桐光学園高等学校 / 高校生(普通課)
セレンディピティ
不思議な出来事があった。狩られる私と、狩る側不良との間に芽生えた奇妙な友情(というには恐怖感バキバキだったけど)。例えるなら「特攻の拓」 不良たちは万引きで生活の糧(?)を得ていた。スキームは「転売」であり、彼らが仕入れたCDを哀れガゼルたちが「特別価格」で買い取らされていた。「カーストのスキマ」に生息した私は標的にされなかったのだが、とうとうある日声をかけられた。 「地獄の釜が」と覚悟したのだが、どうも様子が違った。通常「特別価格」は定価かそれ以上なのだが、そのときはなぜか「ワンコイン(500円)」。代わりに「感想教えて」とのことだった。 少ないながらも支払ったのだから、しぶしぶ”変なジャケット”紐解いて家で聴いた。不良の音楽だから、やっぱりバキバキして激しい。激しいが…聴いてると”不思議な響き”に気づく。今までの”わかりやすいメロディ”とは違う、どこか「オトナ」の音。 結論から言えばドハマりしてしまい、不良には素直にその旨を伝えた。すると何故か照れくさそうに笑い、その後彼のバンドメンバーを紹介してくれた(彼も、バンドマンだったのだ)。そしてその後も親交が続き、とうとう校外で一緒にライブをやるほどに(ほぼその不良の前座だったけど) かつては「狩ると狩られる」「善と悪」という分断された世界が1枚のCDで繋がり、その後「意外なストーリー」に展開していく(手にした奨学金で購入したのは、このCD作ったギタリストのシグニチャーモデルだった)。 それ以来(今でも)得体のしれない何か/誰かと面したとき「彼我に通底するワンチャン」を信じて探すようになった(裏切られることも多い)。世界は完全に分断されておらず、また二極論だけで物語は語れない。そんなことを考える体験だった