夜鳴き石の声が聞こえる
その伝承は、三つの嘘で守られた、たった一つの真実だった。 伝承を神聖視する、皮肉屋の『僕』、相沢司。 町おこしのためなら伝承さえ『嘘』のネタにする、猪突猛進の『彼女』、一ノ瀬ひまり。 奇妙な共犯関係を結んだ二人に、観光協会から正式な初仕事が舞い込む。 それは、町に古くから伝わる、ありふれた哀しい伝承『夜泣き石』のPR動画制作だった。 【あらすじ】 「昔、森で迷子になった子供の魂が、今も母親を呼んで泣いている――」 誰もが知るその物語に、僕は拭えない違和感を覚えていた。 子供を弔うはずの祠に供えられていたのは、あまりに不自然な三つの供物。 『櫛』『鍵』そして『貝』 これらが、忘れられた町の歴史を解き明かす鍵だと気づいた時、僕たちのありふれた日常は、再び謎の色に染まっていく。 頑なに真実を隠そうとする老婆。古い手まり唄に込められた暗号。そして、町全体を巻き込んだ、百年以上にも及ぶ壮大な嘘。 この町が忘れたがっている、優しい嘘の裏に隠された、本当の声が聞こえるか? どこまでも優しい“日常の謎”ミステリー、汐凪町シリーズの第二弾!