株式会社wevnal ‐HQ‐導入事例
生産性・開発力向上のためには投資を惜しまない。採用良化・リテンションにも繋がった、「エンジニア福利厚生」 【株式会社wevnal 】
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完全自律型で、“まるで一人のエンジニア”のように作業をこなしてしまう「DevinAI」。2025年春、そんなDevinAIを開発し、世界が注目するスタートアップ CongnitionのCEO スコット氏とビジネス責任者のラッセル氏が来日しました。
4月21日には「DevinAI × Microsoft × wevnal が語るAIエージェント開発の最前線」と題し、ミートアップを開催。多くのエンジニアが一堂に会し、彼らの話に耳を傾けました。
この記事では、スコット氏が登壇したセクションについてレポート。スコット氏がAIエージェントの最前線をどのように見ているかをお伝えします。
DevinAIのチームは、2023年の終わりごろに活動を開始しました。
当時、僕たちが強く信じていたことの一つが“技術”です。まだいまのような生成AIの大規模モデルや衝撃的なブレイクスルーはありませんでしたが、生成AIの学習能力をさらに高めた新しいモデルが登場することで、大きな可能性が開けると信じていました。
強化学習(RL)に関する進展もまだこれからという時期でしたが、実際にその後、新しい能力を備えた生成AIのモデルは次々に登場しています。
もう一つ、僕たちが信じていたのは“プロダクトの形が変わる”ということです。それにより、いずれ仕事のやり方そのものが変わるだろうと考えていました。
いまはそれを「エージェント」と呼びますが、当時は概念すら明確ではありません。しかし僕たちは未来を見越して動き出し、アメリカで一軒家を借りて15人くらいで一緒に生活しながらプロジェクトに取り組み始めたのです。
AIコーディングやインターフェース設計、エージェントのループ構造など、いろいろなアイデアを出し合い、試作する日々。それはとても楽しい時間でした。最終的に10軒以上の家を借りながら「家を拠点にした開発生活」を繰り返して、少しずつアイデアを磨き、製品を形にしていきました。
プロジェクトとして始まったばかりの頃はリサーチ中心でしたが、僕たちは研究の突破口を探り、新しい技術的手法を模索してきました。そしてあるタイミングで実際のエンジニアリングの現場でも使えるプロダクトにできると確信し、研究フェーズから実用フェースへと徐々に移行していったのです。
こうしてDevinAIの実装・開発を本格化しました。現在ではチームを拡大し、体制はよりフォーマルになっています。途中のあるタイミングでは正式に法人化し、プロジェクトではなく「会社」として新たなスタートを切りました。
未来のソフトウェアエンジニアリングについて考える前に、その歴史をざっと振り返ってみましょう。
「ソフトウェアエンジニアリング」と呼ばれる最初の形は、非常に原始的なものでした。いまから80〜90年前、最初期のコンピュータは「ENIAC(エニアック)」と呼ばれ、アメリカ軍で使われていました。そこから技術は繰り返し進化してきたのです。
その後、1950年代にはセンサ(センサー)カイロが登場し、基本的なプログラミングが可能になります。論理回路を使って、簡単な命令を組むことができるようになりました。1960〜70年代にはCOBOLなどの言語が広まり、最近ではC、Java、Python、JavaScript、TypeScriptなどの言語が登場。Django、Flask、React、Cloudといったフレームワークが当たり前になりました。
このようにソフトウェアの見た目(フォームファクター)は時代ごとに何度も大きく変わってきましたが、根本にある考え方はずっと変わっていません。
ソフトウェアとは、コンピュータにやってほしいことを伝える手段。その本質は「こんなものをつくりたい」「こんなロジックにしたい」という意図をプログラミングという形でコンピュータに伝え、それをコンピュータが忠実に実行することです。
未来のソフトウェアエンジニアリングは、最終的に「自然な言葉で伝えるだけで、コンピュータがそれを構築してくれる」世界を実現しているはずです。
またAIツールにおける第一の波は、いわゆる「テキスト補完」や「コード補完」と呼ばれるものでした。一番有名なのはGitHub Copilotで、ほかにも同じカテゴリのツールはたくさんあります。
これらは「ここまで書いたコードに対して、次の1行を予測してくれる」という非常にシンプルなインターフェース。この分野にも改良版が登場してより複雑な保管も可能になり、いま僕たちが見ている「第二の波」につながります。
エンジニアが全ての判断を下し逐一命令を出すのではなく、AIに「やっておいて」と頼めば実行まで任せられるようになります。これこそがDevinAIが目指している方向であり、DevinAIとは最初の「自律型ソフトウェアエージェント」と言えます。
DevinAIは、人間のように自律的に必要な作業を進め、人間と同じツールを活用します。例えば人間のエンジニアはコードを書く以外に、下記のような様々なことをしますが、DevinAIもこれらを全て実行できます。
・ターミナルでコマンドを実行する
・CI/CDを回す
・Linterを使って構文チェックをする
・文字列をパースする
・Webアプリをローカルで実行する
・ドキュメントを読む
・ログを確認する
全てのステップを“自分の判断”で実行し、学び、改善していく。それがDevinAIにできることで、僕たちはいま、そうしたAIエージェントが指数関数的に進化していく過程に立ち会っているのです。
AIが対応できるタスクの「長さ」は70日ごとに倍増しているそうです。そうした進化の先で今後どんなことが可能になるのか、わかりやすい例を紹介しましょう。
例えば僕たちの日本向けAI紹介Webサイトを、自動で「日本語化」できたら素晴らしいですよね。DevinAIは、自分自身の中でこのWebサイトのシステム構成や主要なコンポーネント、各ページやJavaScriptの構成などを整理できます。
まずDevinAIに「英語のテキストが含まれている場所を全て探して」と指示を出します。するとDevinAIは全ファイルをスキャンし、あらゆる場所にある英語の文字列を探し出し、リストアップしてくれるのです。
次のステップで「このWebサイトを日本語対応できるようにして」と依頼すると、DevinAIはコードの構造全体を把握した上で、どの部分をどう修正する必要があるのかを考えて作業を実行します。
今回のローカライズタスクには、およそ30分〜1時間ほどかかりました。DevinAIは、ファイルの読み込みやスクリプトの調整、翻訳処理などを、すべてステップバイステップで実行したのです。
一度の出力で完璧でない場合は、DevinAIが自身のループ機構を使って不十分な部分を判断して再びタスクを実行します。最終的にDevinAIは、英語と日本語の両方を表示できる完全なWebサイトを構築し、PR(プルリクエスト)まで作成しました。
これが、いまの時代において「やりたいことをそのまま言語で伝えて、AIが実現してくれる」世界です。
ここでお伝えしたいのは、コードを書くという作業がこれほどまでに簡単で直感的になっているということ。僕は「自分が何をつくりたいか」を自然言語で説明するだけでそれを実現できる世界が近づいていることに、とてもワクワクしています。
最後に、ある日本のユーザーから届いた印象的なコメントを紹介しましょう。
「これからの時代は、“より優秀なエンジニア”を目指すのではなく、“最強のDevinマネージャー”になることを目指すべきだ」
つまりエンジニアリングのスキルだけを磨くのではなく、DevinAIのようなAIエージェントを使いこなす能力を磨くことこそが重要になるということです。
僕たちは様々な形のプログラミングについて語ってきましたが、その本質はずっと変わっていません。プログラミングの本質は、問題を理解すること、その問題に対して最適なソリューションを構築すること、自分が「何をつくりたいか」を深く考えることです。
そしてこれからの実装のあり方は、全く新しいものになるでしょう。それはAIという“自分の開発チーム”を持てる時代になるからです。そんな未来に僕たちは、とてもワクワクしています。
Q.DevinAIの性能を最大限に引き出すには、どのプログラミング言語が最適か?どんなソフトウェアアーキテクチャがDevinAIにとって最適なのか?
AIによるコーディングにおいて、大きな影響を与える要素は“その言語に関する学習データの量”だと思います。DevinAIはかなりマイナーな言語にも対応できますが、やはり利用できるデータは非常に限られます。
そのため将来的には、言語によって多少の違いが出てくるでしょう。例えばAIがコードの意味を正確に理解しやすくなるという点では、静的型付け言語(strongly typed languages)の方がAIとの相性はより良くなるはずです。
ただ現時点ではデータの豊富さが重要になるので、そういう意味ではPythonやJavaScriptのように非常に一般的な言語が、AIモデルにとって最も得意とする分野と言えるでしょう。
Q.DevinAIを導入したあとの世界がどうなるかという「ビジョン」や「イメージ」を教えてください。
全体的な見通しとしては、今後もっとたくさんのソフトウェアがつくられるようになるでしょう。しかし「本当に素晴らしいソフトウェア」をつくるには、ものすごく長い時間と労力が必要です。
例えば YouTube、Instagram、TikTokといった世界最高峰のプロダクトを思い浮かべてみてください。これらにはおそらく何億時間もの人間の労力が投じられています。
それにより実現しているのが以下の特長です。
・ダウンしない高い可用性
・非常に効率的なインフラ構成
・高度なアルゴリズムやUX
・数百人〜数千人規模のエンジニアリングチーム
もしあなたが使っている全てのプロダクトが、YouTubeレベルにつくり込まれていたら、どう感じるでしょうか? あるいはYouTube並に新しいプロダクトが次々と登場してきたらどうでしょう?
私はそういった未来が、AIエージェントとの協働によって実現すると考えています。
例えば、自分が使っているプロダクトに対して、単に「こうしたい」と口に出すだけで、「ここに新しいタブを追加しよう」「この情報をデータベースに保存しよう」「UXのフローをこう変えよう」――といった指示をAIが受け取り、その場で実装してくれる。そんな未来です。
Q.3年後、5年後といった未来に向けて、どういった仕事のあり方になっていくと考えていますか?
おそらく近いうちに「僕のエージェントがあなたのエージェントに連絡を取って、そのままディスカッションが全部進んでしまう」――そんな時代が来ると思います(笑)。
しかしそういった未来に至るまでには、いくつかの段階があるでしょう。
例えば、まず「エージェントが現実世界とどのようにインタラクトするか」という非常に実践的な課題をクリアする必要があります。仮想的な環境ではエージェント同士が話し合って全ての問題を解決できるかもしれませんが、現実の世界には様々な制約や複雑さがあります。
一歩目として、そういった「現実の困難さにどう対応するか」を学ばせることが実用的でしょう。その後、エージェント同士がコミュニケーションを取るためのチャネルを構築していくのが自然な流れだと思います。
その数ステップ先で、より複雑なエージェント間の連携やコミュニケーションシステムを構築していく流れになるのではないでしょうか。
Q.「AIが支援するプログラミングの時代(AI-assisted programming era)」において、どのようなコアスキルやマインドセットが最も重要だとお考えですか?
一般的に見てAIは、単調でくり返しの多い作業や機械的な部分を担当する傾向があります。一方で人間は、文脈を深く理解する創造的な作業や、より高度な意思決定を担います。
ここで面白いのは「何が単調で機械的なのか」「何が高度で判断は必要なことなのか」という境界線が、徐々に変化してきていることです。しかしながら、この大きな傾向はいまも変わっていないと感じています。
こうした現状を踏まえると、私たち人間、特にエンジニアにとって今後最も重要にあるスキルは、システム全体を俯瞰して考える力、そして「何を作りたいのか」「どのように解決したいのか」「具体的にどんなソリューションを実現したいのか」を深く考える力だと思います。
問題を発見して、どれに対して理想的な解決策を設計する能力が、今後最も大事なスキルになるのではないでしょうか。
*イベントレポート後編では、スコット氏・ラッセル氏に加えて、wevnal CTOの鈴木、エンジニア ウムトによるセッションの様子をお届けします。
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