「この仕事、まだ持っていたの?」
現場を見ていると、なぜかタスクを抱え込んでしまう人がいます。
依頼したのは数日前。
本人も仕事を忘れているわけではありません。
進捗を聞くと、
「やろうとは思っています。」
「確認しようと思っていました。」
「もう少しでできます。」
という返事が返ってくる。
そして、その間にも新しい仕事は入ってきます。
一つ終わらないまま、次の仕事を受ける。
また次の仕事を受ける。
気が付けば、本人のところにたくさんのタスクが溜まっています。
こういう状態を見ると、
「仕事が遅い。」
「段取りが悪い。」
「もっと早くやればいいのに。」
と思ってしまうかもしれません。
でも私は、
タスクが溜まっていることは「原因」ではなく「結果」
だと考えています。
では、その仕事はなぜ止まっているのでしょうか。
人は、わざと仕事を溜めているわけではありません
もちろん、単純に仕事を後回しにしている場合もあります。
しかし、実際に話を聞いてみると、別の理由が隠れていることがあります。
やり方が分からない。
必要な情報が足りない。
誰かの確認を待っている。
どこまで自分で判断していいか分からない。
完璧にしてから提出したい。
途中の状態で人に見せるのが苦手。
分からないと言いづらい。
相談するタイミングが分からない。
複数の仕事があり、優先順位を決められない。
頼まれると断れず、仕事を受け続けてしまう。
一口に「タスクを抱えている」と言っても、その理由はさまざまです。
だから、
「早くやって。」
だけでは解決しないことがあります。
仕事が止まっている「場所」を見る
私は、タスクが溜まっている人を見るとき、
「なぜ終わっていないのか。」
よりも、
「どこで止まっているのか。」
を見ることが大切だと思っています。
まだ着手していない。
途中まで進んでいる。
確認待ちになっている。
判断できずに止まっている。
完成しているけれど、提出できずにいる。
同じ「未完了」でも、状態はまったく違います。
例えば、判断できずに止まっている人に、
「早くやって。」
と言っても進みません。
必要なのは、判断基準かもしれません。
情報が足りない人なら、必要なのは追加情報です。
仕事量そのものが多すぎるなら、優先順位を整理したり、担当を分けたりする必要があります。
止まっている原因によって、管理者がすることは変わります。
「できる仕事」に逃げていることもある
以前、
「『できる仕事』ではなく、『今やるべき仕事』を選べていますか?」
という話を書きました。
これも、タスクが溜まる原因の一つです。
難しい仕事。
判断が必要な仕事。
失敗する可能性のある仕事。
時間のかかる仕事。
こうした仕事を抱えているとき、人は別の仕事を始めることがあります。
メールを整理する。
資料の見た目を整える。
机を片付ける。
飲食店なら、オーダーが溜まっているのに洗い物を始める。
どれも仕事です。
だから本人にも、
「仕事をしている。」
という感覚があります。
しかも、簡単な仕事は完了させやすいので達成感もあります。
一方で、本当に進めなければならないタスクは残ったままです。
すると、
忙しく働いているのに、重要な仕事だけが減らない
という状態になります。
これは「やる気がない」と決めつけるより、
なぜその仕事に着手しづらいのか。
そこを見る必要があります。
完璧にしようとして、出せなくなる
仕事を抱え込む人の中には、責任感が強い人もいます。
「ちゃんと完成させてから出したい。」
「間違った状態で見せたくない。」
「自分で最後までやらなければ。」
そう考えるほど、途中で相談できなくなります。
80%までできているのに、
残り20%が分からない。
でも、
「ここまでやったのに、今さら聞きづらい。」
と思ってしまう。
その結果、タスクが本人のところで止まります。
こういうケースでは、
「完成してから報告してください。」
より、
「ここまでできたら一度見せてください。」
と途中の確認ポイントをつくった方が仕事は進みやすくなります。
任せることと、完成するまで放置することは違います。
期限がなければ、優先順位も決めにくい
「これ、やっておいて。」
という依頼も、タスクを溜める原因になります。
いつまでなのか。
何のために必要なのか。
どの仕事より優先するのか。
そこが決まっていなければ、担当者自身が優先順位を考えなければなりません。
そして後から、
「まだできてないの?」
と言われる。
担当者からすれば、
「そんなに急ぎだと思っていませんでした。」
となります。
依頼するときには、
何をするのか。
いつまでなのか。
どの状態になれば完了なのか。
少なくとも、このくらいは共有しておく必要があります。
期限管理は、担当者だけの責任ではありません。
仕事を渡す側にも、仕事が進められる状態をつくる責任があります。
「全部自分でやる人」にも仕事は溜まる
仕事ができる人ほど、別の形でタスクを抱え込むこともあります。
「人に頼むより、自分でやった方が早い。」
「説明する時間がもったいない。」
「自分がやった方が間違いがない。」
そうして、小さな仕事まで全部自分で持つ。
最初は早いかもしれません。
しかし、仕事が増えるほど本人の処理能力を超えていきます。
すると、
急ぎの仕事から対応する。
後回しにした仕事が溜まる。
さらに新しい仕事が入る。
常に何かに追われる状態になります。
これは能力の問題というより、
仕事の持ち方の問題
です。
誰かに渡せる仕事はないか。
判断だけ自分がすればよい仕事はないか。
そもそもやめられる仕事はないか。
タスクが増えたときには、処理速度だけではなく、仕事そのものを整理する必要があります。
管理者は「タスクの数」だけを見ない
タスク管理表を見ると、
未完了が10件。
期限超過が3件。
と数字で把握できます。
もちろん、それも大切です。
でも私は、それだけでは管理とは言えないと思っています。
なぜ、その仕事が残っているのか。
どこで止まっているのか。
何があれば進むのか。
そこまで見る。
情報が足りないなら渡す。
判断できないなら判断基準を伝える。
優先順位が分からないなら整理する。
仕事量が多すぎるなら再配置する。
途中で相談できないなら、確認ポイントをつくる。
「早くやって」と言わなくても仕事が流れる状態をつくる。
それが、管理者の役割だと思います。
タスクが溜まるのは、仕事の詰まりが見えている状態です
タスクを抱え込む人を見ると、つい本人の能力や性格に原因を求めたくなります。
しかし、
「仕事が遅い人。」
と決めてしまえば、そこで原因を探すことは終わってしまいます。
大切なのは、
なぜ、この人のところで仕事が止まるのか。
を見ることです。
スキルなのか。
情報なのか。
判断基準なのか。
優先順位なのか。
仕事量なのか。
仕事の渡し方なのか。
原因が分かれば、仕組みで改善できることもあります。
タスクが溜まっていることは、単なる「未処理の仕事」ではありません。
仕事の流れのどこかに詰まりがあることを教えてくれているサイン
なのかもしれません。
人を責める前に、仕事が止まっている場所を見る。
そして、その仕事が自然に次へ流れる状態をつくる。
私は、それも「仕事を管理する」ということだと考えています。