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友達を待つ・その2

こんにちは。TheCompany です。

弊社HPに掲載中の〈note/ロードダイアリー〉を抜粋して更新していきます。

友達を待つ・その2

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友人は夕方の6時半過ぎについにやって来た。

最初の約束はお昼を一緒に食べようとのことだったので、6時間以上私は彼を待っていたことになる。

上野公園の西郷隆盛像で落ち合い握手をして繁華街へ歩き出す。

やはりというか、やはり。彼はとてもイージーだった。軽かった。

これだけ人を待たせたのだからそれなりの言い訳や謝罪があって当然だと思っていたが、そんなことは私が考えているだけで、世界の常識はそうではないかのような軽やかさだった。私は、怒っている自分だけがバカなのだろうかとも思えてきた。なので、できる限りの気持ちの自制を試みたが、彼のへらへらした具合にだんだんと腸が煮えくり返ってきて徐々に沸騰するヤカンのように怒りを吹き出した。

普段こうやって怒りを伝えない質なので正直どこまでその気持ちを解き放っていいのか加減が良く分からない。私は今まで人を殴った経験がないが、今の場合は殴ったり蹴ったりしても別にいいのだろうか。

結局は暴力として怒りは出力されなかった。大声も出なかった。ここでは書かないが、とりあえず彼を人間以下の存在として罵ろうという気になっていた。一緒に彼の過去と未来、嫁、子供、親族一同と来世、出生地や血液型、容姿など、ありとあらゆる彼に関係するものを十把一絡げに罵倒して上野公園の暗闇に黒魔術師に頼んで彼の体と共に埋葬してしまおうかとも思ったがそうするまでには私は少しの落ち着きを取り戻していた。

こういう時に口から出る言葉はやはりもう理性を失っているのだが、自分の真剣具合をいかに相手に分からせるかが大切な気がする。こっちがどんな思いをしていたのかを理解して欲しいのだ。そんなとき、言葉が下手な人は暴力に頼ってしまうのも分かる気がする。

彼は事の大きさを理解したらしく平謝りし始めた。

実に軽率だ。

実になれなれしい。

実に不愉快だ。

これは嫁にもいつもこうしているな。

ある意味こういう死線というか、すれ違いの場数を踏んでいる彼は、上手かった。

こなれていた。

その時私は理解した。

私が彼の到着を待っていたという時点で最初から私の負けは決まっていたのだ・・・。

今さらどんなに怒ってもその矛先はもう存在しないも同然・・・。

私は彼を呪う以上に自分のそのお人好しな性格を呪った。

だんだんと上手く丸め込まれるような形で駅前の交差点を通行人が振り向くような大声で喋りながら渡り、アメ横を横切って、猥雑な上野でも少し落ち着いて座れるいつもの酒屋、たる松に直行する。

もうこの頃には数年ぶりの再会の興奮が怒りと半分半分くらいになっていてとりあえず得も言えない感情がぐちゃぐちゃに昂っている。

くそだ。

本当にくそだ。

全てがくそだ。(すいません)

慰めてくれるのはビールだけだ。いつもそうだ。

泡まで旨いキンキンと冷えたグラスを俺にくれ。おくれ!!!

朝が白け始めるまで飲んだのは言うまでもない。

私は始発過ぎに家に帰り、彼はホテルへ戻った。

別れ際、私はなんとなく、真面目な顔をして彼に念を押した。

「ホテル、俺のカードで予約してるから。ちゃんとチェックアウトだけはしてね」と。

そして、私のこういう直観は結構当たる。

昼頃、ホテルから私の携帯に電話がなった。

「お客様、まだチェックアウトされてないんですかね。部屋には荷物が残っていますが、どうなさいますか?」

もちろん友人に私から連絡しても応答はない。

二日酔い気味の昼過ぎに自問自答して再び結局は自分を呪ったのであった。

人生の彩というのは多い方が本当にいいのか。

それがやりずらい時代であっても、サイケな道を選んだほうが本当に正しい、満ちている、正論、通念、倫理、道徳、美、救い、真実、賜物とか言われる常はあるのだろうか。多分ない。ねーんだよ、んなもんはよ、おい、ねーじゃねーかよ。いいことねぇんじゃねーのかよ、おい、どうなんだよ。

生きているというのは本当に多元な階層の微細なレベルの話だ。

チャンチャン。

とにかく疲れた。

最後に彼との写真を公開することを全ての当てつけにして終わろうと思う。

彼だけが映っている写真でないというところが全てを物語っている。

俺はくそだ。

人類よ、幸あれ。

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