2022年9月に18期目を迎えた株式会社バイタリフィ。
今回18期を迎えた新企画として、バイタリフィの過去、今、これからを語ってもらう社内インタビューを実施しました。
第二弾はバイタリフィアジアにてPMOを務める 加藤 彰則。現場目線でのバイタリフィの変化、これからのビジョンについてなどを聞いてまいりました。
是非ご一読ください。
Q:まず初めに加藤さんの普段の業務内容について教えてください。
私はバイタリフィアジアで開発責任者を務めています。全体の開発方針を決めたり、現場で何かあった時にフォローをしたり、何かトラブルが起きそうな案件があればそれを未然に防いだり、ということをメインの業務としています。現在バイタリフィアジアでは従業員数が220人ほど、40近くのプロジェクトを同時並行しています。各チームにPMOのメンバーを配置してそこから情報をキャッチアップし、要チェックのプロジェクトに関しては手厚くサポートしています。
社内には2つのサポートチームがあります。1つはCOEチームです。技術責任者とシニアエンジニアで構成されています。もう一つはPMOチームです。現在日本人6名とイギリス人1名の計7名のPMOとPMで構成されています。開発プロジェクトが多いため、いくつかのチームに分割されているのですが、PMOが各チームのプロジェクトに配置されてそれぞれのチームをサポートしている形です。
技術面に関してはCOEチームのメンバーが各開発チームやプロジェクトを横断して見ており、全体のテンプレート化や課題解決をメインとしています。PMOはプロジェクトマネジメントや顧客対応がメインですね。
お客様との窓口になる方はPMOですか?
お客様との窓口はBPM(ブリッジプロジェクトマネージャー)が担っています。BPMというのは日本語を話せるベトナム人PMがメインです。PMOはBPMのサポートという形で就くケースが多いですね。進捗の確認や情報のキャッチアップをしています。この情報のキャッチアップは非常に重きを置いている部分です。バイタリフィアジアは新しいことを試す企業カルチャーが強く、「改善」をキーワードに掲げているので「もっとスピードを上げるためには?」「もっとクオリティを上げるためには?」というのを常に追求しているんです。各案件でうまくいったことや、やってみて失敗したことなどの情報をPMOが拾い上げて全体に共有しています。そうすることで会社全体としてレベルアップできると思っているので、PMOはその点で非常に重要な役割をしています。
お客様とのコミュニケーションにおいて我々が重要視しているのは「フェアであること」です。クライアントと伴走してプロジェクトを進めていくために、コミュニケーションを円滑にして関係性をフェアに保つこともPMOの責務の一つとしています。
役割が細かく分かれているのですね。
そうですね。ベトナムにはジョブディスクリプションというものがあり、労働契約の中にそれぞれの責任範囲が細かく書かれているんです。アメリカとかに近いですね。ベトナムはアメリカほど強い線引きではないですが、契約上で責任範囲を決めて、それ以外の業務はやるべきではない、という文化が強いです。日本と比較すると職種の区分が細かい方だとは思います。
Q:バイタリフィを含めた今までの加藤さんの経歴について教えてください。
元々音楽が好きで、他のミュージシャンと交流する目的で自分でWebサイトを作っていました。趣味のWEBサイト作りを仕事にできるんじゃないか、と思ったタイミングで縁あってバイタリフィに入社しました。最初の肩書きはデザイナーでしたね。当時はDreamWeaverなどのソフトでHTMLを直接触らずWebサイトを作るのが一般的だったのですが、世の中の流れとしてHTMLやCSSでコーディングすることが段々ベーシックになっていきました。私も勉強しながらコーディングしたり、PHPなどでのプログラミングもやったりしていたのですが、その後GoogleMapの登場でJavaScriptが注目され始めたんですよね。その頃はJavaScriptにのめり込んで、仕事でも趣味でもJavaScriptを書いていました(笑)
2009年にバイタリフィアジアが誕生して以降、日本とベトナムで案件をどう対応するかの会議も兼ねてベトナムに行くことが何度かありました。その頃から今の技術責任者や副社長と一緒に開発を行っていくようになり、PMの立ち回りをすることが増えました。それから3年ほど経って、「ベトナムで働かないか?」という話が来て、「とりあえず行ってみよう」という気持ちで快諾しました。ただ最初に立ち上げた一つのプロジェクトがボロボロで…。成果も出ず、社員にも迷惑をかけて正直すごくきつかったんです。でも「このまま帰るわけにはいかない」と思って、そのままバイタリフィアジアに転籍する事を決めました。私の場合は「ベトナムに惚れ込んで…」とかいう理由ではなく、悔しさからベトナムで働く事を決めたのですが、それから早10年が経とうとしていますね(笑)当時はバックパック1つ持ってちょっと長めの出張の感覚でベトナムに来たのですが。
その頃はベトナム語も知らない状態でしたか?
ベトナム語どころか英語も話せなかったですね。ベトナムに来てから、イギリスの子供用の国語(英語)の教科書を使って勉強しました。現在会社では日本語と英語を半々で使っています。BPMの方は日本語が話せる方が多いので、彼らとは日本語で、エンジニアやバックオフィスとの会話や全社アナウンスでは英語を使っています。ベトナム語は買い物の時に使うくらいで日常のコミュニケーションとしては今もあまり使えるほど習得できていません。都市部の方たちが比較的英語慣れしているというのもありますね。
Q:18期目を迎えて、昔と比べて大きく変わったと感じる点はありますか?
バイタリフィは元々Web制作会社として立ち上がった会社ということもあり、初めからプロジェクトマネジメントの体制ができていたわけではありませんでした。ソフトウェア開発は本来、要件定義、基本設計、詳細設計、コーディング、単体テスト、機能テスト、結合テスト、受入テストという風にプロセスが決まっています。ただ当時はいわゆる下請けや超特急案件の案件も多く、短い期間でとにかく納品まで持っていく、ということがほとんどだったと思います。細かくプロジェクト計画を建てて開発を行うというよりは目の前にいくつもある案件をこなすのに必死でした。
初めのターニングポイントは2009年にバイタリフィアジアができたタイミングですね。今までは国内で開発を行っていたので、顧客や開発メンバーといつでも直接コミュニケーションを取れる環境だったのですが、ベトナムで開発するとなるとそうはいかなくて。当時は技術的な話はエンジニアと直接英語で話す場面も多くあり、Skypeなどを常時繋げていてもなかなかうまくいかなかったんです。そういった状況の改善を検討する中でアジャイル開発(※)なども勉強し始めて、開発プロセスの整理に力を入れ始めました。会社としても開発の標準化が進んでいきましたね。
あとは今の代表である櫻井社長が就任したことも一つのターニングポイントだったと思います。彼自身がもともとエンジニアなので、社員の大多数がエンジニアである会社としてのいろいろな社内の整備に力を入れることできました。その中でビジョンを明確に定義しなおし、バイタリフィアジアの開発の方向性を固めていきました。現在、もちろん業務システムなども対応していますが、元々がWeb制作から始まっている会社ということもあるので、コンシューマー向けにスピーディーに変化を加えていくプロダクトが得意だと思います。ここ5、6年で明確に定義してからはDevOps(※)やアジャイルでの開発をメインにしています。
未だに属人化してしまっている部分は少なからずあるので、標準化するために、ジョブディスクリプションの整理をしたり、社内ルールを整備したりというのを現在進行形で進めています。
※アジャイル:
プロジェクトの中で短い開発サイクルを回していきながら開発を行う手法。仕様変更に柔軟。
※DevOps:
Development(開発チーム)とOperations(運用チーム)をかけ合わせた造語。
開発と運用を一つのチームとなって目標に取り組み、推進していく開発モデル。
社内ルールはどのように共有していますか?
開発ルールはCOEが定めたものを全社にトレーニングしていて、いつでも確認できるように社内ポータルへも記載しています。コーディングルールやコードレビュー方法、設計や見積もりの方法、チケット(開発を分割する単位)のルールなどですね。実際の案件でのトラブルや改善した内容のアップデートも頻繁にされます。その他の業務に関するルールも明文化され、入社後の研修などで共有されています。
開発体制に関して変化はありましたか?
昔は、工程ごとに細かく区切って担当範囲を決めて体制を作っていました。今は世界中の案件がベトナムに集まってきています。アメリカやヨーロッパの錚々たる企業がベトナムに発注・投資しているような状態です。そういった企業ではこれまでよりも広範囲で高レベルな対応ができる開発者を求めることも多くあり、エンジニアのレベルも上がっています。加えて、ベトナムのローカル企業(ベトナム向けのベトナム事業会社)も強くなってきていて、エンジニアの給与水準も上がっています。ベトナムはGDPが毎年約7%上がっている国で、ここ10年で都市部の開発者の賃金水準も倍近くに上がっているんです。つまりコストが倍になるので、我々の価値も上げていかなくてはならない。そうなったときに下流工程の対応ばかりしていて決められたものを作るだけのチームやメンバーの価値を上げていくってすごく難しいんですよね。なので、メンバーのキャリアと会社の存続を考えたときに、我々はもっとプロダクトの成功に寄り添った開発ををやっていくべきだ、となったんです。
請負型で行うWaterfallとラボ型で行うDevOps・アジャイルなどの開発の大きな違いとしては成果物を最初に細かく決める必要があるかどうかです。請負は成果物に対する契約なので、仕様変更があった場合は逐一再見積もりが必要になります。反面、アジャイル式の開発では契約時点で細かく成果物を決めずに出来上がってきた成果物を触りながら仕様の検討をして改善をしていくことができます。
WEBやアプリの変化のスピードが年々上がっていくなかで、プロダクトがうまく行く=ビジネスが成長していくということなので、ビジネスの成長に合わせてその根幹を担うプロダクトも一緒にスピーディに成長させる必要があります。ラボ型の、DevOpsチームとしてお客様のチームを作ることで、日常的に仕様のブラッシュアップを行いながらプロダクトを開発し、リリースして終わりではなく一緒に改善を繰り返し行っていくことが必要であると考えています。
自社のプロダクトを成功させるためにもちろん内製化ができればいいのですが、世界的にソフトウェアエンジニアの採用はどんどん難しくなっていますし、実際は開発者を数名雇えばそれだけで開発ができるわけでなく採用したら評価制度も必要ですしマネジメントも必要です。成果の見えないプロジェクトのリソースを自社で確保するというのはなかなか難しいことです。そういったお客様のために「専属のチームを作る」というラボ型の開発体制がここ5年でメインになりましたね。
Q:変化の過程で失敗も多くありましたか?
過去には大きな失敗もありましたが、そこから学んだことも多いです。
例えば、ソフトウェア開発プロジェクトで一番わかりやすい失敗は納期遅延です。納期が遅延した原因を分析すると現場からは大きく分けて3つの理由が上がってきます。「仕様変更が多かった」「不具合が多かった」「そもそもスケジュールが短かった」です。しかし、この3点は全て根本的には関連していると思っています。どのプロダクトも使ってみて・出来上がったものを見てみて初めてわかることがたくさんあります。最初はこうだと思っていたけどやっぱりこっちの方がいいな、ということは絶対あるので、その場合仕様変更が必ず発生するんですよね。仕様変更が起きるとスケジュールを圧迫する、納期までに間に合わせようとした時に時間が足りずテストケースを作り込めずに不具合が発生してしまう、時間がなくて…というように結局「時間がない」ことが根本の原因であることが多いんです。しかしビジネスには必ず予算があるし、予算がある=時間が限られるということです。その限られた予算と時間の中でどうするか、という事を一番に考えなくてはいけないと思っています。
具体的に対策していることはありますか?
先述した通りうまくいかない一番の原因は結局いろいろな要因により時間が足りなくなることです。そのため「作る対象を減らす」という風にしています。一気に大きなものを開発するのではなく、開発する機能に優先順位をつけて段階的にリリースしていくように提案しています。
わかりやすい例でいうと、「Instagramと同じものを開発したい」という依頼があった場合に、現在のInstagramはタイムラインがあって、各自が写真や動画を1度に10枚までアップロードできて、ストーリーズにはリアクション機能やリプライ機能があって、メッセージ機能やリール、発見タブやショッピングタブがあってというように様々な機能が存在します。これらをすべて一気に作るのはすごく時間も費用もかかることです。開発対象が大きくなればそれだけ想定外の事が起きるリスクは増えます。そのためまず何をやりたいのか、何のためにInstagramと同様のアプリを作りたいのか、ということをお客様に聞きます。こういう目的で写真をシェアしたくて、特定の業界を盛り上げたくて、ゆくゆくはこうしていきたい、というように要望が出てきます。要望とターゲットを整理していくと、その目的であればまずはストーリーズの機能だけでいいですね、とか、1投稿あたり写真1枚だけでいいですね、というような提案が可能になります。
少し極端な例ではありますが、お客様としても膨大な予算をかけて大規模な失敗をするよりも、小さな成功と失敗を繰り返して改善しながらプロダクトを作っていったほうが結果的にいいものを作れると考えています。そうすることでマーケティングやUXデザイン、ビジネスプランなどの細かい部分にもフォーカスしやすくなるんです。もちろん案件によっては大きくリリースをしなくてはいけないこともあるので、そういった場合はレビューや管理の体制を厚くして行うようにしています。メインの考え方としてはDevOpsで、リリースと改善を繰り返す体制で提案させてもらうことが多いです。
お客さんから目的を聞き出して提案をしていくと言うのはバイタリフィアジアの強みですか?
そうですね。アウトソーシングの場合PMが受け身になってしまうケースも多いですが、バイタリフィアジアのBPMには「お客さんとディスカッションすること」をとにかく教育しています。お客様がプロダクトを作る目的やそのバックグラウンドを自分で説明できるくらい、ヒアリングしてお客様と話すように、と。“お客様のビジネスに寄り添って一緒に成長させていくためのチーム”という位置づけなのでその部分が何よりも大切なんですよね。「お客様のビジネスの成功が僕らの成功です」というのは社是にも書かれています。
会社の目指す方向性などがしっかり社員に共有されているように思えます。
ビジョンをすごく大事にしています。例えばリスクの高い案件が目の前にある、売上が足りないから取りたいがどうすべきか?というような迷いが生じる場面は少なからずあると思います。その際にビジョンがあれば判断できますよね。我々は「Delivering Happiness Through The Internet(インターネットを通じて幸せを届ける)」というビジョンを掲げています。そのプロジェクトを受けることでお客様やユーザーにHappinessを届けることが難しいこと、そしてメンバーが不幸になることはビジョンに反するので、するべきではない、というようにこういったビジネス上難しい判断をしなければならない場面でも強い判断基準ができるんです。
バイタリフィアジアではビジョンを含め、バリュー、ミッション、カルチャーの4つを大切にしているので、社員にもビジョンを基に仕事してもらえるように、入社した後にビジョンを細分化して説明するということも必ず行っています。
個人的に軸として持っていることはありますか?
ベトナムと日本の両方に対して還元したいという想いがあります。
私自身ベトナムで長く暮らしていて、ベトナムという国と日本という国を繋いでベトナムで日本の仕事をすることでご飯を食べています。そして、ベトナムに居場所を作ってもらっているので、その恩返しをしたいなと思っています。その一つがバイタリフィアジアで働くメンバーのキャリアを作ることです。バイタリフィアジアで働いたメンバーが転職をするとなった時(もちろん働き続けてほしいですけど)、「バイタリフィアジアで働いてたの?じゃあ大歓迎だよ!」と言ってもらえるようなレベルの会社にしたいと思っています。そのために彼ら自身のキャリアを形成できる、弊社や日系企業以外でもちゃんと評価される人材になれるような仕組みづくりや評価制度を社内でも整備しています。そして、結局それが良いメンバーを採用できる・長く働いてもらえる環境作りになっていると思っています。
また私自身海外に暮らしている身で、日本というブランドに少なからず助けられている部分があります。この先もベトナムや海外から日本が疎まれたり忘れられたりするような存在にはなってほしくないんですよね。日本のエンジニア不足に対してベトナムのエンジニアでフォローするということもそうですし、ベトナム側から日本に還元できる部分ももっとあると思っています。
Q:今後のビジョンや挑戦していきたいことなどはありますか?
バイタリフィアジアとして今期で150%成長を目指しています。現在世界中のインフレ+円安ということもあり、ベトナムで開発をすればとてもコストが安い!という状態ではすでにありません。以前にも増して価値を上げていく必要があると思っています。そのために今取り組んでいることの一つはプロダクトマーケティングの強化です。プロダクトを広める仕組みまで提案できるようになればお客様のビジネスにもっと寄り添えるのではないかと考えています。そのために社内でもマーケティング分野を強化し、併せて一緒に動いてくれるパートナーの開拓も行っていきたいと思っています。
また、UXデザインにも力を入れています。要件定義段階からお客様のビジネスモデルの部分までUXデザインの目線で提案していけるように、その部分に強いメンバーが提案などで動いています。そうすることでワンストップでの提案が可能になり、「0から一緒に考えましょう、リリース後の運用や改善も一緒にやっていきましょう」とお客様にとっても心強いパートナーになれるのではないかなと思います。
Q:最後に、読者に一言お願いします!
ベトナムオフショアが広まった背景として「日本より単価が安い」というのが大きかったことは事実ですが、今はそのメリットはどんどん薄れてきていると思っています。我々バイタリフィアジアは、「安いから」「ベトナムに発注したいから」という理由だけでの依頼対象ではなく、「一緒にプロダクトを作りたいパートナー」と思っていただけるような会社にしたいと考えています。お客様のビジネスに寄り添って、プロダクトを成功させるための提案をしていきます。少しずつ目標を立てて改善を加えて成長させていくことに関してはコミットできますので是非ご相談ください。