「一人前のデザイニストになるとはこういうことなんだ!」を届けたい 駆け出しクリエイター「佐伯」「遠田」「小嶋」の奮闘レポート!一人前のデザイニストになることを目指し、前に突き進む過程をお届けする企画「デザイニスト道場」が始動!!
クリエイターの指南書とも言えるアンティー・ファクトリーの理念ブックを中心に据え、業界の最前線で活躍している先輩や同僚たちの門をたたいていきます。
理念ブックをより深く理解するためのサポート教材として、マネージャー陣に推薦図書も聞いて回ります。
時には先輩を突撃、時には同期や後輩と切磋琢磨しながら、道場で体験できたことを自分なりの理解におとし、理念ブックが指南してくれている内容とリンクさせながら、全ての方に届く言葉でお伝えしていきます。
私たちのリアルな体験を通して「一人前のデザイニストになるとはこういうことなんだ!」を指し示し、届けられたらと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
たのもう!!第二の門・サトダイさん編
前回は、「第一の門・水野さん編」をお届けしました。 前回の記事はこちらから
今回突撃するのは、アートディレクターの「サトダイさん」こと「佐藤 大介さん」。デザイングループの職能部長として、アンティーのクリエイティブを中心から支えてくれています。
■ サトダイ さんの紹介 【名前】佐藤 大介 【所属】アンティー・ファクトリー 東京オフィス デザイングループ 【役職】職能部長 【職能】アートディレクター
サトダイさんが推薦する図書とは……!? 早速、突撃していきたいと思います!
■ 推薦図書の紹介 最高のクリエイティブを生み出す日々の研鑽 一流のものづくりをする人が持つマインドとは? ● 推薦図書(1)「デザインのデザイン 原 研哉 (著)」
デザインとは一体何なのか? 「技術」や「スタイリング」だけではなく、「ものの本質」を捉える!!
日本デザインセンター 原研哉氏が、「デザインとは何か」に対して深く踏み込んで語った一冊です。
この本が出版された2000年代はじめからは社会情勢もいろいろ変化しているため内容の差分を補いながら読み進める必要はありますが、デザインを「技術」や「スタイリング」として見るのではなく「物事の本質をつかむ感性と洞察力」と定義するなど、内容には普遍的な部分も多くさまざまな気づきが得られると思います。
産業革命から現在に至るデザインの潮流からはじまり「デザインとは何か」への洞察、同氏が携わったプロジェクトをケーススタディとした具体的な「思考」「プロセス」なども豊富に紹介されているため、デザイナーに限らず幅広い方へおすすめできる本です。
アンティーの理念ブックにあるデザインを広義に捉えた言葉「素晴らしいデザインとは目に見えないものである」とも通ずるところがあり、「デザイニスト」に対する理解がより深まるかと思います。
● 推薦図書(2)「感動をつくれますか 久石 譲 (著)」
プロとして高い意識が求められるクリエイティブな仕事 感性に頼らず一定の生産物を生み出し続け、どう感動を送り届けることができるかが勝負!!
日本を代表する音楽家 久石譲氏が、「感性」と「仕事」について語った一冊です。
「クリエイティビティが必要とされる仕事はプロとして高い意識を持って行うべきこと。感情や気分、やる気に左右されてはならない。」
「プロに求められるのは、どんなときにも一定の生産物を生み出し続ける力。その中でどう感動を送り届けて行けるかが勝負。」
……など、携わる分野は違えど制作のプロである私たちにとっても大切なことが語られています。
「日々の蓄積やインプットを欠かさず、その上でアイデアが閃くまでひたすらに悩み考え抜く。この閃きの瞬間がまた素晴らしい。」という思いなどは、ものづくりに携わる方にとって強く共感できる部分ではないでしょうか。
アンティーの理念ブックにある「私たちは、常に努力し、知的美的デザインの提供で社会に貢献します」に繋がるヒントを得たような気がします。
● 推薦図書(3)「アニメーションの色職人 柴口 育子, 保田 道世 (著)」
ジブリアニメを「色」で支えた職人から学ぶ!! 情熱・強いこだわりを持って難題に立ち向かい、懸命に仕事と向き合う姿勢
スタジオジブリの「色彩設計」職人としてほぼ全ての劇場用作品に携わり、日本のアニメーション分野で「色彩設計」の草分け的な存在となった保田道世氏の35年にわたる職人人生を綴った一冊です。
アニメーションにおける色彩設計の仕事では「繊細な色の違いを認識する美的感覚」と「見た印象を再現するクリエイティブ的なセンス」に加えて、「監督の考えを理解して適切な色彩の組み合わせに置き換える力」が必要だそうです。色彩設計次第で作品の印象や演出の意味がががらりと変わってしまうという意味で、とんでもなく責任の大きな仕事といえそうです。
この本からは、同氏が「色彩設計」の世界に入り切り拓いて行く様子や、自身の仕事への強いこだわりが伝わってきます。
時代背景は今と大きく異なりますが、より良いアウトプットを生み出すために職人としてのプライドを持つことや、ときに泥臭く懸命に仕事と向き合うことも大切ということに改めて気づかされました。
● 推薦図書(4)「ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法 エイミー・ワラス エド・キャットムル (著), 石原 薫 (翻訳)」
徹底的な議論で良いものをつくり上げる!! ピクサーに学ぶ、組織として築くべき仕組みや文化
ピクサーの創設者 エド・キャットムル氏が「クリエイティブ論」「マネジメント哲学」について語った一冊です。
この本では、映画制作におけるピクサー流の「アイデアの育て方」や「創造的な組織のつくり方」を垣間見ることができます。
同社には「Story is King(全ては物語を伝えるため)」という理念があり、「ストーリーの品質や個性を磨き上げるためには、徹底的な議論が欠かせない。」という考えのもと、「社員同士が自由に意見交換できる仕組み」と「失敗を重要視せず早めに顕在化し改善に重きをおく文化」をフレームワーク化しているそうです。
加えて「多様な人材の受け入れ」や「創造性を発揮できるチームづくり」など、クリエイティブを最大化していくための組織づくりやチームビルディングにまつわる話題では、同じようにチームプレーで仕事をしている私自身の課題ともリンクする部分が多くありました。
会社やグループがよりよい文化を築ける提言ができるよう、私も目指していきたいです。
■ インタビュー
サトダイさん、推薦図書をご紹介いただきありがとうございます! ここからは、私たちからいろいろ伺いたいと思います!!
佐伯・遠田・小嶋 今回推薦していただいた本は、ジブリやピクサーなどのアニメーション映画にまつわるものが多くありました。今はWEBデザインをメインの仕事とするサトダイさんですが、元々は、アニメーションに関心があったのでしょうか?
サトダイさん 実は、学生時代に3DCGの仕事に憧れて勉強していました。
学生時代に3DCGが流行し始めた ファミコンからプレステへ、ポリゴンを使った機種が出始めた頃だった 当時はリアルな表現に感動し、3DCGの仕事に憧れた ピクサー映画は元々好き トイストーリーをきっかけに流行り始める前から短編アニメーションを見ていた ピクサーはスタジオであると同時に3Dソフトウェアの会社 ピクサーを通してソフトウェアやプログラミングなどの勉強をしていた
佐伯・遠田・小嶋 3DCGの勉強をされていたとは知らなかったです! 今の仕事と少し分野は違いますが、クリエイターとして繋がる部分も多いと思います。
推薦図書と事前アンケートから、サトダイさんが、教科書的にただ「何をつくるのか?」を考えるだけでなく、「ものづくりとどのように向き合うか?」をとても大切にされていることが伝わりました。
特に、推薦図書(4)「ピクサー流 創造するちから」で語られている「制作のプロセスの中で模索を繰り返すことによって、高品質なクリエイティブを生み出す」に繋がっていると感じました。また、アンティーの理念ブックにある「守破離」と通ずる部分も感じました。
そんなサトダイさんが、特に大切にしていること、意識して行動していることは何でしょうか?
サトダイさん ハイレベルな結果を出し続けるためには、「感性に頼らず」「視野を広く持つ」ことが大切。 そのためにも、「先入観をなくし」「積極的に新しいものに触れる」ようにしています。
(1)継続した努力によって、自分の中に常に最良の拠り所を持っておく
久石譲さんも「ものづくりは感性に頼ってはならない」「ハイレベルな結果を出し続けるためには、日々のインプットを習慣化することが大切」と仰っている 人の心を動かす仕事を行う人は、継続した努力によって、自分の中に常に最良の拠り所を持っておくべき
(2)課題を捉え最適解に導く 自身が「心から良い」と思えるものをつくる
発注者であるクライアントやユーザーのニーズは絶対に無視できない まず、しっかりと受け止める だからと言ってただ迎合するのは違う 課題を顕在化して、実現方法を探り、最適解へと導いていくことが重要 同時に、自身が「心から良い」と思えるものをつくることが大事
(3)先入観をなくし、積極的に新しいものに触れる
クリエイティブ(本、映画、展覧会など)に触れる際、好き嫌いで判断せず、いろいろ見るようにしている 大人になると、昔のものの方が良いというような先入観が増えてくるが、意識してこれを排除し、「今流行っているもの」「若い世代が良いと思っているもの」に、積極的に触れるようにしている いろいろなものに触れることで、「何が良いと思われるのか?」この感覚が養われてくる
佐伯・遠田・小嶋 確かに、ついつい自分が好きなものに偏ってしまいがちですが、それだけで判断せず、常に新しいものをインプットしていくことは、あらゆる職能にとって大切なことだと思います。
サトダイさんのこの考え方は、マネージャーとして、アートディレクターとして、普段から若手デザイナーに伝えていることなのでしょうか?
サトダイさん デザイングループのスタッフには、日頃からいろいろなものを見た方が良いと伝えていますが、伝える難しさも感じています(世代による感覚の違いから)。
この背景もあり、デザイングループの定例ミーティングでは、様々な視点からテーマを掲げ、意見を交わし合う取り組みを行っています。
▼具体的な内容
グループの定例ミーティングで意見を交わし合う取り組みを行っている
テーマを掲げ、3人で構成されるチームに分かれて、チーム内で議論し、意見をまとめ、チーム毎に発表し合う 最近では「AIを業務に取り入れる方法」というテーマに取り組んでいる 個性あるスタッフが増えてきているので、それぞれの強みを発揮できる場にもなってきている
▼グループのメンバーに伝えていること
(1)いろいろなものを見て「良い悪い」を判断できる力を身につける
良いものをつくるには、技術やスキルを磨くと同時にデザインの表層だけでなく、本質を見極めて「良い悪い」を判断できる力を身につけていかなくてはならない そのためにも良いものをたくさん見ておくことが重要
(2)役割にとらわれない
時代の変化とともに、デザイナーの仕事の領域も広がってきている デザインをするからと言って、デザインのことだけを考えていれば良いわけではない 表層のデザインだけでなく、デザインで社会を創造するためにはどうすべきかを考える必要がある 時には職能を超えて意見を交わし合うことも大切
佐伯・遠田・小嶋 職能を超えて意見を交わし合うというのは私たちも大切ではないかと感じています。
デザインだからと言ってデザイナーだけでつくるのではなく、あらゆる職能の視点や意見を取り入れることによって、より良いアウトプットに繋がっていくのだと思います。
このような意見を交わし合う場をつくるにはどう働きかけていくと良いでしょうか?
サトダイさん 意見を交わし合える仕組みを作っていくことが必要だと思っています。 若手もどんどん発言して欲しい。発言しづらいのであれば、その環境を変えていかなくてはならない。
(1)ピクサーのクオリティの高さを支えている、客観的な意見を積極的に吸い上げる文化
ピクサーには、アウトプットに対して、制作に関わっていない人たちの意見を積極的に吸い上げる文化がある 広い視野に立ってものづくりに取り組む流れが仕組化されている この仕組みが、ピクサーのクオリティの高さに繋がっている
(2)意見を交わし合う文化を築くには?
ルーティーン化して、制作の流れに組み込んでいくことができれば、若手も意見しやすくなるかもしれない 特に、UI/UXデザインは、つくる過程でいろいろな人の意見を吸い上げられる方が良い デザイナーだけで考え、仕上げるのは、ある意味無責任とも言える 現実的な課題はあるものの、より良いクリエイティブを生み出すためにも今後こういう機会を増やしていきたい
佐伯・遠田・小嶋 より良い制作物をつくり上げるためには、技術だけでなく、そこまでの過程でどう向き合っていくかということが大切だということが良くわかりました。
サトダイさん、ありがとうございました!
■ 本日の学び!! ✓先入観を持たずに新しいものに触れ、良いものを見極める力を身につけるべし 感性に頼らず、常にクオリティの高いものをアウトプットできるようになる 表層をつくるスキルだけではなく、本質を見極め最適解に導く力を身につけられるようになる そのためにも、自分の感性、好き嫌いで判断せず、いろいろなものを見る 映画や本なども同じものばかり見ず、これまで触れてこなかったものにも手を出してみる そして、「今どのようなものが、どのような世代で流行っているのか?」などトレンドを捉える いろいろなものを見ることを通して、つくったものに対して良い悪いを判断する力も身につく ✓いろいろな人の意見を取り入れて模索を繰り返すことで、最高のクリエイティブを生み出すことができる いろいろな個性を持った人たちの意見を取り入れていくことによって、さらに良いアウトプットに繋がる 自分の役割だけにとらわれず、時には職能を超えて意見を交わせると良い 意見を言い合える環境や仕組みから整えていく必要がある
今回のインタビューを通じてより良いものをつくるために個人でできること、チームで目指すべきところが見えてきました。
サトダイさん、ありがとうございました!
次回は、また新たなマネージャーに突撃します。お楽しみに!!
記事作成: 佐伯真琴
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