「コミュニケーションをハックし、ワクワクするブランド体験を実現」をビジョンに掲げ、マルチプロダクトを展開するwevnal(ウェブナル)。現在、「BOTCHAN AI」や「BOTCHAN AICALL」など、生成AIを活用したプロダクト開発にも力を入れています。
現在、2つの生成AIプロダクトの事業責任者を務める森川智貴さんは、BOTCHAN AI立ち上げ当初からプロダクトの成長に伴走してきました。現在はBOTCHAN AICALLの展開にも力を入れる彼に、wevnalとしての生成AIとの向き合い方や生成AIを活用した先に目指す未来を語ってもらいました。
目次
- 「成果ファースト」で挑む、生成AIプロダクトの最前線
- 数あるAIプロダクトの中で、“wevnalである理由”をどうつくるか
- チャネル・時間・ナレッジの拡張で、コミュニケーションの可能性を拡大する
「成果ファースト」で挑む、生成AIプロダクトの最前線
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──まずは、現在の業務内容について教えてください。
現在はwevnalの中でBOTCHAN AI、BOTCHAN AICALLの2つのプロダクトの責任者をしています。比重としてはBOTCHAN AICALLが高く、事業計画や顧客インタビュー、開発マネジメントなど網羅的に関わっています。
また、社外では一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)の協議員にも就任しています。こちらでは生成AIに関する定期的な活動発表、地方中小企業の生成AIに関するお困りごとに対する講義・研修などを行っています。
──2018年から生成AIに取り組んできているwevnal。会社としては、どのように生成AIと向き合ってきたのでしょうか?
根底にあるのは、技術ファーストではなく「成果ファースト」です。
BOTCHAN AIであれば、AIを通して滑らかな接客ができ、人間と同じレベルもしくはそれ以上の接客体験を提供できる。加えて、24時間対応まで可能になっています。
だからこそエンドユーザーの日常的な行動様式を変えることなく、生成AIの技術をサービスに溶け込ませることができ、成果創出にもつながっています。
逆に言えば、ここまでできないと大きな社会変革は起こらない。事業を作っていくうえでの根底として、そんな考えがあります。
──どれだけ技術が素晴らしくても、成果としてインパクトを出せなくては意味がないと。新しく立ち上げたBOTCHAN AICALLはいかがでしょうか?
BOTCHAN AICALLはコールセンター市場に向けたプロダクトです。現在の市場規模は1兆2000億円もありますが、このほとんどは人件費で構成されています。人を介さないボイスボットの市場は88億円程度に留まっています。
つまり、1兆2000億円の中にテクノロジーの分野はたったの88億円しか参入できていないということなんです。ここに、変革の余地や市場の可能性を感じました。
また、今後2040年までに人口減少の影響でオペレーターの人手1100万人相当の不足が起こると予測されます。その結果、これまで当たり前につながっていた電話がつながらない状況に陥りやすくなったり、人手不足による人件費の高騰が起こる可能性が予測されます。
これらの課題に対して、即戦力かつ24時間対応可能なBOTCHAN AICALLが参入していくことには、社会的意義があるのではないかと考えているんです。
数あるAIプロダクトの中で、“wevnalである理由”をどうつくるか
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──生成AIを活用した事業展開を進めるうえで、wevnalが目指しているものは何なのでしょうか?
コミュニケーションをより滑らかにすることで、あらゆることの可能性を広げていくことだと考えています。
これは、wevnalが掲げるビジョン「コミュニケーションをハックし、ワクワクするブランド体験を実現」することにもつながりますね。たとえば、生成AIを活用したプロダクトによる接客を通して、「この商品、もう一つ欲しいな」「この組み合わせで買ってみたい」などと消費行動を変容させていくことが想像しやすいかもしれません。
人間によるコミュニケーションでは、24時間対応し続けることができなかったり、専門的な知識をインプットする時間が必要になったりといった理由から、物理的なリソースに制約があります。有限リソースだと思われていたコミュニケーション対応が、生成AIを活用することで無限に開放されていく。これが、可能性を広げていくことにつながるのではないでしょうか。
一方で、ただ生成AIの活用を推進するだけではいけないとも思っていて。生成AIを活用したプロダクト開発を行う企業が増えてきている中で、今後は「なぜ我々がやるのか」がより一層大事になってくるはずです。
──生成AIプロダクトも「人」の部分での独自性も必要になってくる。その中で現在意識して取り組まれていることはありますか?
前段として、これからは生成AIを活用できる人に仕事が集まる社会になっていくのではないかと考えています。生成AIを使いこなし仕事をする側と、生成AIによって仕事を淘汰されてしまう側への二極化が進むのではないかと。
だからこそ、組織全体で生成AI活用が当たり前の文化にしていきたいです。生成AIを使いこなすことができれば、仕事が効率化でき、ひいては事業を成長させるスピードは速くなっていく。企業全体の成長のためにも、生成AIをガンガン使っていける組織が理想だと考えています。
そうして生成AIを使いこなしたうえで、「人」の部分の独自性が求められてきます。
──どのような部分が人の独自性になり得そうでしょうか?
具体的には3つ。「問いを立てる力」「課題を決める力」「やり切る力」だと考えています。
たとえばChatGPTと会話するとき、ChatGPT側から会話を投げかけてくることはありませんよね。自分で問いを立て、答えを導き出す必要があります。そして、ChatGPTは立てた問いに対する課題はきれいに洗い出してくれますが、その中でどの課題に着目するかを決めることは人の役割として残されています。
また、これらの課題は一発で解決できることのほうが珍しいでしょう。だからこそ、生成AIを使いこなしながら課題解決までやり切る力はあるのか?が大切になってくるのです。
──生成AIを使いこなすことを前提に、人としての役割を磨いていく必要があるのですね。
そうですね。結局、「人」で独自性を出すためには「ストーリーテリング」が必要なのです。機能を提供する上で「なぜ今この課題を“私たちが”解決すべきなのか」が大切になる。たとえば、機能は同じでもカスタマーサポートの質が違ったり、PDCAの速度が早く効果が高かったり。
そう考えるとプロダクトを売っているのではなく、やはり「成果を売る」ことにつながってくるし、これからはさらにそういった時代になっていくと思います。
チャネル・時間・ナレッジの拡張で、コミュニケーションの可能性を拡大する
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──今後、生成AIとプロダクトの進化によって、どんなことが実現し得ると考えていますか?
私たちは「コミュニケーションハックカンパニー」として、生成AIを通してチャネルの拡張、時間の拡張、ナレッジの拡張の3つを実現していけると考えています。
まずは、チャネルの拡張。電話やチャットなどのあらゆるオンライン/オフラインのチャネルに展開していくことで、ユーザーが好むチャネルでの滑らかな接客体験が可能になります。
続いて、時間の拡張。本来は9:00〜17:00などで人間が対応していたコールセンターが、24時間365日いつでも対応可能になります。
最後が、ナレッジの拡張。人間がコールセンターの現場に出るまでは1~2ヶ月ほど研修を行うことが一般的です。その過程で膨大なマニュアルや知識をインプットしていきますが、生成AIのプロダクトを活用すれば、その必要がなくなります。
属人的だったナレッジが共有知となりますし、加えて、スタッフの教育も必要なくなるため時間の拡張にもつながると言えます。
人口減少が確実視され、労働人口が減少する社会において社会的意義が高い事業と言えるのではないでしょうか。
──では最後に、生成AIを活用したプロダクトを推進していくにあたっての今後の展望を教えてください。
まずは、これからの日本市場に生成AIをどう浸透させていくかを考えていかなければなりません。アメリカなどと比べ、日本はリスクを懸念する傾向が強いため、どう折り合いをつけて解決していくのかが問われています。
たとえば、AIが生成したデータに対して、人間の承認フローを入れるUI/UXを作ることも効果的ではないかと思います。AIの精度が100%ではないことを前提として、人間が介在するワークフローを組み込むことで、AI活用へのハードルを下げていけるのではないかと。
BOTCHAN AICALLとしては、アウトバウンド・インバウンド両方ともできる状態まで拡張することが今後の展望です。
私たちはコールセンターのベンダーなのではなく、あくまで「コミュニケーションハックカンパニー」です。世の中には、電話を好む市場もあれば、チャットが良いという市場もあります。だからこそチャネルの拡張を推進して、その時々に合うコミュニケーションの手法を提供していくこと。
加えて、コミュニケーションデータを統合してユーザーの人物像への解像度を高めていくことにも取り組んでいきたいです。それらを活用することで、マーケティングのあり方もアップデートしていく未来が作れるのではないかと考えています。
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取材協力:CASTER BIZ recruiting