クルージングヨット教室物語172
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「ただいま!」
麻美子が、ジュニアヨット教室から船底を塗っているアクエリアスのところに戻ってきた。
「お帰り、なんか麻美ちゃん楽しそうだったね」
「うん。だって皆、かわいいんだもの」
麻美子は、陽子に答えた。
「もう、ほぼ全部塗り終わってしまっているよ」
最後のラダー部分を香代と縫っていた隆が、麻美子に言った。
「あ、ごめんごめん」
麻美子は、隆に謝った。
「大丈夫、お昼食べて午後から、もう1回、2回目の上塗りするから」
「それじゃ、午後は私がいっぱい塗るわね」
麻美子は答えた。
「麻美ちゃんって子供が好きだよね」
「そうね、私って会社の経理とかより、本当はお母さんになって専業主婦したかった」
「そうなんだ。麻美ちゃんなら絶対に良いお母さんになると思う」
「そうでしょう!私も自分でもそう思うよ」
麻美子は、嬉しそうに瑠璃子に答えた。
「絶対に早く子供を産んで、お母さんになった方が良いよ」
「そうね。まだ間に合うかな」
麻美子は、香織に言われた首を傾げた。
「え?ぜんぜんまだまだ間に合うでしょう」
「うん。まだ大丈夫よ」
陽子も、麻美子に言った。
「でも、少しだけ急いだ方が良いかもしれない」
麻美子より少しだけお姉さんの雪が答えた。
「ぜんぶ塗り終わったよ」
刷毛を片手に、隆が皆のところに戻ってきた。
「まだ塗っているじゃないの」
麻美子が、プロペラのところを塗っている香代を指差しながら、隆に言った。
「ああ、だからあそこだけだよ」
隆は、麻美子に答えた。
プロペラ部分を塗り終わると、香代は塗り残しがないかアクエリアスの周りをぐるぐる回って確認していた。
「香代ちゃん、まだ塗り残しないか確認してますけど」
「ああ、後は香代に任せた」
手についた塗料を落としながら、隆は麻美子に答えた。
「まったくしょうがないわね」
麻美子は、隆の髪についた塗料を落としてあげながら苦笑した。
「ね、隆くん。さっき麻美ちゃんが子供欲しいって話をしていたんだけど」
雪が、麻美子に髪の塗料を落としてもらってるたかしを見ながら、話していた。
「そうなんだ、でも麻美子は子供の前に誰か結婚相手を探す方が先じゃねえ」
「そ、そうだね」
雪は、隆に答えた。
「ねえ、子供でしょう」
「そうね、子供だね」
「私、毎日社長室で1人子供を抱えているようなものだから」
麻美子は、雪と苦笑していた。
「なんだよ。2人でなんの話をしているんだよ」
隆も苦笑していた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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