こんにちは。八百屋のベジクルでプロダクトマネージャー(PdM)をしている河口です。
前回のnote(2025年秋頃)から少し時間が空いてしまいましたが、この半年間、ベジクルの開発現場は驚くほどのスピードで進化を続けています。
先日、1月中旬にベトナムの開発チームを訪問してきました。2月の旧正月(テト)を前に、現地での「イヤーエンドパーティー」に招かれたのですが、そこで改めて感じた「オフショアという壁を溶かし、ワンチームになること」の本質について、今の熱量のままに書き残しておこうと思います。
ダナンのハン市場
1. 「外注」から「内製」へ。体制の大きなシフト
僕が入社した当初、ベジクルの開発は外部パートナーである kozocom社 にPM機能をほぼお任せしている状態でした 。そこからこの半年で、情報の透明化と内製化に向けた動きを一気に加速させました 。
- PMの内製化:僕一人の体制から、2025年12月には待望の新しいPMメンバーも加わり、ベジクル主導で開発をリードできる体制を整え始めています。
- バックログの統合: 以前は二重管理になっていたバックログを一つに統合し、僕が直接ベトナムチームとSlackで密にやり取りする形に切り替えました 。
- 2週間スプリントの定着: 2週間単位でスプリントを回し、計画の解像度を向上。社内からの「この機能、いつ出るの?」という問いに、自信を持って答えられるリズムができました
現在の体制は、僕たちベジクル側のPM2名と、kozocom側のサポートPM1.8名、そしてベトナム側のエンジニア・QA合わせて約9.5名という構成です。
プロジェクトメンバー
2. 外部設計を「要件定義完了」のラインに置く
オフショア開発で最も難しいのは、「仕様の認識齟齬」をどう防ぐかです。
僕たちのチームでは、日本側で「外部設計レベル」まで詳細化し、チケットを読めば「何を作るか」「どう処理すべきか」が誰でもわかる状態にすることを、プロジェクトにおける「要件定義完了」と定義しています。
2週間に一度のプランニングでは、この詳細化したチケットをベースに議論します。
要件定義中から計画、開発、テスト、リリース前とベトナムと1つのバックログで管理
また今回の体制変更に伴い、新たに導入したのがストーリーポイント(SP)による見積もりです 。
これまでは各機能の規模感がブラックボックスでしたが、SPを付けてもらうことで、チームのベロシティ(開発速度)が可視化されました 。これにより、「次のスプリントでどこまで捌けるか」が予測でき、無理のない、かつ精度の高い計画が立てられるようになっています 。
さらに大きな収穫は、技術的なリスクや負債の可視化です 。 僕の肌感覚よりSPが極端に高いチケットがある場合、そこには「裏側のコードが複雑に結合している」「ここを触ると既存機能に大きな影響が出る」といった構造上の課題が隠れています 。数字として現れることで、「今は機能開発を優先すべきか、それとも将来のために技術投資をしてリファクタリングすべきか」を、ビジネスと技術の両面から対等に議論できるようになりました 。
3. Miroと映像で繋ぐ。現場の解像度を揃える
今回のベトナム出張で、どうしてもやりたかったことがありました。それは、「自分たちが作っているプロダクトが、どんな現場で、誰を支えているのか」を開発チームに肌で感じてもらうことです。
まず、複雑な業務フローを Miro で改めて整理し、ビジネスロジックの全容を丁寧に説明しました 。 その上で、実際の現場の動画を共有しました。
業務フローをmiroで整理
- 現場スタッフが、猛烈なスピードでFAXの伝票をシステムに打ち込む姿
- 各飲食店からの備考欄での要望(例:アボガド柔らかめ)などを1つ1つ確認しながら手入力で伝票を修正する様子
- 野菜をピッキングするためのカンバン(ピッキングリスト)を高速で確認しながらホッチキス度目する様子
現場の様子
「君たちが作ったシステムのボタン一つが、この現場の受注を止めてしまうかもしれない。でも、君たちの改善一つが、この人たちの作業を何時間も短縮できるんだ」
そう伝えることで、開発チームは単なる「チケットをこなすエンジニア」から、「現場の痛みを知るパートナー」へと進化したと感じています 。
4. 技術への投資。PLと目指す「攻め」の基幹システム刷新
今回の出張では、ベトナム側のプロジェクトリーダー(PL)と、今後の技術投資について深い議論を交わしました 。
PLが整理してくれた技術負債ディスカッション資料
ベジクルは現在、4月の基幹システム刷新という大きな山場を控えています 。これまではどうしても機能開発が優先されがちでしたが、今後の長期的な成長のためには、技術的負債の解消や品質向上への投資が不可欠です 。
そこでPLには、「ビジネス側の要求に対して、技術的な観点から対等に意見を戦わせてほしい。CTOのような視点で、必要な技術投資をどんどん提案してほしい」というスタンスを改めて伝え、目線を合わせました 。
「言われたものを作る」関係から、「共にプロダクトの未来を創る」関係へ。技術的なリスクを恐れずに共有し、それを解決するためのリソースを割く。この信頼関係こそが、これからのベジクルの武器になります 。
ミスが許されない基幹業務を支えるため、今はビジネスインパクトの大きいケースに絞ったテスト整備など、品質へのさらなる投資を進めています。
結びに
この半年で、ベトナムとの距離は心理的にも物理的にもぐっと縮まりました。 LLMの進化により、もはや言語の壁はほとんどありません。残ったのは、「何のために、誰のために作るのか」という意志の共有だけです 。
「八百屋×テクノロジー」の挑戦は、ここからが本番です。この最強のワンチームで、アナログな青果流通の世界を、もっともっと面白い場所に変えていこうと思います 。
kozocom社のPROJECT OF THE YEARに選出!