フリーランスとして複数の企業の人事支援に携わる中で、改めて感じていることがあります。
それは、企業から最初に相談される課題と、実際に取り組む必要がある課題は、必ずしも同じではないということです。
採用がうまくいかない、社員が定着しない、人材が育たない。
こうした問題の背景には、職場環境やマネジメント、育成の仕組みなど、複数の要因が関係していることがあります。
離職・定着の相談から見えてきたこと
ある企業から、社員や業務委託人材の離職・定着に関する相談をいただきました。
当初の役割は、個別面談を通じて、離職につながる背景や職場環境の課題を把握することでした。
実際に話を聞くと、働く目的や価値観、置かれている状況は一人ひとり異なります。
職場環境や人間関係への悩みもあれば、キャリアや働き方への不安、家庭や個人の事情が影響することもあります。
当然ながら、何か一つの施策を実施すれば離職が減るという単純な問題ではありません。
そこで、面談で把握した内容を整理し、離職・定着に関係する要因をいくつかの観点に分類しました。
そのうえで、組織として改善できることは何か、マネージャーがどのように関わる必要があるのかを経営者に報告・提案しました。
その後、経営者から各部門のマネージャーにも説明してほしいと依頼を受け、離職に影響する要因や、定着に向けて必要な働きかけについて共有しました。
特に重視したのが、オンボーディングです。
新しい組織に加わる人には、業務を覚えるだけでなく、組織の考え方や仕事の進め方、自分に期待される役割を理解する機会が必要です。
また、段階的な教育やフォロー、相談できる環境も欠かせません。
こうした考え方は、新しく組織に加わる方へのオリエンテーションや教育内容の整備にも反映されていきました。
個別の悩みを聞くことから始まった仕事が、組織として人材を受け入れ、育てる仕組みづくりにつながった事例です。
採用活動の先にも課題がある
別の企業では、採用活動の改善が支援の入口でした。
求人内容や採用手法、応募状況を確認していく一方で、人を採用した後の育成や評価、日常的なフィードバックにも課題があることが見えてきました。
採用できれば、人材の問題が解決するわけではありません。
入社した人が安心して仕事を覚え、自分の役割を理解し、成長を実感できる環境があるか。
上司から適切なフィードバックを受けられているか。会社が求める人材像や期待が伝わっているか。
こうしたことも、人材確保や定着には関わってきます。
そのため、採用支援に加えて、人事評価制度や人材育成、組織運営に関する相談にも対応するようになりました。
採用、育成、評価、定着は、それぞれ独立した問題ではなく、つながっていると感じています。
まず「何が起きているのか」を確認する
人事の相談を受けたとき、私が大切にしているのは、最初から答えを決めつけないことです。
例えば、社員について何か問題が報告されたとき、それは確認できている事実なのか、それとも誰かの受け止め方や解釈なのか。
本人には確認しているのか。周囲の人はどう捉えているのか。そもそも、なぜその問題が起きているのか。
話を聞き、情報を整理していくと、当初の相談とは異なる課題が見えてくることもあります。
人事の問題には、個人の価値観や事情だけでなく、組織の歴史や職場の関係性など、さまざまな要素が関わっています。
だからこそ、一つの情報だけで判断せず、その企業にとって何が重要なのか、何から取り組むべきなのかを考えるようにしています。
提案だけで終わらず、実行できる形にする
もう一つ大切にしているのは、改善策を提案するだけで終わらせないことです。
例えば「オンボーディングを整えましょう」という提案でも、それだけでは仕組みは動きません。
誰が、いつ、何を伝えるのか。マネージャーはどのような役割を担うのか。既存の人員や業務の中で実行できるのか。
こうしたことを考え、必要に応じて具体的な運用や仕組みづくりまで関わっています。
人事機能が十分に整っていない企業では、最初から大きな仕組みをつくることが難しい場合もあります。
そのようなときは、優先順位を整理し、今できることから一つずつ進めることが大切だと考えています。
これからも、企業と一緒に考える外部人事として
これまで、採用企画、求人媒体運用、応募者対応、面接代行、人事評価制度の整備、人材育成、労務・組織課題への助言など、幅広い業務に携わってきました。
それぞれの仕事に共通しているのは、目の前の問題だけでなく、その背景にある課題を考え、企業の状況に合った方法で改善につなげていくことです。
現在はフリーランスとして、全国の企業を対象に、フルリモートを基本とした人事・採用支援を行っています。
採用実務の一部を担当する場合も、人事・組織全体の改善に関わる場合も、経営と現場の双方の話を聞きながら、必要なことを一つずつ形にしていきたい。
これからも、そんな外部人事でありたいと考えています。