メンバー紹介
千葉佳祐
代表。1995年4月3日生まれ。北海道紋別市出身。北海道紋別高校と山形大学理学部卒。九州大学理学府在学中に「よびもり(旧nanoFreaks)」を設立。
地元・北海道の漁師だった祖父を海難事故で亡くしており、この問題を解決すべく、漁師や海上事業者向けに助け合い海難救助サービス『よびもり』を展開中。
当たり前の毎日を守る「よびもり」の原点
Q:「よびもり」という事業を始めた原点はどこにあるのでしょうか?
祖父が海難事故で亡くなっているんです。北海道羅臼町で漁師をしていた祖父が、漁に出たまま帰ってこなかった。「おみやげいっぱい買ってくるからな」と言って出ていったきり、祖母は「ただいま」を聞くことができませんでした。遺体も発見されず、残された祖母は当時24歳で、1歳の娘を抱えてそこからずっと独りで生きてきたんです。
「おじいちゃんはまだどこかで生きているかもしれない」と、よく話していて。遺体が見つからないと、心にずっと踏ん切りのつかないものが残るんですよね。
たくさんあったビジネスアイデアの中から「よびもり」を選んだのも、喜ばれる人の顔が明確に浮かんで、自分がやる意味があると思えたから。「いってらっしゃい」と「ただいま」を、当たり前に守れる海にしたい。それが出発点です。
Q:学生の頃から、なぜそんなにビジネスアイデアを考えていたのでしょうか?
元々は理学部の化学専攻で、九州大学の大学院に進学しました。卒業後は大きな会社に入る選択肢もありましたが、地元の大人を思い浮かべた時に、そこに未来はない、面白くない、しんどそうというイメージが先行していて。就職しても良いことないだろうなと。
だから「自分で生きていく何か」を求めていたんです。会社なのか、YouTuberなのか、ライターなのか。「起業」はその選択肢の一つで、ビジネスアイデアをメモ帳に書き溜めていました。マスキングテープのように「壁に貼れる延長コード」とか(笑)。まずはビジネスコンテストやピッチにめちゃくちゃ出ていましたね。当時は「ピッチしか仕事がなかった」と言えるくらい、そればかりやっていました。
でも、ビジネスコンテストに出て優勝しても、それはただのアイデアを評価されてるだけで、意味がないと思うようになって。一回立ち止まって、「本当にこれやりたいのか?」と内省したときに、祖父のことを思い出したんです。喜ばれる人のイメージがつくし、自分がやる意味もある。それが「よびもり」でした。
Q:2019年8月に法人化されていますが、そのタイミングは何かきっかけが?
会社化したのは、単純に資金調達をしたからですね。ただの学生チームのようなところから、「世に出せるものを作るぞ」というタイミングで法人として走り出しました。
休学していた大学院も退学しました。「よびもり」で生きていける確信があったわけではないですが、「これをやっていこう」と。
「手塗りシリコン」で乗り越えた、ハードウェア開発の暗黒期
Q:順調にスタートしたように見えますが、開発で難しいと感じる部分はありましたか?
最初は地獄でした。ハードウェアを商品として出すハードルの高さを突破できなかった。当初は基板や回路、箱の設計まで全部自分たちでやろうとしていたんです。でも量産しようと思ったら「金型」が必要で、それに何千万円とかかる。
未経験で、最初の一個をどうやって作ったらいいかさえわからない。お金と時間だけが、どんどんと溶けていきました。最終的には、自分たちで全部を設計して量産するという考えを捨てたんです。
Q:自社開発を捨てたあと、どのように製品化へ漕ぎ着けたのでしょうか?
「どうすれば最短で現場に届けられるか」を考えた結果、中国などの海外に目を向けました。中国には、見守り用や重機のトラッキング用として、既に完成されたGPSデバイスの市場があったんです。自分たちでゼロから作るこだわりを捨てて、これらを仕入れて、中身のソフトウェアを自分たちでカスタマイズするやり方に変えました。
もちろん「中国の会社に任せられない」という思想があったらこの手は取れないわけですが、そのバイアスを無くした。当時、開発担当だったメンバーは、その戦いが難しすぎて燃え尽きて辞めてしまって。中心メンバーが僕一人になった時期もありました。
ところが、仕入れたデバイスもそのままでは防水性能が足りなかった。でも、手元にこれしかない中で、どうするか。結局学生の友達を呼んで、デバイスの基板やネジ穴に緑色のシリコンを一個一個「手塗り」して防水加工を施したんです。とにかく集めたその100台を、福岡の漁業組合に配ったのが製品化の始まりです。
シリコン加工を施した旧型(右)と現行型
10年間変わらない「1日2人が亡くなる海」を、普及の力で変える
Q:現場での「安全」に対する意識や、普及の広がりをどう感じていますか?
2022年の知床の事故以降、海上での安全意識は非常に高まっています。漁師の奥さん方の集まりで「よびもり」の話をすると、すごく人気なんです。「旦那に持たせたい」って。知床の観光船でも乗客向けに導入され、昨年度は年間で1.2万〜1.3万回のレンタル実績がありました。
Q:これからの「よびもり」が普及した世界は、どうなっていくと考えていますか?
日本の海難事故は、この10年間、死者数が年間約700人(1日に約2人)が亡くなるペースでずっと変わっていません。陸上の交通事故は年々減っているのに、海は変化がない。
でも、よびもりが全国に普及すれば、この「700」という数字は確実に変えられる。海上で安心して働ける環境が作られていくと考えています。
家族のために寄り添う新サービス
Q:救助デバイスの普及以外に、次なる展望はありますか?
実は今、新しいサービスを考えています。海難事故で遺体があがらないと、死亡認定が出るまで最長7年もかかるケースがあります。その間、家族は口座が凍結されたり保険金が出なかったりと、本当に苦しい思いをするんです。
デバイスで事故にあった人を助けるだけでなく、事故が起きた直後の煩雑な行政・銀行手続きを僕たちが全部代行し、万が一の時にも家族の生活を守る。本人だけでなく、その家族にまで寄り添えるサービスを展開していきたいと考えています。
求めるのは北海道で「0から1の仕組み」を創るスタメン
Q:最後に、いま募集している人材像について教えてください。
単なる「作業者」が欲しいわけではありません。例えば月10件しか契約が取れない状況を、どうすれば100件取れる「仕組み」を見出せるか。営業や事業開発的な動きができる人が必要です。
隣の人が困っていたら手伝うし、会社に必要なら全部やる。今のメンバーは全員、東京などから北海道に戻ってきたUターン組です。チームで勝つために動けるプロ意識がある。海難救助という遅れている領域に、新しい「当たり前」を創る。その「0から1」の過渡期を、北海道で一緒に楽しめるスタメンをお待ちしています。