郵便ポストは、囁かない
嘘から始まった、本当の物語。 伝承好きで皮肉屋の『僕』、相沢司。 町おこしのためなら、伝承さえ『嘘』のネタにする、猪突猛進の『彼女』、一ノ瀬ひまり。 出会うはずのなかった二人が、寂れた港町の片隅で結んだのは、奇妙で不本意な「共犯関係」。 彼らが仕掛けるのは、SNSでバズるための、フェイクの都市伝説作りだった。 【あらすじ】 『丑三つ時にうめき声をあげる郵便ポスト』 『迷いの森に現れる“道案内の狐火”』 彼女の無謀な情熱と、僕の不本意な知識が交わる時、偽りの怪異は本物以上に人々を魅了し、町は少しずつ熱を帯びていく。 だが、仕掛けた『嘘』は、やがて本物の事件を呼び起こす。 消えたクラスメイト。神隠しの沼。 自分たちの嘘が招いた最悪の事態に、二人は立ち向かうことを決意する。 武器は、民俗学の知識と、現代のツール。 そして、果たされなかった恋文の伝承に隠された、切ない真実――。 少しだけビターで、どこまでも優しい、新時代の青春“日常の謎”ミステリー。