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土屋鞄製造所の世界観が社内で生みだされていることは意外と知られていないかもしれません。つくり手の想いや使い心地を届けるべく、日々切磋琢磨しているフォトグラファーとデザイナーにクリエイティブで大切にしていることを聞きました。
【プロフィール】髙橋 弥史(たかはし ますみ) (写真右) 東京造形大学デザイン学科写真専攻領域を卒業後、アシスタントを経て2012年に土屋鞄製造所へ。主に大人向け革製品の撮影・ディレクションを担っており、上質かつ丁寧な絵づくりに定評がある。
【プロフィール】近 直哉(こん なおや)(写真左) 長岡造形大学視覚デザイン学科卒。15年ほどデザイン系の制作会社で勤務した後、2019年に土屋鞄製造所へ。ユーザーへの洞察からブランド価値を引き出すVI(ビジュアル・アイデンティティ)を得意としている。
土屋鞄との出会いはInstagramとTwitter
— まずはデザイナーの近さんから入社のきっかけを教えてください。
近 「もともと土屋鞄の世界観が好きだったんです。製品を機能だけでなく物語も含めて伝えるスタイルに共感して、InstagramやWebサイトを時々チェックしていました。
デザイン制作会社を3社経験し、さまざまなブランドのデザインやブランディングに携わってきました。でも当時は外部スタッフというポジションだったので、クライアントが抱える日々の課題に深く関われないこともあり、時折歯がゆさを感じていて。好きなブランドで根本からブランド作りに関わりたいと思って、2019年に入社しました。」
— フォトグラファーの髙橋さんが入社したのは7年前なんですよね。
髙橋 「そうですね、とはいえきっかけは偶然でした。大学卒業後、フォトグラファーの元でアシスタントをさせてもらいました。一区切りついた時その旨をTwitterでつぶやいた所、土屋鞄で働いていた友人が偶然見ていて。『今、募集してるよ』と教えてくれたんです。
フリーランスとして進む道を考えなかったわけではないですが、自分のタイミングと土屋鞄との出会いがマッチしたので、面接を受けて入社しました。
僕は30代を土屋鞄で過ごしているのですが、これほど楽しんでいる人もいないと思います。日々の撮影はもちろん、海外で撮影したこともありますし、2015年にオープンした軽井澤工房を撮影した時は土屋鞄の歴史が刻まれていくはじまりを写真に収められたことが感慨深くて。日々、会社と共に成長している感覚があります。」
「クリエイティブは社内で生みだす」が基本
— 2人は土屋鞄内のクリエイティブセンターに所属していますが、具体的にどのような部署でしょうか?
近 「企画/ライター課、デザイン1課・2課、フォトグラファー課、VMD/店舗デザイン課の5つに分かれていて、社内で企画、執筆、撮影、デザインを担当している部署です。基本は案件ごとにスタッフをアサインし、企画からリリースまでをチームで一貫して行います。
主に担当しているのは、ランドセル事業部のアートディレクションとデザインです。全体のビジュアル指針となるVI(ビジュアル・アイデンティティ)の開発から、カタログ・ポスター・Webサイトなど細部の見せ方までトータルで携わっています。 」
髙橋 「僕は大人向け革製品を扱うKABAN事業部の取材記事や製品ページの撮影が、主な仕事です。モデル撮影時にスタイリングを提案したり、外部フォトグラファーが担当する撮影のディレクションをしたりすることもあります。」
— 今年のランドセルのカタログは近さんと髙橋さんが初タッグを組んだと聞きました。
近 「僕はもともと土屋鞄のInstagramが好きで、入社後に髙橋さんが撮影していたことを知り『ランドセルのカタログを撮ってもらいたい』と企んでいました(笑)
人の温もりに加え洗練された空気を伝えたいと思った時、髙橋さんの写真の世界観がしっくり来たんです。ライフスタイルの余韻も含めて届けるというか。」
髙橋 「声をかけてもらえてうれしかったです。カタログの企画書を見た時、全体像から細部に至る落とし込みがきめ細やかなことに驚いて。近さんが描くイメージの一部となって写真を撮ることがとても楽しみでした。」
— 実際に制作を共にして感じたことを教えてください。
髙橋 「現場ではお互い提案とジャッジを繰り返して撮影を進めていきましたよね。自然光を活かして想定内で撮ることもありつつ、時にハプニングを活かすことでバリエーションも撮れて。いろいろと試しながらゴールに向かえたのが良かったです。」
近 「髙橋さんは僕より社歴が長いので、土屋鞄らしさの表現をリードしてもらえた感覚があります。今回はブランドの醸成が一つのテーマで。社歴の長い髙橋さんと入って間もない僕が組むことで、軸として変えない土屋鞄らしさ+成長するために変えていく新しさが融合し、バランスの良い表現ができました。」
伝統と未来をつなぐのは“らしさ”を問い続けること
— 撮影や執筆、デザインを社内で作り上げる良さは何だと思いますか?
髙橋 「みんなで作る感覚を身体的に持てるところです。鞄のデザイナーも、店舗スタッフも、職人も近くにいる。すぐ相談できるしスピード感も似ているので、齟齬なく進んでいけるのが良いですね。」
近 「過去の経験を蓄積していけるのも強いと思います。今、土屋鞄はブランドとしてステップアップする時期にさしかかっていますが、根本価値を共有できているので、新しいブランドイメージも描きやすいです。」
—ブランドイメージとは土屋鞄らしさだと感じます。“らしさ”を表現するために心がけていることを教えてください。
髙橋 「『今の土屋鞄』を問い続けることです。これまでは毎日を共にする鞄や革小物を扱うブランドとして、暮らしや季節などを大事に温かみのあるトーンを意識して撮影してきました。それはブランドを作り上げてきた部分なので、変わらず大切にしたいと思っています。
ただ今、土屋鞄が日本を代表し世界で通用するブランドを目指すさなかで、憧れを抱いてもらう存在になりたい。だからライティングや構図一つとっても『最善か』『過去の焼き直しではないか』と思いを巡らせ、最終的に今の土屋鞄を表現するものになるよう意識を向けていきたいです。」
近 「僕が入社して強く感じたのは、土屋鞄はただの老舗メーカーじゃない、ということ(笑)カタログ制作時、社長に表現を提案したらすんなり受け入れてもらえたり、逆に社長が考えるビジョンを写真やレイアウト、タイポグラフィに反映したり。
今まで大事にしてきた軸は変えず、でも伝統に縛られないで柔軟に新しい価値を届けていく姿勢が「らしさ」の源かもしれません。」
お客さまの声が一番のやりがい
ー 土屋鞄という会社で仕事をする喜びは何でしょうか?
近 「お客さまの声を素早く反映できるのがうれしいです。たとえばSNSで『自然光でランドセルが見たい』というコメントが届いたら、その要望を元にコンテンツを制作できる。制作会社にいた頃はできなかったことで、とてもやりがいを感じます。」
髙橋 「僕もお客さまの存在をリアルに感じられることです。Webサイトのコンテンツでランドセルを愛用いただいている家族の元へ取材に行くのですが、生の声ほど響くものはありません。撮影しながらいつもぐっときています。
あと土屋鞄のスタッフは毎年、職種に関係なくランドセルの出張店舗に参加します。その時、日本各地どこへ行っても土屋鞄を知ってもらえていることを実感し、胸が熱くなります。これは社内フォトグラファーならではの喜びかもしれません。」
— それでは最後に、今後土屋鞄で挑戦したいことを教えてください。
近 「ビジュアルのデザインだけでなく、ブランド全体のデザイン戦略やコミュニケーション設計に携わりたいです。たとえばイベントで土屋鞄の世界観をさらに深く体感してもらったり、Webサイトでの購入体験をアップデートしたり。やる気があれば携われる状況なので、あとは僕のキャパシティ次第ですね(笑)」
髙橋 「僕は動画に力を入れていきたいです。今年の頭、会社から助成を受けて動画のスクールに通ったんです。今まで撮ってきた写真といい意味で変わらない、写真がそのまま動くような感覚で映像を届けたいです。会社の成長とともにクリエイティブも進化している今を楽しみつつ、貢献していけたらと思います。」