デジタルアーキビストを"教育者"として育てる意義
こんにちは。上級デジタルアーキビストの寳德(ほうとく)です。
ストーリーをご覧いただき、ありがとうございます。
これまで私は、大学での産学連携講義(京都大学や奈良大学など)や、奈良県のインターンシップ推進事業参画などを通じて、国の社会課題ともなっている「デジタルアーキビスト育成」に取り組んできました。
特にインターンシップでは、主に司書・学芸員養成課程に学ぶ大学生・大学院生を対象に、自身の専門性を活かした仕事と人生の充実を目的に、デジタルアーカイブ利活用を通じた新たなキャリア形成の考え方を学んでいただいており、多くの学生さんにもご参加いただきました(実施例はこちら)。
…このように、「仕事と人生の充実」を目的にしたキャリア形成の機会は、本来、どの業界でも必要なはずです。
しかし残念ながら、現在の日本では、こうした文脈で「インターンシップ」という言葉が使われておらず、自分の想いを仕事と人生で体現しづらい状況になっています。
今回は、こうした大学生・大学院生にとってのキャリア形成機会の問題点を指摘し、突破口となる社会的な動きや、教育者としての「デジタルアーキビスト」の役割ついてお話しします。
【1】本格的な職業体験が、日本ではマイナーである理由
私は大学と連携した教育機会が増えるにつれ、職業体験機会のお話をする機会も増えています。私が決まってお話しする内容は、比較的長期間にわたって本格的な就業体験を行い、実際の仕事に当たりながら、職業専門性を身につけていただくものです。
しかし、こうした内容をご提案すると、ほぼ決まって
「どれだけ学生が集まるか…」
という反応が返ってきます。
これは現在日本の大学生の職業体験に、「早期選考」の考え方が色濃く出ていることが、背景にあるようです。「人手不足」と呼ばれる昨今において、この傾向はある種仕方のないことで、同じ民間企業として理解できる部分も多いです。
しかしながら、就業体験を通じて企業・業界を知り、自身のキャリアを考える機会という本来の意味が通じない点に、私はとても複雑な気持ちになりました。
この現状が「本来あるべき姿」ではないからです。
そしてこうした事態に、大学のキャリアセンターなどもまた、頭を悩ませているようです。
【2】熱意ある学生は、“青田刈りインターン”では満足しない
では当の学生さんは、今の日本のインターン事情をどう思っているのでしょうか?
学生さんに話を聞いていくと、
●主に企業・業界の説明が多く、仕事にしっかり触れる機会が少なく消化不良だった。
●他の参加者の考え方に触れる機会も少なく残念だった。
●企業側からのフィードバックが手薄になりがちで、自分の状況を客観的に見つめることに苦労した。
このような想いをもつ学生さんが複数人いらっしゃいました。
要するに、自身のキャリアを真剣に考えている学生さんにとって、
今の日本の職業体験の在り方は「大きな不満」を生み出してしまっているのです。
果たして、このままで良いのでしょうか…
【3】文化庁の最新議論は、新たなキャリア教育の糸口
そのような中、約70年ぶりに改正された博物館法が2023年4月に施行。最新の文化庁第5期博物館部会(2024年3月)では、博物館内部で育成の難しい「デジタルアーキビスト」等の専門職を、民間企業で育成する必要性が議論されています。
「これは博物館だけの問題ではなく、日本の職業体験の“常識”を突き破る糸口になる」ーーこの議論を見た時に、私はそう思いました。
司書・学芸員有資格者の文化施設への就業は非常に厳しいです。
「資格をとったのに、活かせない。でも活かしたい」ーーそんな学生さんが「デジタルアーカイブ利活用教育の仕事」に触れ、目を輝かせる姿を私も見てきました。
そして前述の通り、国が民間企業に対し「デジタルアーキビストの育成」を要求しているーーこれは今の日本社会にとって、初期キャリアの形成のあり方を変える大チャンスなのではないでしょうか?
【4】デジタルアーキビストを、“教育者”として育てる
冒頭述べた通り、私は、大学での産学連携講義や、奈良県のインターンシップ推進事業参画などを通じて、国の社会課題ともなっている「デジタルアーキビスト育成」に取り組んでいます。
そしてインターンシップでは、主に司書・学芸員養成課程に学ぶ大学生・大学院生を対象に、自身の専門性を活かした仕事と人生の充実を目的に、デジタルアーカイブ利活用を通じた新たなキャリア形成の考え方を学んでいただいております。
そしてこれを契機に、本来のキャリア形成のあり方に回帰し、変えるきっかけを作らなければならないと感じています。
私はいずれは「デジタルアーキビスト」自身が、その次の世代の「デジタルアーキビスト」を育成する “教育者” となり、熱意ある学生さんの要望に応えていくーーこうした社会実現のきっかけにできるよう、私自身、今後も日々の活動に邁進していきます。