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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

Company

70回作り直した、ユーザーファーストを諦めないものづくり

まるで隣にいるように。人に寄り添うテクノロジーで大切な人と人をつなぐ「まごチャンネル」をつくるチカク

株式会社チカク

2015/10/02

「こんなにテクノロジーが進歩しているのに、機械が人に寄り添っていない。僕たちは、本当に人に寄り添ったものをテクノロジーの力でつくりたいんです」

式会社チカクは2014年に創業。元アップル ジャパンの梶原健司さんが代表をつとめています。

彼らが9月14日に発表したのが、『まごチャンネル』というコミュニケーションツール。スマホで撮った子どもの写真や動画が、離れて暮らす実家のテレビにすぐ届くというサービスです。代表の梶原さんが、実際に離れて暮らすご両親に自分の子どもの写真や動画を届けたいと思ったことをきっかけに生まれました。

クラウドファンディングを通して公開され、通常目標金額が集まるのに数週間かかることが多い中、公開後たった50分で目標を達成するなど、大きな共感を得たこのサービス。どんな人たちがつくっているのだろうと思い、チカクのオフィスに話を聞きに行きました。

JR恵比寿駅を降りて、数分歩くと「ここで当たってる?」と少し不安になるようなビルの入り口にたどり着きます。階段を上ってドアをあけると、誰かのお家のようなオフィスに到着します。

迎えてくれたのは、写真奥に座るハードウェアの制作責任者の佐藤未知さんと、手前に座るソフトウェアの制作責任者の桑田健太さん。

個人的な思いから生まれた「まごチャンネル」

Wantedly内でインタビューを書いている佐藤さんは、遠隔のコミュニケーションについて研究してきた方。博士課程を修了して、今年の1月から共同創業者となりました。

「今日代表の梶原は実家である兵庫の淡路島に帰省中です。彼は、アップルにちょうどジョブスが戻ってきたころに入社しました。そこから、12年間で時価総額が100倍になる頃までいて、やりきったなっていうタイミングで辞めました。それが3、4年前です。そこからお世話になった人達に会いにいってたら、結果的に世界中を周るはめになったんですけど。その経験の中で梶原が深く感じたのが、「インターネットで人と人がつながっている」ということでした。海を隔てたところに住んでいるのに、日々の様子をSNSで見てるから昨日相手が何を食べたか知っていたりする。つまり物理的に遠くても精神的な距離は近かったんですね。」

テクノロジーをつかって、人に対してなにかできないかということを頭の片隅に置きながら、これからどんな事業をはじめるか考えていたそう。

「梶原には子供が2人いて、毎日のように子供の写真を撮ってるんですね。それを実家の淡路島の両親にどうにかして見せたかった。そのために実家に色んなデバイスを買ったり、ありとあらゆる手段を試したけれど、両親がうまくつかいこなせなかったり、できたとしても毎日写真を送るっていう負担が大きくてなかなか続かなかった。そのときに、『これだけテクノロジーが普及してるのに、淡路島と東京がつながってないぞ』と、ある種怒りのようなものを感じたそうなんです。」

そこから生まれたのが「まごチャンネル」。

「おじいちゃんおばあちゃんは、離れて暮らしていたら孫の顔がみたいですよね。フォトフレームとかもあるけれど、そこまで普及してない。なんでかっていったら、使い方がよくわからないから。シニア層で一番エンゲージしてるハードウェアって、やっぱりテレビなんですよね。テクノロジーが寄り添うなら、新しいデバイスつかってくださいじゃなくって、一番使い慣れてるテレビに映るようにすることが必要だと思ったんです。」

使い方はとても簡単。ママやパパは専用のアプリをダウンロードして、普段通りスマホで子どもの写真を撮るだけ。そして、実家には、かわいらしい家型の受信ボックスを置き、テレビとケーブルをつなぐ。

操作はいつも使っているテレビのリモコンでできます。受信ボックスに通信回線が内蔵されているため、インターネットの契約や、無線LANなどをセットアップする必要はありません。機械操作が苦手なおじいちゃんおばあちゃんたちでも、家にあるテレビで、すぐに孫たちの姿を近くに感じることができるのです。

また、実家側が「まごチャンネル」をつけると、スマホのアプリに視聴開始の通知が届くようになっています。そのタイミングでママから実家へ電話をかけたり、実際に会ったときには共通の話題が増えていたりと、声や姿を身近に感じるだけではなく、リアルなコミュニケーションを深めるきっかけにもなります。

危ない橋、ゼロからつくれる場所を探していた

佐藤さん自身のこともお伺いしたいのですが、博士課程を修了して、どういう経緯でチカクの共同創業者になったのですか?

「本当は入る予定のベンチャーがあったんですけど、卒業前に流れてしまって。そこからかなりいろんなスタートアップをみました。もともとシンガポールで働いたことがあって、そこが10人くらいの会社だったんです。もう10人の会社は経験したから、今度は10人になっていくところをみたいと思って、とにかく危ない橋を探してました(笑)。」

けれど、そういう小さい会社は、なかなかみつからなかったそう。

「それで友達に相談したら、偶然チカクのサービスに関わっていて、梶原のところにランチに連れていかれたんです。そのときに聞いたビジョンの話がすごかったんですよね。これはやばいなと思って。すぐにFacebookでつながって、ランチが終わった後に、また会う約束をしました。今度は新宿の中華料理屋にいって、サソリを食べながら、2人で3時間くらい話して、一緒にやりましょう! って感じになりましたね。」

最初の最初、ゼロからやってみたいっていうのがあったんです

ソフトウェア担当の桑田さんはどういうきっかけでジョインすることになったんですか?

「前もベンチャーにいたんですけど、もっと小さいベンチャーにいきたいなと思っていました。チカクは、Wantedlyで偶然みつけました。そのときって、会社の情報がほとんどないときで、いい意味で怪しかったんですね。なので、まず話を聞くというか、失敗してもいい面接みたいな感じで話を聞きにきたんです。そしたらけっこう意気投合して。実はそのあと、いくつか別の会社に面接にいったりしたんですけど、ここが一番面白そうだなってことでジョインしました。」

どの辺りが一番面白そうだったのでしょうか。

「僕はいま31歳なんですけど、小さなスタートアップで働けるチャンスって、体力、金銭、家庭的なことを考えると、ある意味これがラストチャンスかなって。安定的なところで働くっていうことは一度経験したので、今度は一番最初の最初、ゼロからやってみたいっていうのがあったんです。」

先ほど佐藤さんから、「桑田さんはOSが書けて、回路もわかって、ドライバも書いて、アプリも作れて、サーバもわかる人で、節操がない素晴らしい人です!」という紹介をしていただきました。

技術を駆使して、なにかを作り出すのが好きなんですか?

「そうですね。趣味で、友人たちと数日泊まり込んでslackというチャットシステムの改良版をつくりこんだりとか、人工的に現実感を作り出すVRでなにかつくったりっていうことをちょこちょこやってます。世界にないものを新しくつくるっていうのがけっこう好きですね。」

「大学ではコミュニケーション系のことをやっていて、もともと人と人をつなげる技術が好きで。ずっと人と人をつなげる系のサービスをつくってきました。」

新しいコミュニケーションの形をつくりたい

チカクのコミュニケーション、人と人がつながるってどういうことなんでしょうか。佐藤さんはこう答えてくれました。

「Presenceです。『いる』っていうことです。たとえば、まごチャンネルだと画面の向こうじゃなくて、隣なんです。いままで、電話で喋っていて、相手が隣にいる感覚って感じたことがないと思うんですが、僕たちがやっているのは、隣にいる感覚をつくるということ。」

「社名にもなっている“チカク”って、Near(近い)、 Neighbor(隣人)、 Perception(知覚)。五感を通じて近くに感じる。これがテーマですね。音声電話が普及してからもう100年以上経ってます。テレビ電話もスマホが普及して当たり前のものになりました。じゃあ次はなんだろうって考えたときに、電話は聴覚、テレビ電話は聴覚と視覚でしょ。五感で残ってるのは、触覚と嗅覚と味覚です。その中で、研究が一番進んでいるのって触覚なんですね。だから最近は触覚をつかって、遠隔で触れ合う研究やプロダクトがけっこう出てきています。でも難しいのが、500円払って遠隔で握手したい人がいるかといったら、あまりいないですよね。けれど、離れたところにいる自分の子どもや孫が抱っこできますといったら、それはやる人がいるだろうって。」

それをどうやる?と考えたときに、再現するのが技術的に難しいのであれば、孫を抱きしめた満足感が得られる感覚を、違う要素でどう近づけるのか。そういった感覚で、人と人とのつながり方、新しいコミュニケーションの形やツールをチカクはつくっています。

まごチャンネルをつくっていて、苦労したことなどはありましたか?

「スタートアップって基本的にソフトウェアをつくることが多いんです。開発環境もフリーのものがいろいろあります。けど、ハードウェアになった瞬間に、元手はかかるし、ハードウェアができる人は少ない。さらにそれを量産したことのある人はもっと少なくて。なにかつくって失敗したとしても、プログラムであれば1、2行作り直せば終わるんですけど、ハードウェアはいちいち製造し直さないといけない。それが大変ですね。」

受信ボックスがいまの形になるまで、ユーザーヒアリング、ユーザーテストを何度も何度も繰り返し、70回ほど作り直したのだそう。スタートアップで元手が少ない中、専用端末、OS、サーバー、専用アプリまでつくりきるのにかなりの時間をかけたようです。最後に、桑田さんはこう話してくれました。

「僕の人生の夢は世界を変えること。なので、テクノロジーで世の中に新しい価値観をつくる、それは自分のやりたいことだし、会社の目的でもありますね。」

いまの生活に本当に合ったサービスと、それを実現するテクノロジーを組み合わせたコミュニケーションツールをつくっていく。なんでいままでなかったんだろうと思うようなサービスが、これからもチカクから生まれる予感がしました。

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Interviewee Profiles

Michi Sato
ハカセ, 株式会社チカク
HCI、触覚、VRの研究者。Baonsajoというユニットで映像やMIDIコントローラを作っていたりもした。第12回文化庁メディア芸術祭審査員推薦賞(チーム受賞)、パリ第6大学に研究留学、日本学術振興会特別研究員、シンガポールのベンチャーに出稼ぎなどを経て、2014年末に博士学位取得。気づいたらアカデミックからコースアウトしてベンチャーやってた。
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Kenta Kuwata
実装担当, 株式会社チカク
名刺管理アプリ「Eight」のアプリ開発担当として、起ち上げ時期から担当し、Google Play ベスト オブ 2014に選出されたりもしました。新卒で入社した株式会社アクセスでは携帯電話のOS開発とかもしてました。
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  • Written by

    Wantedly編集部

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