もう去年の話にはなってしまいますが2024年秋、私たちRight Designでは社員、業務委託、インターンといった日頃関わってくれているすべてのメンバーと共に、オランダのアムステルダム、ロッテルダム、アイントホーフェンの三都市を10日間に渡って視察しました。今回の視察は単なる社員旅行ではなく、私たちのこれからの仕事のあり方や組織の未来に関わる重要な意味を持つものでした。
この記事ではその背景と、現地で感じたことを綴ってみたいと思います。
なぜ全員でオランダに行こうと思ったのか 1. 感謝を伝えたかった Right Designは少数精鋭の組織で、日々の仕事量は決して少なくありません。デザイン制作だけでなく、クライアントへの提案やマネジメント業務など、期待される役割を超えて、皆が本当に多くのことを担ってくれています。
特に私たちが大切にしている“ストライカーの意識”と呼んでいる「自らが前に出て、仕事を生み出し、リードする姿勢」は、強いプレッシャーと紙一重でもあります。そんな中で日々全力を尽くしてくれているメンバー全員に、まずは心からの「ありがとう」を伝えたい。そして、心身ともにリフレッシュしてもらいたい。そんな思いから、全員で海外へ行くという決断をしました。
2. 広い視野を得てほしかった 私は5年前にもオランダを訪れ、Dutch Design Week(DDW)にも足を運びました。街全体がデザインを楽しみ、老若男女問わずデザインを通じて未来を考えているその光景に、強く胸を打たれたのを覚えています。
「デザインは専門家だけのものではない」 「文化や社会と自然に結びついたデザインのあり方がある」
そんな感動と気づきが、今の自分の仕事観に大きな影響を与えました。だからこそ今回は、一緒に働くメンバーにも同じように“心が動く体験”をしてもらいたいと思い、再びDDWへの視察を決めました。
3. 組織と文化への投資 今回の視察には、Right Designのカルチャー形成という狙いもありました。海外での体験を通じて、メンバーそれぞれの視座が自然と世界に向くようにしたかったのです。そして2025年春現在、今年のDDWに向けて実際に出展をするべく作品の制作企画を進行しています。去年の視察を経て、海外でデザインを行うという視点を獲得でき、どういった作品がふさわしいかの解像度が上がったことでこれが進行できています。
オランダ視察旅行について 基本的にオランダでは行動に制限はなく、各々が自由に過ごしました。その時間の使い方やどこに行くかでメンバーの好きなことがわかりました。普段の日本での生活とは全く違う経験をすることがすごく刺激になりました。
まずはアムステルダムから旅を始めました。現地の人と同じ髪型にするべく、バーバーへ行きバチバチに仕上げてもらいました。
ちょうど同じ時期にやっていたAmsterdam Music Fesに行きました。オランダはダンスミュージックの聖地でもあるので、世界No.1DJであるところのMartin Garrixのライブが見れたりとすごく盛り上がっていました。
アムステルダムにはたくさんのミュージアムがあり、ゴッホやレンブラント、フェルメールの作品がたくさん見られます。僕たちデザイナーたちはやはり美術館に行き、たくさんの歴史的な絵画作品に触れることができました。
アムステルダムは街を歩いているだけでも楽しかったです。街の中に急にインスタレーションアートがあったり、駐輪場が近未来的なデザインになっていたり、貼られているポスターなども非常に洗練されたグラフィックデザインで、生活の中にアートが溶け込んでいるという印象を受けました。
歴史的なミュージアム以外にも、アムステルダムには現代的な美術館もたくさんあります。一日をできるだけ無駄にしないよう、各自いろいろなところを回りました。
オランダでの食事もすごく美味しいものがたくさんありました。中でも海沿いの街でもあるために海鮮はとても美味しく、生で大量に盛られたプレートにはメンバー全員感動していました。
アムステルダムからロッテルダムへ移動し、The Depot of Museum Boijmans Van Beuningen、通称デポに訪れました。ここは美術館に併設する美術品倉庫という建付けでありつつ、そこで直接展示を行っていたり、修復作業や研究なども行われたりしています。絵画やアート作品を裏側から見られるなどは感動的で、いつもとは違う展示の仕方に、オランダ旅行で最も良かったのはここと言っていたメンバーもいました。
上のデポを建築デザインしたデザイン会社「MVRDV」の事務所がロッテルダムにあるとわかったメンバーは突撃で彼らのオフィスを訪れ挨拶をしました。中は撮影させてもらえませんでしたが、さすが世界的な建築デザインの会社で、内装もすごく個性的でかっこよかったです。
筋トレを普段から励んでいるメンバーは現地のジムにも定期的に行き、そこでいつもセットメニューをこなしていました。現地の人たちに混ざりながらトレーニングをするのはすごく新鮮な体験でした。
ロッテルダムのローカルでイケてるストリートブランド「Roffa」を発見し、興奮したメンバーはそこでしか変えない様々なグッズや服を買っていました。このブランドはまだ日本に輸入されていないものになるので、まだ日本ではかなり珍しいものです。
3つ目に行った都市、アイントホーフェンは世界的に有名なサッカーチームのPSVのホームタウンでもあります。そのため、その日にやっていた試合を実際に見に行ったサッカー好きなメンバーもいました。なぜかこの人は写真を撮るときに大きく口を開けています。
Dutch Design Week2024はどうだったか ダッチデザインウィーク(Dutch Design Week)は、オランダ・アイントホーフェンで毎年10月に開催されるヨーロッパ最大級のデザインイベントです。デザインの最前線を紹介する場として、新進気鋭のデザイナーや企業が集まり、プロダクトデザイン、建築、ファッション、テクノロジーなど多岐にわたる分野の作品やプロジェクトが展示されます。展示は街の中のあらゆるところ、それは大きなイベントスペースの場合もあれば、陶器の工場や駐車場、街のはずれの民家など、400箇所以上で展示が行われました。
DDWはこれまでスペキュラティブデザインの文脈から語られることが多く、ミラノサローネのような新製品の見本市というより、現代美術的でインディペンデントな要素が強い展示イベントという認識を持っていました。しかし、実際に現地を訪れると、当初の想定よりもプロダクトデザインの比重が大きく、新しい製品やサービスを提案する場が数多く見受けられました。
また、展示テーマとしてはサステナビリティや環境問題への関心が非常に高く、ヨーロッパらしい問題意識が色濃く表れていました。AIに関しては、すでに制作の現場では一般的なツールとして活用されている印象があり、展示ではむしろAIの環境負荷や倫理性への問いを投げかける作品が目立ちました。こうした点にもヨーロッパ独自の価値観が反映されており、非常に示唆に富んでいました。
アイントホーフェンは元々家電用品ブランドのPHILIPSが創業した街であり、世界的にも有名なデザインの学校があるため“デザインシティ”と呼ばれるほど、街全体に創意と工夫が溢れています。道や建物、落書きさえも街の景観をつくる一部のようでした。
特に印象深かったのは、デザインアカデミー・アイントホーフェンの卒業制作展です。気候変動やエコシステムなどの環境・社会課題をテーマにした作品群のなかに、日用品に少しの工夫を加えることで機能性や価値を拡張するようなプロダクトも多く、普段慣れ親しんでいるものに再考の余地を作るようなものに溢れていました。
クライアントワークにおいては常に“与えられた問いに応える”ことが求められますが、DDWでは“自ら問いを立てて創造する”作品群に触れたことで、「何が気持ちいいのか」「何が面白いのか」「どうすれば世界が素敵になるのか」といった根源的な視点を取り戻す貴重な機会となりました。
弊社Podcast「RightSight」でも、オランダ視察についてメンバーで語っています。よろしければあわせてお聴きください。
これからの私たちについて 今回の視察は、Right Designにとって単なる慰労や旅行ではなく、「未来の仕事のあり方」を全員で考えるための時間でした。アートやデザイン、社会問題に対して、もっと広く、もっと深く向き合っていくために。忙しさに埋もれがちな日常のなかで、私たちが何のためにこの仕事をしているのか、改めて見つめ直す機会になりました。そしてこれからも、Right Designは“心が動く体験”を大切にしながら、より良いデザインと組織をつくっていきます。
もしこの取り組みに共感し、Right Designの活動や今後のプロジェクトに興味を持っていただけた方がいれば、ぜひ一緒に関わっていただけると嬉しいです。