東京理科大学大学院/Tokyo University of Science / 先進工学研究科 電子システム工学専攻
段差空間における粒子の拡散解析
2つの異なる流体を反応させる実験を行う時,その手法の一つとして,小さなチップ上に流路や反応装置を設け,試料分析の全工程を実現する,μTASがあります.μTASは,有機化学系での実験に加え,血液を検査するといった医療関係でも広く応用されています.μTASの高精度化には,試料の流体シミュレーションが必要不可欠ですが,高度なシミュレーションを行うためには,μTASの複雑な構造に合わせ,試料の粒子がどのように拡散するのか,ナノレベルの粒子の運動の理解が必要になります.しかし,先行研究では一様な壁がある空間での粒子の拡散解析までしか行われておらず,μTASで見られる複雑な構造を持つ空間での粒子の解析解は存在しておりません.そこで,理論的・計算科学的アプローチによって,新たな構造体での粒子の運動を観測することで,粒子が拡散しやすい構造や条件を調べるとともに,より正確な流体シミュレーションを行えるようにし,μTASをより高精度にできるのではないかと考えました. また別の研究室では,μTASの流路に使われる段差構造を形成する微細加工法の研究をしており,その段差空間における粒子の拡散解析を行うことで,実際のμTASに活用することができると考え,研究を始めました. 研究方法として,LAMMPSという分子動力学シミュレータをLINUX上で回し,シミュレーションを行うことで,粒子の拡散解析を行っております.今は,壁面をモスアイ構造にした時の拡散解析を行っています.またPythonを用いた時系列分析によって,粒子の拡散係数を予測する,ということも行いたいと考えています.