動力だったのです。
「自分がここまで会社を引っ張ってきた」という自負は、知らず知らずのうちに経営者特有の「おごり」へと姿を変えていきます。現場に権限を移譲し、リーダーたちに判断を手放していこうとした時、城戸社長の胸を去来したのは、激しい葛藤と一抹の寂しさだったといいます。
「自分が前に出なくなったら、社長としての存在意義が薄れるのではないか」
多くの経営者が「社員に主体性を持ってほしい」と願いながらも、いざとなると口を挟んでしまうのは、この「手放す恐怖」があるからです。城戸社長にとっても、全員経営の導入は、社員の意識改革である以上に、自身のプライドと存在意義をかけた「意識改革」の闘いだったのです。
訪れた危機的状況、そして確信へ
社長が現場を信じて一歩引き、管理監督の立場へと回る。言うのは簡単ですが、一筋縄ではいきません。導入から数年は順調に推移したものの、数年前に最大の試練が訪れました。ベテランや中堅社員の入れ替わりが重なり、組織は一時、深刻な危機的状況に陥ったのです。
しかし、ここからが「全員経営」の本領発揮でした。経営者が再びワンマンに戻って強権を発動するのではなく、あくまで仕組みを信じ、現場の対話を止めませんでした。20代、30代の若手リーダーたちが「自分たちがこの会社を支えるのだ」と当事者意識を燃やし、苦境を乗り越えるために一生懸命に動き出したのです。
その結果、ニチコミは見事なV字回復を果たしました。当時と比べて、現在の広報紙の発行地区数は「ほぼ倍増」という圧倒的な事業拡大を実現しています。さらに今期は、順調に進めば過去最高の利益を見据えることができる位置にまで、力強い成長を遂げています。
第100回の会議で飛び交っていたのは、社長からの指示ではありません。現場のリーダーたちが「お客様のために、もっと品質を高めたい」「未来の可能性を信じて、より高い計画に挑戦したい」と、自発的に熱くぶつかり合う言葉の数々でした。
経営者の本当の仕事とは何か
かつて強烈なワンマンだった城戸社長は、会議の終盤にこう振り返りました。 「以前に比べれば自分もだいぶ控えるようになり、権限を移譲するようになった。そうしていく中で会社の業績も良くなり、数字も上がってきた。今まで自分が全力で行ってきた方法には、間違っていた部分もあったのだと反省させられた」
経営者がすべてを抱え込むワンマン経営は、社長の能力の枠がそのまま「会社の成長の限界値」になります。しかし、経営者が主役の座を現場に譲り、社員一人ひとりが「ミニ社長」として経営に参画する仕組みを作れば、会社の可能性は無限に広がります。
「全員経営」とは、単なる管理会計の手法ではありません。経営者が孤独な決断から解放され、社員と共に会社の未来を強固に創り上げていくための「人間成長の仕組み」なのです。
あなたが今日握りしめているその権限を、現場の未来のために手放す勇気はありますか?
株式会社ニチコミが8年かけて実証してきた、組織と経営者のパラダイムシフト。その具体的な仕組みや、中小企業が今日から取り組める第一歩について、ぜひ当社のホームページで詳しくご紹介しています。あなたの会社の「第二の創業」のヒントが、ここにあります。