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お客さまの未来をつくる、社史制作



数々の大企業に対して「コンサルティングxクリエイティブ」で領域不問の課題解決を行うJBA。でも「JBAって何屋さん?」と聞かれると、一言では答えにくいんです。そこで、実際のお客さまとの具体的なプロジェクトを通して、担当した社員は、何を考え、どんなことをしたのか。やりがいや苦悩や仕事観に至るまでをリアルにお伝えする「事例紹介」シリーズです。

こんにちは、2013年入社の江口です。

人気の事例紹介シリーズ、20本目の今回は、2013年に私が担当した、日本のトップ精密機器メーカーY社さまの周年事業の紹介です。Y社さまとのお取引が始まったきっかけは、JBAが開催する社史・周年に関するセミナーにご参加いただき、そこで社史についてのご相談いただいたことからでした。

会社の歴史を見せる「社史」で、未来を表現する

企業が創業何十周年というような節目に行うお祝い行事を「周年行事」と呼びます。その行事の一部として、会社のそれまでの歩みや歴史年表をまとめた社史が制作されることも、よくあります。

ところが、Y社さまからのご相談は「過去をふりかえるものではなく、未来に向けた冊子を作りたい」というものでした。

「社員の会社に対するイメージを変えて欲しい。下を向いている社員の顔を上に向かせて欲しい」と言われたのですが、普通は過去をまとめるから”社史”なのに、未来を見せる冊子を作りたいというのはなぜでしょう?

最初のうちは、その裏の理由は説明されませんでした。なぜそうしたいかという核心を打ち明けていただけるまでに、私は2ヶ月をかけて信頼関係を築きながら、根気強くヒアリングを進めました。

実情は、こうでした。Y社さまはそれまで、2008年のリーマンショックなどの景気の波をいくつも潜り抜け、その都度、組織変更や方針転換などの様々な施策を繰り返してきました。それは組織として生き残るためにやむを得ない判断だったのですが、ご相談をいただいた2013年の当時は、社員の間では帰属意識が薄れ、どこか、会社に対する不信感が社内に漂うようになってしまっていたのです。

会社が「未来を変えよう」という号令をかけても、社員の気持ちはついてこない。だから、社外コンサルに相談して、皆の目を過去から引き離してこれからの未来に向けられるような社史を作りたい。それで社員のモチベーションアップを図りたい、というのが、最初のリクエストの根本にあった切実なご要望でした。

それさえわかれば、そこからのアプローチはJBAの得意分野です。このお客さまの企業課題に向けて、どんな解決アイディアが良いか。それを掴むために、私たちは更にその世界観を深く理解するための調査を進め、組織構造や働いている人たちのインサイトを洗い出していきました。

「読まなくてもわかる」社史

まず、方針として立てたのは、「誰が見ても、一目で何が書いてあるかわかるページにしよう」ということでした。

当時は社史と言えば、開いたページから文字がつらつらとならんでいるものが定番でしたが、会社への帰属意識が薄い社員は、会社が配布する刊行物への関心も薄い筈。そうであれば、読まなければいけない文字を極力少なくすることを徹底したいところです。見開きの左ページいっぱいに写真を載せて目を惹き、印象付けたいキャッチコピーを随所にちりばめて「未来への視線」を強調するなど、様々な刷り込みの工夫をこらしました。

それに、Y社さまは、海外での展開も大きなグローバル企業です。日本語版と英語版、両方で社史を制作するのですが、その点でもビジュアル、キャッチコピーを最大限に生かした冊子にすることが効果的だと判断しました。

技術者の秘められた物語を伝える

私たちが捉えた社員さんたちの特徴は、大きく2つ、ありました。

その第一は、「人に共感するのではなく、技術に共感する傾向がある」ということ。何かを伝えたい時には社内の有名人を起用して語らせるよりも、具体的な技術や製品、その裏側にある秘話を知ることで心が動く人たちです。このような気づきに基づき、私たちは一つひとつの企画を考えて行きます。

それで企画したのが「代表製品の開発ストーリー」の章でした。過去のY社さまの製品がどのような苦労と工夫で生まれたのかを表す開発物語を編纂するため、合計20製品について、優秀な技術者の方々に取材しました。

「なぜこの製品を作ったのか」「製品を作る上での困難をどう乗り越えたのか」「イノベーションを生み出せた理由は」など、良く知られている製品なのに、実はY社さまの社員でも当事者以外は知らないような開発秘話を、当事者から丁寧に取材してドキュメンタリータッチで描きました。そんな貴重な話が生で聞けることは、私たちにとっても非常に面白い経験でした。

言葉にしがたい「企業のDNA」を捉える

ヒアリングで分かった2つ目の特徴、それは、Y社さまの社員の方々は、意外にも「ロックな人」が多いということでした。

転職組が多く、製品開発についての意識が高いプロ集団なのです。個々の来歴を聞いてみると、上司と喧嘩してでも自分の納得がいくものを作ったという人、自分の首をかけて新製品をヒットさせたという人など、「自分が世の中にない製品を作る」という確固たる信念を持っている方が本当に多い。このような「俺が世の中を変えてやる」というロックンロール・スピリットが、Y社さまのDNAとして明確に感じられました。

実は、同じ物語を扱うにあたっても、このような世界観を踏まえて執筆や編集作業を行うのと、そうでないのとでは、全く反響が違います。

日頃仕事をしている中では当たり前すぎて気が付かないけれども、自然にいつもそこにある自らの色彩。それを、言葉で言われなくても、冊子のような目に見える形にして示されると、ご本人には、会社のDNAやその会社に所属している自分というものについての大きな気づきが生まれるのです。

言語化しにくいそういうところまで聞き出し、形にするのが、JBAのコンサルタントの仕事の凄く面白いところです。そして「これだ!」と掴んだDNAを逃さずに作り上げた刊行物がお客さまに喜ばれると、本当に達成感があります。

私は制作物を配布する場には可能な限り立ち会うのですが、Y社さまの社史を式典で配布した時には多くの社員の皆さまがすぐにその場で熱心に読み始める姿が見られました。そして「この会社にいてよかった」「こんなすごいモノ扱っていたんだな」というような声が聞こえてくると、もう、だからこの仕事はやめられない!という醍醐味を感じました。

社史制作の先にある「双方向」で創る未来

もちろん、周年イベントは社史を配って終わりではありません。

「未来」を描くために、上からの指示を受け身で待つのではなく、社員の皆に考えていって欲しいのだというのが本来の趣旨です。30年後の未来がどんな世の中になっていると良いか、その未来に自分個人はどんな関わり方をしていきたいかについて、社員のみなさま一人ひとりからの言葉を集めるイベントも行いました。

結果は上々、7割の社員の参画(※大きな会社の任意イベントとしては非常に高い率です)を得て、担当者さまからも「会社と社員の双方向で未来を考えていくという雰囲気が生まれたようだ」と言っていただけました。

それ以外に、「未来の会社」というテーマで社内作文コンクールも実施しましたし、これから経営を支えていく幹部候補のメンバーに対しては「経営層の未来研修」、若手社員に対しては「若手の未来研修」と称する座談会も展開し、それぞれ、未来に向けてどう人を育て会社の舵を切っていくのか、30年後の会社や世の中をどうしたいかを語り合ってもらいました。世代を超えた未来への気づきのきっかけにしていただけるよう、その内容は社員がだれでも見られるように社内イントラで公開しました。

社員のみなさんが社史を読み返すたびに、自分たちの製品への誇りを感じ、自分がこの会社に所属している意味を考えてくれたらと思います。そういう方々が、これからのY社さまの未来を作っていってくれるものと信じています。

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