昨年インディバルがスタートした、日本語が苦手な外国人留学生でも読める多言語アルバイト情報サイト『ニホンdeバイト』。2017年1月の大型リリースにより、外国人留学生に特化した求人情報の提供を開始いたしました。スタートから一ヶ月にして、既にかなりの反響を得た”特化ターゲット層に向けた求人サービス”を指揮したのは、これが初めてのプロジェクトマネージャー職というK氏。
現在の留学生をとりまく環境から、サービスの開発秘話、また将来の展望などを語ってもらいました。
「困ったらこのサイトを見ればすべて解決できる」働く留学生のポータルサイトを目指して
『ニホンdeバイト』とはどんなサービスなのでしょうか。
一言で言うと、日本に住んでいる留学生に対してアルバイト・パートの求人情報を提供するサービスです。まず、『”働く”を通じて世界と日本をつなげる』というコンセプトからスタートしています。
単に求人情報が載っているだけではなく、初めてアルバイトする人でも、「どうやって探したら良いんだっけ?」「困った、どうしたらいいんだろう」といった悩みなどを解決できるようなサービスを目指したので、求人情報だけではなく『お役立ち記事』―――いわゆる記事コンテンツをもったサービスになっています。これは、日本でアルバイトを始めようとしている時、または働いている時に「困ったらこのサイトを見ればすべて解決できる」という、ポータルサイトのような形をイメージして構成されています。
留学生に的を絞ったのは何故ですか?
きっかけとなったのは企業様の声です。
人手が足りない、普通に募集をかけても人が集まらない、という悩みがたくさん寄せられていました。加えてその頃、『爆買い』という単語が流行語になるほど訪日外国人の数が増え、少ない人員の中で海外の方の対応もしなくてはならない。かたや、留学生は右肩上がりに増えている。
そこで100人以上の留学生に対してアンケートやインタビューを行ったのですが、
「日本に来てアルバイトしたいと思っても、どうやって仕事を探せばいいかわからない」
「求人を見ても、そこで自分が働けるのかどうか自信がない」という声が多く聞こえてきました。企業にとってもメリットがあるし、留学生に対してもアルバイト探しのサポートができる。
そこで、この2つを結びつける『ニホンdeバイト』プロジェクトが発足したわけです。
留学生の悩みをもとに設計したから、企業と留学生求職者の高いマッチングを提供できる
『ニホンdeバイト』の強みはどんなところにありますか。
『シフトワークス』という総合アルバイトサイトをベースにしているので、現在(2017年1月時点)留学生をターゲットにした求人サービスの中では圧倒的に、扱っている求人数が多いところです。
そのため『ニホンdeバイト』を利用する求職者は、留学生を歓迎する多くの募集を見ることができる、たくさんバラエティがある中からアルバイトを探し、選ぶことができます。企業側にとっても、流入数が多く、応募も集まりやすいというメリットがあります。
留学生に人気の職種などはありますか?
まずはオフィスワークです。
留学生の方は「将来的に日本で就職したい」と考えることが多く、前段階で「会社で働いてみたい」という思いが強いようです。しかし実際に募集している企業はまだ少なく、求職者の目に留まるチャンスもなかなか無い。そのため、『ニホンdeバイト』でオフィスワークのアルバイト募集が掲載されると、応募が殺到します。飲食系、特にキッチンのような、あまり日本語が得意ではなくても働けるところも人気がありますね。
『ニホンdeバイト』の特徴のひとつに『日本語レベル』の表示がありますが、これを設定したのは何故ですか。
アンケートやインタビューで拾った、留学生の実際の悩みから生まれています。
書類審査はもちろんのこと、普通に電話で「応募したい」と伝えても、「あなたのレベルでは無理」と言われる門前払いが少なくないそうです。人によっては、何十件応募してもそのように断られる。その人の資質や、業務に対する向き不向き、また仕事への熱意などを伝える前に、そんな短いコミュニケーションで断られてしまうのは、とても不幸なことだと思いました。企業側も、欲しいレベルの人を表明し、的確に採用できるほうが人事の手間も減りますよね。
そういった背景があり、ニホンdeバイトでは独自の『日本語レベル』を設けました。
『日本語能力試験』というオフィシャルの基準もあるのですが、これは読み書きも含めた試験となっています。もちろんそういった能力も必要ではありますが、アルバイトをする上でまず必要なのは、一緒に働く同僚や、お客さんと交わすコミュニケーションの能力です。そのため、アルバイト求人には一般とは異なる指標があったほうが良いと考え、ニホンdeバイトの『日本語レベル』は、もっとわかりやすく、会話中心の基準となっています。
この『日本語レベル』をはじめとした、留学生の声に沿った設計により、ニホンdeバイトは企業と留学生求職者の高いマッチングを提供しています。
雇用する企業からの反応はいかがですか?
1月からのスタートなのでまだ数は少ないですが、既に採用に至ってお話を聞けているケースが数社あります。うち一件は、『日本語レベル:初級』の、ややカタコト気味な求職者を採用いただいた企業様です。お客様との接客業務が発生するにも関わらず採用頂いた理由をお伺いしたところ、「求めている日本語レベルよりは少し低かったのだけれど、真面目に働いてくれそうだったから」ということでした。実際、集まった応募の『意気込みコメント』を見ていると、七割以上の応募者が志望動機や意気込みをしっかり記入してくれている傾向があります。皆さん、本当に真面目に働きたいという気持ちがあるんだな、ということが伝わってきますよね。それが企業側にも伝わって、高い採用率が出ているのかなと思いました。
ちなみに、一般的な求人サイトで応募者が志望動機を記入している率は、だいたい20%~30%程度です。動機の項目は”任意項目”としてしまって応募者側の手間を減らそう、という昨今のサイト風潮もありますが、それを踏まえてもニホンdeバイトの応募者の熱意は大変アツいと思います!
サービスを作る上で他に気をつけたことなどはありますか?
応募フォームをはじめ、サイト全体の構成やデザインをかなりシンプルなものにしています。色や飾りはあまり使わず、必要な情報”だけ”あればいい、それがわかりやすく表示されている、ということを重視しています。色々な国の方が使うので、イメージ的なものやアイコンなどにはなるべく依存せず、情報を過不足なく伝えられるように設計しました。
「当たり前」が当たり前じゃない。”わからない”ということがわかってきた今
ニホンdeバイトをスタートして一ヶ月ほどたちますが、現在の手ごたえなどはいかがでしょうか。
想定以上に応募が集まっているということに、まず驚きました。それだけ「アルバイトを探したい」と困っている留学生が多いということになり、彼らの手助けになっているというのが嬉しいです。今後はもっと求人案件数を増やして、採用者の数もどんどん増やしていければと思っています。
かつ、これだけの規模で企業様に賛同していただいている留学生求人サービスもまだ少ないので、留学生の門戸を広げることができている、マーケットを拡大することができている実感もあります。
逆に、苦労した点などはありますか?
当たり前だと思っていることが通じないことですね。たとえば、求人でよく出てくる「週3以上」などという求人条件の意味だったり、情報の読み取り方であったりが、留学生に通じないことも少なくありません。住所も地図も掲載されていますが、それでも面接場所がわからなくて、本社に問い合わせが入ってしまったなどというケースもあります。私たちが普通だと思っていることは、留学生の彼らにとっては普通ではない。文化の違い、習慣の違い、認識の違いなどは時間を重ねるごとに感じています。
また、採用企業の開拓も、まだまだハードルの高さを実感しています。少し手続きが多かったり、確認事項が多かったりということもあるのですが、一番伝わるのは「トラブルが増えるのではないか」「何が起きるのか」という”知らないこと”への不安です。
『留学生の人たちと一緒に働く時に気をつけること』など、初めて外国の人を採用しようと思う企業様への啓蒙活動は、これからどんどん必要になっていくだろうな、と感じています。
不安感だけではなく、今までの雇用では想定されなかったような問題なども、これから実際に出てくることが予想されます。私たちサービスが率先して、留学生側、雇用企業側どちらに対してもしっかりサポートしていかなければならないと思っています。
文化や習慣などから起きる問題は、すぐに解決できるものではありません。今は、「”わからない”ということがわかってきた」状態です。時間が必要な問題もありますし、お互いに知ることで解決できることもあります。
私たちのサービスが『求人を仲介して終わり』ではなく、ポータルサイトを目指している理由もここにあります。記事やインタビュー、またSNSなどを活用してあらゆる形で情報を発信していこうと思っています。
SNSはどのように活用していますか
現状では、Facebook、Twitter、Weiboの三つを活用しています。インディバルでのSNS活用はまだ知見が浅く、サービスとしては初めての取り組みです。
ただやはり、海外の方ではFacebookで繋がっている、Weiboで情報が流れているなどSNSの存在は大きいので、より活用していく必要は日々感じています。
利用する留学生は、どのような方が多いですか?
1月の応募者はトータル50ヶ国以上になります。私たちにあまり馴染みのない国の方もいらっしゃいますが、多いのは中国ですね。中国の方からの応募が約半数を占めていて、次いでベトナムの方が多いです。
年齢はやはり留学生なので、ほとんどが20代以下です。
男女別では、現在のところ男性が多いです。70%ぐらいが男性です。ところが職種別に見てみると、オフィスワークになると女性が多い傾向にあります。男性は飲食店への応募が多いようにみられます。
留学生のアルバイトへの仕事観はどのようなものだと思いますか
一言で言うと、「強く夢を持っている」と感じます。
『ニホンdeバイト』を利用する留学生たちが何故日本にきているかというと、日本で就職したいという目的をもっている人がとても多いです。そういう人たちは、アルバイトを探すときに「その仕事が日本語の勉強になるのか」という点をとても大切にしています。
学校で習うだけではなく、実践したい、身に付けたいと真面目に日々の1つ1つを学びに向けている人がとても多いと感じます。
現在のニホンdeバイトの状況、効果について教えてください
SNSの効果もあり、求職者に「いいな」と思われるような求人は一気に応募が殺到します。人気のエリア、人気のお店の求人情報は、特に口コミ効果がすごいですね。
反面、募集人数に対して応募が入りすぎてしまって、せっかく応募いただいても不採用になってしまうケースも少なくありません。そこを上手く采配して、応募者がきちんと採用される求人情報に誘導していきたいです。”応募者がやりたいこと”と”採用される求人”が重なり合うように、私たちもこれから工夫していかなければいけないと思っています。
未経験からのプロジェクトマネージャー、正解がない中で決断するのが一番難しかった
話は変わりますが、今回のプロジェクトで初めてのプロジェクトマネージャー職とのことですが、サービス立ち上げの経験はあったのですか?
まったくありません(笑)。
このプロジェクトにアサインされる前は、事業統括という職種についていました。事業(サービス)の数字の管理ですね。モニタリングして、分析して、そこから改善や方向を考えるといった仕事です。そこから兼務の制度を使って一般的な企画職に就いて、企画の作り方やサービスの仕組みなどを学びました。
少しずつサービスの中心部に関わるようにはなっていきましたが、プロジェクトを立ち上げるところから関与したのは今回の『ニホンdeバイト』が初めてです。
プロジェクトマネージャーには、推薦されたのですか?それとも立候補されたのでしょうか
自分から挙手しました。
サービス作りに関しては未経験の人間に、かなりの裁量で任せて頂いた形になります。やりたいことをやらせてくれる、インディバルの体制に感謝しています。
「プロジェクトマネージャーとは?」というところからのスタートだったので、関わっている人たち全てに教えてもらいながら進めてきました。途中、怒られながらという場面もありましたけどね(笑)。
知らないことももちろん多かったのですが、スタッフそれぞれの立場で意見が異なる時には、正解がない中でプロジェクトマネージャーの自分が決めなくてはならない。その判断が一番難しかったです。
今後の『ニホンdeバイト』の展望を教えてください
五ヶ国語対応に関しては、今後もこのまま進めていきます。現在頂いている50ヶ国以上の応募者の方々も、その五ヶ国語で十分にカバーできていると思います。ただし今後、国策などでどこかの国を強くプッシュするなどの時流があれば、対応言語も増やしていくかもしれません。
長期的にいくと、『働く』ということにフォーカスしていきたいです。
今はアルバイトサイトですが、最終的には就職のお手伝いなどもできたら良いなと思っています。外国人留学生に特化したインターンであったり、採用サイトであったり、アルバイトだけに留まらずサポートしていきたいです。これからは企業にとっても、海外の文化や言語を習熟した社員が増えるということは大きなメリットになると思います。
『ニホンdeバイト』を通じて留学生のマーケットを作り、ひとつの事業として成り立たせていきたいですね。このマーケットはまだまだ未成熟です。他社の方々とも提携・連携しつつ、インディバルの中だけではなく、想いをもった人たち全てと成長させていきたいです。
実際に既にアライアンスを組ませていただき、パートナーとして同じ目標を持ってくださっている企業様もいらっしゃいます。留学生の方々を含めたこの輪を大切に、大きく伸ばしていきたいと考えています。
※この記事は2017年2月時点のインタビューをもとに構成されています
『ニホンdeバイト』プロジェクトマネージャーK氏
2015年2月に第一子誕生。趣味はGoogleAnalyticsのリアルタイム集計を見ることと、洋服を買うこと。「日常的にハンカチーフをつけている人を初めて見た」「あの靴はどこで売っているのか」「新婦よりお色直しの多かった新郎」など、隙のないファッションは話題に事欠かない。社内運動会、南国への社員旅行でもジャケットは欠かさず、もはやその姿勢はインディバルに伝説を築き上げつつある。