IoTで海上の船同士をつなぎ、人の命を守る海難救助サービスを創出 - ソラコムIoT事例
Contents1 導入の背景1.1 サービス開発のきっかけは祖父の海難事故2 実現したサービス2.1 近隣の船による一次救助を可能にした、海難救助ネットワークシステム2.2 解決したい課題に対して、必要な機能を厳選した [...]
https://iot-usecase.com/yobimori/
「よびもり」の仕組みは非常にシンプルです。必要なのは、首から下げられる小さなSOS発信端末とスマートフォンのアプリのみ。SOS発信端末は、セルラー通信を使って一定時間ごとに位置情報を取得しており、1回の充電で数日稼働することができます。
漁師など海に出ている人が海難事故に巻き込まれた場合、端末のボタンを押せば、アプリに事故発生と経過時間、現場の位置情報が通知され、周囲の船が一次救助に向かえるという仕組みです。アプリへの通知は複数名に行うことができ、上限数に制限はないため、組織単位で導入することもできます。
よびもりはライングループのような助け合いグループを構築し、何かあったときはそのグループにSOS通知が飛ぶシステムです。ですので、この助け合いグループには多くの人が入ることで事故に早く気づき、救助にスピードも上がります。
海難事故で人が亡くなってしまうのは、事故発生に気づくのが遅れてしまうことが主な要因です。
代表の千葉は自身の身近で起きた事故の原因を追究し、どのような機能があれば事故をなくせるのかを考え抜いたことで、このようなシンプルな仕組みにたどり着いたといいます。また、事故発生から迅速に救助に向かうことで救命の可能性が高まることから、周囲の船同士で一次救助が可能なネットワーク構築を着想しました。
「『よびもり』では、『海難死亡事故の抑制』という解決したい課題に対して、本当に必要な機能だけを選び抜きました。このサービスを通じてやりたいことはたくさんありましたが、全てを実現させようとしたら、スタートアップである私たちは資金が底をついてしまいます。海に出ていく人たちの命を守る機能さえ実現できればいい。アプリのUXの最適化など、自分たちのやりたいことはひとまず横に置き、課題の本質を見極めることが何よりも大切なのだと思いました」(千葉)
「よびもり」は現在、漁業関係者を中心に導入が進んでいますが、最近では問い合わせも増加し、観光船や海上の建造物に携わる建設会社、洋上風力発電の建築・メンテナンスを行う企業、海上での調査・研究を行う大学などでの導入事例も増えているといいます。
そうしたニーズの増加も受け、今後はシステムのアップデートを行う予定です。通信エリアを広げながら、バッテリーの駆動時間もさらに長くできるよう改善を検討しています。
よびもりのミッションは「海に関わるすべての人の「いってきます」と「ただいま」を守る」です。これは海難事故をゼロにすることでしか達成できません。代表の千葉は自身の祖父を海難事故で無くし、よびもりで自分たちの家族と同じように悲しむ人をなくすこと。そして不安をゼロにすることです。
2024年現在400人以上の漁師さんによびもり端末を届け、既によびもりが使われた事例もあります。一人でも多くの漁師さんに持ってもらうことで海難事故をゼロにするために泥臭く営業活動を進めています。
よびもりのお客様は漁師さんだけではありません。海に出る全ての人がターゲットです。2023年は知床の観光船に導入して頂き、2024年には遊漁船や海の上で建設する作業員にも持ってもらいました。今後はこの導入スピードを速くするため採用活動にも力を入れています。
「海の上で何かが起こっても、『よびもり』があるから迅速に対応でき、安心・安全が保たれていく」―そのような社会インフラとも呼べる存在を目指して、今後も会社に新たな仲間を加えながら、事業を拡大させていく構想です。
もしこれを読んでいて少しでもよびもりのことが気になったら是非一度お話をしましょう。私たちは泥臭く、青臭く、そして本当に人の命を守るサービスを浸透させていくために本気で取り組んでいます。その思いに少しでも共感してもらえたら嬉しいです。