熱海湾を望む豊かな緑に囲まれた地に開業したSOKI ATAMI。
その土地の自然や風土、素材がゆっくりとつくりだす豊かな時間を感じ、飾らずに、あるがままに過ごしていただけるような、「素の器」としての宿をつくりたい。
そんな宿を目指すSOKI ATAMIでは当初から、熱海や静岡といった地域のものを織り込んだ宿づくりをしていきたい、と考えていました。
SOKI ATAMIを構成する素材を探すなかで出会ったうちのひとつが、日本の三大銘石として知られる「本小松石」。熱海からほど近い、真鶴町というところでのみ採れる上質な石で、かつては江戸城の築城の際にも使われていました。
▲2020年夏、採石場に足を運んだプロジェクトメンバー
本小松石は時間の経過とともに味わい深い錆色へ変化していきます。それでいて長い年月を経ても、機能として劣化しない。「素の器」としてのSOKI ATAMI にぴったりな素材だと直感しました。(プロジェクトメンバー 高橋良至)
高橋をはじめとしたメンバーはそれから何度も真鶴へ足を運び、現地の石屋さんである竹林石材店さんと相談を重ねました。昔ながらの手仕事や技法を大切にされる竹林石材店さんは、採掘から加工、施工まで一気通貫で手掛けており、SOKI ATAMIでは外構サインや景石、またスイートルームの石テーブルでもご協力をいただくことになりました。
SOKI ATAMIでのお仕事をご一緒させていただくなか、メンバーは、石材業界が直面する課題を知ることになります。
「真鶴は、石によって発展していったと言っても過言ではない「石のまち」。しかし現在は全国的にも石材業界は縮小していて、自分たちも例外ではない。」
竹林石材店さんから聞いたのは、そんなお話でした。
長いときをかけて自然の力によってつくられた石。それを掘り出し、生活の中で役立てる技と知恵。そうした伝統を絶やさず、未来へ受け継いでいくために、何か自分たちにできることはないだろうか?
「SOKI ATAMIでその魅力を伝えることはもちろん、それにとどまらず、より多くの方に石の魅力を届け、紡がれてきた伝統を守るためのお手伝いが少しでもできたら。」
そんな思いで竹林石材店さんとともに、石材を活用したプロダクト開発から、それらをまとめたPR冊子制作、そして展示会への出展サポートまでご一緒させていただくことなりました。
▲竹林石材店さんオリジナルの手洗い、洗面ボウル(左)と、建築金物メーカーさんとの協業で開発した様々なタイプのドアハンドル(右)
▲PR冊子では、本小松石の歴史的背景から納品事例までをまとめて発信
▲ギフトショーでのブース設計をお手伝い
とてもお世話になった石材店さんであり、何より僕自身がその魅力にどんどん惹き込まれていった本小松石。それを伝えていくことで、業界への恩返しにつなげられれば嬉しいです。これからも、各地に散らばる伝統や技、そしてそれに関わる人たちの想いを、いいかたちで未来にまで繋いでいくことに取り組んでいきたいです。(高橋)
今回、熱海に温泉宿をつくることにならなければ、生まれなかったかもしれないこの出会いはご縁そのもの。今後も各地域に受け継がれてきた文化や伝統を繋いでいくために、少しでも協力できればと思います。
写真は竹林石材店のみなさん。今後インスタグラムでも情報を発信していきます。
今後の石材プロジェクトにもご期待ください。